映画「清須会議」を観る | さむたいむ2

さむたいむ2

今日も元気で

イメージ 1

三谷幸喜の「清須会議」は自身の書いた小説を元にして映画化されました。公開は2013年です。出演者が多くいる場合DVDは有難い。観終わった後、役者とその人物像を確認するためにもう一度見直すことができるからです。歴史好きには必要のないことですが、歴史にそれほど興味のないものにはこうして学んでいくことが最適な方法ではないでしょうか。

学校などで習う歴史は時系列から人物の名や出来事を取り上げていきます。しかしそれではその時代を生きた人間を理解することにはならないでしょう。歴史家はそれぞれの人物に光を当てることを生業としています。様々な文献を頼りにその時代を作り上げていくのです。しかし脚本家や監督は文献を参考にしますが、さらに脚色を重ねてその人間を演じる役者に期待をかけます。その役作りを演者にすっかり任せる監督と、むしろ脚本の一字一句を違うことなく台詞を語らせる監督がいます。

三谷幸喜は後者の監督ですが、役者の個性(タレント性)を重視して、喜劇へを繋げる数少ない演出家です。台本がどんどん書き換えられるのはそのためで、1シーン、1カットが勝負なのです。これに耐えられない役者はきっと次回は呼ばれないでしょう。

「清須会議」とは本能寺の変で明智光秀に暗殺された織田信長の後継者選びと、信長が残した領地の分配を決める「評定」のことです。ヤクザでいえば「跡目相続」にあたります。織田家の嫡男で当主であった信忠も父の変を受けて切腹したため、次の当主を次男信雄にするか、三男信孝にするかという家臣たちの話し合いが持たれました。

家臣の柴田勝家(役所広司)丹羽長秀(小日向文也)羽柴秀吉(大泉洋)、そして滝川一益(阿南健治)の4人が織田家を代表して評定するのですが、滝川が小田原攻めに苦慮して遅れています。そのため池田恒興(佐藤浩市)を選びます。柴田、丹羽は池田を取り込もうとしましたが、いち早く秀吉が領地と石高で釣っていました。実際のところはわかりません。評定に滝川が遅れたことは確かです。家臣同士の思惑は歴史の奥深くに眠っています。

この映画に出て来るお市の方(鈴木京香)に注目します。お市の方とは織田信長の妹です。清須での彼女の存在は大きいのです。当初彼女は浅井長政と結婚しました。いわゆる政略結婚で戦国時代の武将の娘は皆協力関係のために結婚を強いられていました。だが時として敵対することがあります。浅井長政は朝倉義景を盟友としてしていましたが朝倉は織田信長に嫌われていて、ついに討伐されてしまいます。助けに入った浅井も同じく追われる羽目になりました。

お市の方は浅井の死後、清須に戻り、評定後に柴田勝家の元へ正室として迎えられます。戦国時代の武将の娘の運命は力関係で左右されたのです。そして彼女の娘茶々は後に秀吉の側室となります。茶々が後の淀君であり豊臣秀頼の母として大阪夏の陣で亡くなります。悲運というか壮絶な人生を送った女性です。鈴木京香でなくては熟せない役どころです。

「清須」を「清洲」と書くのが正しいのでしょうか。ただこれは三谷幸喜の作品です。史実より映画という真実が優先されます。それぞれの役柄は監督に応えています。あとは登場人物の詳細は歴史書だけでなく小説として書かれているので興味のある方は読んで頂ければ良いのです。

この映画コメディーですが歴史に想いを馳せるものです。