あれは中学2年生のときだ。
夏休みが終わって2学期が始まった。
私の学校では学期が変わると席替えをするのが恒例だったのね。
席替えにはいい思い出なんかなく、いつもいやな思いをするばかりしかなかった。
そしてそのころは、私はもうすっかり馴れっこになってたんだよね。
クラスのみんなが、私の隣の席になるのを嫌がってああだこうだと大騒ぎになること…。
でも、その日はいつもと違ってたの。
席が私の隣になった子は、決まって「最悪~!」だとか「やっちまった!!」とか言って騒ぐんだけど、この日はちょっと違ってた。
みんなただニヤニヤして、先生が黒板に書いている席順を眺めているだけだったの。
「さあ、それではみんな、新しい席に移動して下さい!」
クラスのみんなは先生の指示通りに席を移動する。
なんの不平も出ない。
こんなことは初めてだった。
でも、そのワケはすぐに分かった…
ホームルームが終わり先生が教室を出て行くと、クラスでリーダー格のN君が口火を切った。
「よし、約束どおりくじ引き始めるぞ。恨みっこなしだかんな~」
そう言うと、先生が書いた黒板の私の席の前後左右に番号を入れ始める。
同時にS君が、準備していた紙を折り曲げたクジみたいなものを机の上に載せる。
「よし、みんな、どれでも好きなものをとれ!」
その声を合図に、クラスの子は折り曲げられた紙をそれぞれ手にしたの。
そう、私の周りの席が、なんとくじ引きで決められていたんだよね。
ああ、だから今日あんなにすんなりと席替えが終わったんだ…
そう、私の知らないところで、私の席の周りをくじ引きで決めることが決まっていたわけです。
慣れっこになっていた私も、これには相当こたえました…