4月9日 産経新聞によると、あれだけの反対を押し切って
イランを訪問した鳩山由紀夫氏が帰国し、記者会見を開いた、とあります。
アフマディネジャド大統領と会見し、「核兵器のない世界の実現に向け
お互い努力すること」を確認した、とのこと。
まあ、アメリカが大嫌いで、核保有を目指してなりふり構わぬイランに対し、
「核兵器のない世界」を説くというのもさすがだなと思いますが、
ことはこれだけで終わるはずもなく、案の定、イラン大統領府は、
鳩山氏が「IAEAは二重基準で公平性を欠く」と発言した、と発表しました。
鳩山氏は「捏造だ」として火消しに躍起ですが、当然これくらいのことは
言うだろうと思いますけどね。誤解があったとイラン側に伝えたい、
と今になって言ってももう遅い。後の祭りというやつです。
だからいわんこっちゃない。
火消しをしているつもりで全然火を消していないのが
この人のすごいところ。
帰国後の会見の中で、
核拡散防止条約が核保有国を対象とせず非保有国の平和利用に
査察を行うのは公平ではないことは承知している、と言ってしまった。
おいおい、これじゃあまるで日本が核拡散防止条約に異を唱えている
みたいじゃないか。
イラン大統領に「NPTに入らないで核保有国になっている国にとって
有利になっていることは承知しているが、非核の世界をつくるためにも
国際社会との協力が必要だ」と述べたことを明らかにしました。
こんなこと言ったら、ますますNPTに入りたくないなあ、と
思うんじゃないでしょうか。
最初に書いたとおりで、イランはとにかく
アメリカが大嫌い、
なにがなんでも核兵器を欲しい
という基本姿勢がブレないわけですから、これをとどめる
方法は猛烈な力による圧迫しかないように思います。
経済制裁だけではなく軍事的な選択肢も残しつつ
国際社会が強調して収集を図っている矢先、
やってくれましたね。そもそも元総理大臣であり、
与党の最高顧問(しかもどういうわけか外交担当)が
一人で行ったからといって、一議員の発言というのは
虫が良すぎます。他国から見れば非公式に
日本政府が接触してきたと思うんじゃないでしょうか。
だいたい靖国参拝などでも「総理として」「個人として」
など詭弁だ、と言ってたような気がしますけど。
こっちのほうが二重基準じゃないか、と。
普天間基地、インド洋補給、この人がからむと
ろくなことにならん。
4月10日 読売新聞社説は、さらに辛辣です。
「鳩山議員外交 危うい理屈で国益を損ねる愚」
(中略)鳩山氏は、能力的にも性格的にも、外交に関与してはならない
政治家だ。そのことを、一日も早く本人が自覚してもらいたい。
ここまでいわれる人も珍しいです。
過去、現在、核武装を目論んでいる国に対して、
わが国ができることは何かあるのでしょうか。
私は、限りなくゼロに近いのではなかろうか、
と思っています。
イラク、北朝鮮、イラン、イスラエル、インド、
パキスタン、などなど。
どの国も、考えることは恐らくいっしょです。
「一発でも持ってしまえば勝ちだ」
何を言われようとも一発保有するのも1000発保有も
一緒のことです。なんとしてでも保有さえしてしまえば
一夜にして世界の列強の仲間入りができる、大国とも
五分でやりあえる、と思っているはずです。
鳩山氏は「広島、長崎を知っている日本だからこそ」
と言っていますが、これらの「核の予備軍」首脳が
日本から受け取るメッセージがあるとすれば
「あの時もし日本が原爆を一発でも持っていたら
広島にも長崎にも原爆は落とされなかっただろう」
と、こういうものではないでしょうか。
広島生まれ、広島育ちという立場からすれば
「核廃絶、核のない世界」というのが当たり前の
答えなのかもしれません。しかしそれで終わってしまっては
ちょっとまずいのではないか、という危惧を抱いています。
別にそれが思考停止だとか、ダメだというのではありません。
両方の考え方があるでしょう。
しかし、広島は、あるいは日本は「核なき世界」だけが
日本を守る道だと決め付けてもいけないのではないでしょうか。
あれだけ経済制裁をされても核保有に邁進する国々。
別にあちこちで使おうとして開発しているのではないはず。
国を守るためにどうすればいいのかを必死に考えた挙句、
「核武装」という結論に至ったのだと思うのです。
本当にイラクが原爆を持っていたら、イラク侵攻はなかった。
俺たちは既に持っているからいいけど、新たに保有しようと
するやつは許さん。というのが「核不拡散」の本質でしょう。
なぜなら相対的に自分たちの値打ちが下がるから。
でも、それをすり抜けて一回でも核実験に成功してしまえば
もう誰も手出しできませんね。インドが保有したから、
あるいはパキスタンが核実験を行ったから、
報復攻撃を受けましたか。否です。もう手出しできない。
じゃあ、オバマ演説で有名になった「核廃絶」はどうなのか。
アメリカがまさか本気で核廃絶を考えていると信じている人は
いないとは思いますが、アメリカからしてみれば、
「とにかく核保有なんて考えるな。俺たちも減らすから、
お前たちは一発も持つな」という感じでしょうか。
まあ確かに何千発も維持管理しようとすると金がかかるし
第一そんなにたくさん使わないし、だったら保有国どうしの
談合で、数を減らして、世界を支配するに足るだけの
最小限で抑えましょう、そのほうがお互い助かるでしょ、
ということかもしれません。
最初に保有したグループは自制心を持っているが、
後発組は危なっかしいからダメだ、ということでしょうか。
現在の核保有国のうち、まともでない国も入っている、
というのは言いすぎでしょうか。
ここまで考えると、鳩山氏の発言は正しかったという
皮肉な結果になるのです。
鳩山氏がイランに行ってまで言うことでもなく、
当たり前に不平等で二重基準なのです。
困りましたねえ、日本の安全を本気で考えるなら、
じゃあ日本も核武装したらいいじゃないか、という
考え方がもっと強く出てくる可能性もあると思うのですが、
それをいう人はなぜか日本の政治経済の舞台から
いつの間にか消えてしまうのです。なんで。
最終的に国民の幸せのために、あらゆる手段を検討する
あらゆる可能性を否定しない、というのが政治家の大切な
姿勢だと思うのですが、この国では「禁忌」とされる課題が
たくさんありすぎて困ります。
広島の松井市長が被爆者団体に「援護を受ける以上は感謝の気持ちも
もっていただかなければ」と発言したらエラい目にあいました。
被爆者援護、生活保護、もっと言えば、核武装、憲法改正、教育。
本来なら真っ先にやらなければならないことほど、
ハードルが高いこと高いこと。まずは議論してみて、そのうち
話が落ち着くべきところに落ち着くというのが成熟した
社会だと思うのですが、「あれはダメ」「これも触るな」が
あまりにも多い気がしてなりません。
そんなにもたもたする余裕はないはずなんですけどね。