主語|本文で指定された主語
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良秀|これも今は昔絵仏師良秀といふありけり。
火 |家の隣より火出で来て
風 |風おしおほひて
火 |せめければ
良秀|逃げ出でて
〃 |大路へ出でにけり。仏 |人の書かする仏もおはしけり。
妻子|また衣着ぬ妻子などもさながら内にありけり。
良秀|それも知らずただ逃げ出でたるを
〃 |ことにして
〃 |向かひのつらに立てり。
〃 |見れば
火 |すでにわが家に移りて
煙炎|煙炎くゆりけるまで
良秀|おほかた向かひのつらに立ちて
〃 |眺めければ
it |「あさましきこと。」人々|とて
〃 |人ども来とぶらひけれど
良秀|騒がず。
it |「いかに。」
人 |と人言ひければ
良秀|向かひに立ちて
家 |家の焼くるを
良秀|見て
〃 |うちうなづきて
〃 |時々笑ひけり。it |「あはれしつるせうとくかな。
良秀|年ごろはわろく書きけるものかな。」
〃 |と言ふ時に
ー |とぶらひに来たる者ども
こ |「こはいかに。
良秀|かくては立ち給へるぞ。
it |あさましきことかな。
もの|ものの憑き給へるか。」
者 |と言ひければ
もの|「なんでふものの憑くべきぞ。
良秀|年ごろ不動尊の火炎を悪しく書きけるなり。
〃 |今見れば
炎 |『かうこそ燃えけれ。』
良秀|と心得つるなり。
it |これこそせうとくよ。良秀|この道を立てて
〃 |世にあらむには
〃 |仏だによく書き奉らば
家 |百千の家も出で来なむ。あなた達|わたうたちこそさせる能もおはせねば
〃 |ものをも惜しみ給へ。」
良秀|と言ひて
〃 |あざ笑ひて
〃 |こそ立てりけれ。
ー |その後にや良秀がよぢり不動
人々|とて
〃 |今に人々愛で合へり。
【注】主語の赤文字のところ、あなた達。『わたうたち』=『わたしたち』と、さだのおか、間違って決めつけてしまっていましたwww。ただしくは『あなたたち』です。