五来重著「高野聖」 | 高野山への道

五来重著「高野聖」

高野山には、高野三方といって、学侶、行人(ぎょうじん)、聖(ひじり)の3つの集団がいて、聖は最下層に位置づけられる。
おおばっぱには、学侶とは僧侶、行人は雑用係。
聖(ひじり)とは、諸国を行脚し、勧進していた集団である。
勧進とは、要するに金集めのことである。
なので、どんどん世俗化していき、非事吏などと揶揄される。
('-'.).。oO(聖の語源は「火知り」、「日知り」、「火治り」など諸説ある)
諸国に高野山信仰を広めたのも、高野聖の功績だろう。
各地に残る空海の逸話を広めたのも、或いは高野聖かもしれない。

ちみに、学侶方の本部は青巌寺(現在の金剛峯寺右半分)、行人方の本部は興山寺(現在の金剛峯寺左半分)、前回見つけた広場は、行人が作った日光東照宮の跡地である。

聖の本拠地は、主に大徳院でもともと五の室谷にあった。
現在は、小田原谷に移転し、蓮華院と改称している。

高野山への道-蓮華院
・蓮華院。徳川家と関係が深く、二つとも葵の紋。


高野聖についての文献は非常に少ない。

泉鏡花の「高野聖」は有名だが、アレは小説である。
('-'.).。oO(「いつの間にか、女は着物を脱いで、全裸になっていた」(泉鏡花「高野聖」より))
('-'.).。oO(こんな紹介をすれば、こちらの方に興味を持たれる方の方が多いだろうな)

高野聖 (集英社文庫)/泉 鏡花

¥390
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こちらの方は、一冊丸ごと高野聖である。
五来重「高野聖」。

高野聖 (角川ソフィア文庫)/五来 重

¥1,050
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もともと何かの本に高野山の「谷」の紹介をしてあったことを思い出し、写真の整理の際に地域を特定するために購入した。
見つけた時は、夢遊病のようにレジに持っていったが、400ページ程度の文庫分なのに1000円を超える。

もくじだけ紹介すると、

一 聖というもの(一)
二 聖というもの(二)
三 聖の勧進と唱道
四 高野浄土
五 高野聖のおこり
六 祈親上人定誉
七 小田原聖教懐と別所上人ぬ
、、。

高野山に関して多少の知識があれば、楽しく読め、更なる情報を提供してくれる。
聖という切り口から高野山を知るのは、まさに舞台の裏側をみているような気分だった。
人名索引、文献・資料名索引、地名索引、件名索引と、35ページに及ぶ索引が付いていることからも伺えるが、凄まじい情報量である。
一読後、高野山に登れば、また違った目で見ることができるし、気がつかなかったあれこれが見えてくる。

内容の感想は、もうこの一言しかない。

「濃い」