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 定頼さんの発言丹後へ遣はしける人は参りたりや。いかに心もとなく思すらむ。』と発言したところからです。

定頼 |と言ひ

〃  |局の前を過ぎられける

【古典常識】局(つぼね)
 宮中や貴人の邸宅で仕切りを設けた部屋/その部屋を持つ女官/位階や官職で呼ばれる上級の女房 
 
 局は、部屋を指す場合と、人を指す場合があるのね。この場合は、部屋?定頼さんは廊下みたいなところを通っているのでしょうか?一言二言言って通り過ぎるという、なんとも嫌な感じです。
 
 『られ』は尊敬の助動詞。『言ひて』には敬語は使わんでええのん???どちらも地の文ですよね?
 
 最後の『を』は、目的語的に「のを」でもいいけど、as の「を」(とき)の方がいい気がする。
 次は主語が代わります。たぶん。

小式部|御簾より半らばかり出で

〃  |わづかに直衣の袖を控へ

【古典常識】御簾(みす)/すだれ。
 
 御簾が局(部屋)の仕切りになっていたようです。部屋から半分出てきて・・・
 
【古典常識】男性の装束=束帯(そくたい)、 直衣(なほし)、狩衣(かりぎぬ)
【古典常識】女性の衣装=重ね(かさね)、五衣唐衣裳(いつつぎぬからぎぬも)
 
 直衣は男性の装束なので、その主は、定頼です。その定頼の服の袖を『控へ』たと。『控ふ』って?

   |  大江山いくのの道の遠けれ

   |      まだふみもみず天の橋立

〃  |と詠みかけけり

 これは、定頼の発言
 「丹後に行かせた人は戻った?待ち遠しいよね~。」
に対する小式部の答えとして読まないといけません。あり得る答えとして、
  • 「はい、戻った。待ちどおしくない。」
  • 「いいえ、戻ってない。だから待ちどおしい/けれど待ちどおしくない。」
このあたりを素直な人は予想します。果たして、小式部の答え?は、の前に、古典常識
 
【古典常識】大江山は丹後地方の山地。今の大枝山(おおえやま)(今の京都市から山に入るあたり)もあるので注意。ここは素直に丹後地方の山地と取ります。
【古典常識】生野(今の福知山市)は丹後に向かう途中の町。京都⇒生野⇒丹後が一般的ルート?
【地理常識】日本三景
陸前(宮城県)の松島、丹後(京都府)の天橋立、安芸(広島県)の宮島
 
 果たして小式部の答えは・・・
   「遠いので天橋立には行ったことないっす」
戻ったの?戻ってないの?これ、どういう会話???これでかみ合ってる?
 
 和歌には、枕詞、縁語、掛詞が使われることがあります。掛詞は、ひとつの言葉に二つの意味を込めたもの。表の意味と裏の意味があるのです。ダブルミーニングというやつ。ひらがなで書いてあるところがアヤシイ。漢字を当ててみます。
  • いくのの道⇒行く+野の道|生野の道
  • ふみ⇒踏み|文
  • みず⇒~してみない|見ない 【注】『水』は『みづ』なので却下。
 これをフル活用して訳すと、
 
      「大江山へ生野路行く、野の道は遠いので
       天橋立なんてまだ踏んでみてもないし、も見てないですよ。」
 
 新情報『文』が登場しました。これが答えの核心のはずです。『文も見てない』から定頼の言葉を逆照射すると、この『会話』は、
   定頼「お母さんへの使いの者は戻った?お母さんから手紙あった?」
  小式部「誰も行かせてないし、手紙とかないし。」
こんなん、わかるか~!www
絶対無理!
 これが読解力と言うか、国語力と言うか、コミュ力というか、文学力というやつやね。日本的というよりも、むしろ外国的な駆け引きに近い気がする。外交なんてこんなもんでしょ。
 
 これを分かれと言われても・・・いや、共通テストは選択肢のどこかに正しい解釈を書いてくれているので大丈夫なのだ。選択肢読んで、気づけばいいのよ。
 
 それにしても定頼、すごいね。
「あんな娘っ子に歌が詠めるわけないのじゃ。おおかた丹後に助けを求めておるじゃろうて。丹後はちと、遠いかのう~。フォッフォッフォッ。」
とか勝手に勝ち誇って「待ち遠しいのぉ。」とか言えるんやね。どんな人格?いや、でも、旧世代人間の会話はこんな感じかもしれないwww。
 
ひとつ憶えておこう。前の絵仏師良秀さんもそうやったけど、
古典では想像の斜め上を行く人格が描かれる
覚悟して読みましょう。
 
ーーー続くーーー