ミカ@神戸ちゃんの記事を読んで今すぐ観たくなった。
けど、最寄りのTSUTAYAでは探し回ってやっとホラーの棚にみつけたものの
貸し出し中
かえってきたら電話くれというてみたが、あかんというので
しんぼうたまらんわたしはリニューアル直後の三宮店まで出掛けたのだ!

以下わたしなりの感想をば

江戸川乱歩の原作というので
倒錯した変態チックな性愛をねっとり描いているのかなと思いきや
そうでもなかったのよね
戦争で四肢を無くし、耳にも声帯にも障害を負った夫が戻りショックと絶望でいっぱいの妻だが、夫を嫌悪しながらも愛情はなくもないんだよね
そんな状態になったら夫とすりゃ本能のまま生きることしかできないわけで
ひたすら性欲処理としての営みを続け、妻は応じていくわけだ。
だからあんまりいやらしさはない。
まだ戦時中ゆえ世間は建て前を中心に動いていて、村人は夫を一応軍神として祭り上げ、夫は偽りの賞賛と勲章だけにすがって生きているようだ。
しかし反面自分のやってきたことに後悔と怖れを抱いている。
軍神と祭り上げられることは実は辛く人前にも出たくないのに、妻はまるでそれを知りながら世間にわざと晒すように夫を連れて出歩く。
勲章を身につけて我こそは軍人の妻なりと誇りながら夫をそのための演出として。
じわじわと妻は夫をなぶりながら毎日を過ごし、かつて夫に暴力を受けながら耐えていた妻は夫をどうにでもできる権力を得た。
反転する夫婦の立場
夫はいたぶられる受け身の立場になることで、その辛さをはじめて知り
戦争で行った自分の残虐行為を恐怖とともに思い出し日ごとに攻め苛まれていく
追い詰めたのは妻
意図してそうしたわけではないだろうが、妻がそうしてしまう
終戦を迎えるや否や
人はその建前を放棄する
軍神と呼ばれた男はやがて地に落ち
単なる傷痍軍人となるであろう
軍神などというものは、はなから存在しない
ただ戦争に対する士気を高揚するため
美化されたにすぎない
集団心理で大義名分に縛られた戦争が終われば
お国のために戦って傷ついた人は社会の後ろに引っ込まされ
人の興味は己の生活のみとなっていくだろう
大衆の愚かさと冷酷さも裏から透ける様に感じさせる巧みな演出

もはや軍神でなくなった夫には、生きるよすがはなくなった。
そして恐怖のなかに生きることこそ一番辛かったであろうから
結末的にはうなづける。

夫婦を演じた二人の演技が素晴らしい
夫役の俳優はセリフはほとんどない中で、その微妙な感情をよく表現していたなあ

監督は一貫して強烈な反戦の思いを伝えたかったし
またそれをやりきったなと思う。

だから
TSUTAYAさん
これはホラーじゃないです!

オススメ度80点


iPhoneからの投稿