「流浪の月」 | よさこいの夏

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2023年12月からこちらへ引っ越しました。

160_20220603153701 李相日監督作品というだけで、どうしても見なければ!と思っていた封切日の翌日に骨折してしまって、行けずに3週間。
松葉杖1本で割と歩けるようになったので、映画館にだけ行って、帰ってくるという計画で行ってきました。

 

「悪人(2010年)」「怒り(2016年)」に続く作品であり、そして、「パラサイト 半地下の家族」ホン・ギョンピョが撮影監督を担当とあれば観ないわけには行かないのです。
カメラアングルはやはりとても面白かった。
床や地面をなめ映すような場面がたくさんあり、狭いマンションのカーテンの下から窓越しに見る空や、様々な場所から見上げる月の美しさが、もう流石!なのでした。

 

あれ松坂桃李くんって、こんな顔だったのかなあ?という印象からスタートしました。
最近の作品では「孤狼の血」「新聞記者」の印象が強かったので、こんな無表情で瘦せこけた青年に変身していることに驚き。
これも役作りなのでしょう[E:#x1F4A1]
広瀬すずちゃんは、やっぱり美しい女優さんですね。
どんな表情でどんな風に映っても綺麗すぎる~と思って見ていました。
映画の中で何度も「私はそんなに可哀そうな人じゃないよ」と言いますが、
この更紗という女の子は確かに普通の感覚を持っている普通の女の子なのだと感じました。
大変な体験をしてしまったけど、その体験は世間が言うほどにも彼女を歪めてはいない。

松坂桃李演じる文という青年も、結果的にはただただ自分の体の障害ゆえに普通には生きられない優しい青年だったというだけだった。

 

これは社会の歪んだ偏見が優しい青年と少女をこんなに傷めつけてしまった、というお話でした。
こういうようには実際にはなるわけがないとは思うけど、こういう社会の在り方を書いた原作家さんも、
これを映画にした李相日監督もやっぱりスゴイと思えます。
李監督の仕事にはいつも衝撃を受けてしまいます。
松坂くんとすずちゃんにも。
更紗と文の優しさと切なさに涙が止まらなかった。


ここからに感じたことを並べてみますが・・・
・まず自分が傷つけられていた相手が本当は誰だったのか?を警察で言えなかったという更紗はありえない。
・15年も前の事件のその後が、こんな風にネットで出回って、しかも自分の周りの人たちが皆それを見てるなんて。「ホントに~?」と疑問を感じる。
・ましてや週刊誌なんかに本人が知らないうちにこんな記事が載ってしまうなんてあり得ないよね?
・ポーの詩集を愛して、そういう繊細な心ゆえの生き辛さを抱えているのだと思い込んで観ていたのに、最後のあの体の障害を告白する場面で、なんだか「へ~っ!!」と驚きすぎて、じゃあ、今までのこれは何だったの??とショック過ぎた。
 この場面はいらなかったんじゃないか?
 こんな理由付けにしなくてもよかったんじゃないの?と思わずにはいられない。

アンティークショップの柄本明さん、もう少し後々の二人にも助力する場面があってもよかったのにな。勿体ない。

更紗と正反対タイプの友人・趣里さん、あけすけな感じがお見事。更紗に預けた娘が大変なことに巻き込まれて、その後どうしたかもう少し欲しかった。これも勿体ない。
文の恋人役・多部未華子さん、もう一歩、二人に何かして欲しかった。勿体ない。
そして、新境地を開いた横浜流星くん、最後はいい人であってよかった。これからも楽しみですね。
文のお母さん役の内田也哉子さんは、樹木希林さんかと見間違えるほどでした。でも、こんな酷い母親っていないよね?
子役の白鳥玉季ちゃんも上手でしたね。パッと見た感じはすずちゃんとは全然違う気がするけど、演じているちょっとした表情が段々すずちゃんに見えてきました。まだ小さいのにスゴイ演技派!

 

150分もの長い作品。
更紗と文の場面はゆっくりと間合いをとって、見ごたえがあったけど、他の人が絡んでくる場面に伝え残しがいっぱいあるようで勿体ない感が残りました。
でも、いろんな思いが駆け巡った150分でした。
映画って、やっぱりいいな~。
心が動く。

それにしても、最後のあの種明かしさえなければな~。
★★★★