有川浩の『阪急電車』 | さむたいむ2

さむたいむ2

今日も元気で

 

 

有川浩の『阪急電車』(幻冬舎文庫)を読みました。

この作品も映画化されていて、私は2年ほど前に観た記憶があります。

 

阪急電鉄の「今津線」沿線を巡る物語ですが、私は関西の鉄道には疎く、それでも川越線よりはかなり開けた沿線ということはゆうに想像できます。ここに登場する女性たちは様々です。白いドレスを着た女性。孫を連れた老婦人。彼氏に乱暴されながらも別れることの出来ない女性。電車通学する小学生の女子たち。またついぞ反省のない賑やかなオバサンたち。そしてふたつのカップル。どこでもありそうな絵図を有川は軽妙な筆致で描きます。

 

どこか性急に思われるのは登場人物の繋がりにあります。故意に幾つもの関係性を持たせるからです。通勤時から外れた時間のなかで起こり得ることを欲張っているからでしょう。しかし彼女たちの人生の一幕をみせるにはこれしかありません。だれもが反省のなかで生き、不安と苦悩を抱えています。唯一救いようのないのは騒がしいオバサンの集団でした。

 

有川浩はひとりの目撃者としてではなく、それぞれの体験者としてそこに居ます。読者を巻き込んで阪急電車に乗っています。おもわず「今津線」に乗ってみたくなりました。