復讐のキスをあなたに season1 瀬崎一成 16話 GOOD END | nap time

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匡介「××先生!」

「あ...鳴海先生...」

匡介「もしかして、瀬崎先生を探してる?」

「ご存じなんですか?先生がどこにいるか...」

匡介「どのに行ったかまではわかんないけど、さっき会ったんだよ。入口で」

「え...?」

(瀬崎先生、さっきまでここに居たんだ...)

「どっちの方向に行ったか分かりますか?」

匡介「タクシー拾って、正門を右に曲がって行った」

「...右?」

匡介「うん。瀬崎先生の家とは逆方向だなって思ったから間違えない」

(どこに行こうとしてるんだろう...?もしかして、お母さんのところ?)

「あの、羽田空港ってどっちですか...?」

匡介「羽田?羽田なら普通は左に行くけど...」

「じゃあ...」

(一体、どこなの...)

匡介「...忘却...」

「え...?」

匡介「いや、今思い出したんだけど...瀬崎先生が別れ際にボソッと言ったんだよ。『忘却か...』って」

「忘却...」

不意に、ポピーの花畑の光景が思い出された。

「鳴海先生、ありがとうございます」

匡介「え?ありがとうって、今ので何か分かったの?」

「ええ、たぶん...とにかく行ってみます」

走り出した私の背に、鳴海先生が呼びかけた。

匡介「あのさ...」

「はい...?」

匡介「連れ戻してくれるってことだよね?」

「...ええ。そのつもりです」

匡介「...よかった。必ず連れ戻してね、一成さんのこと。この病院の今後は、××ちゃんに掛かってるんだから。頼んだよ」

「...」

匡介「××ちゃんなら、きっと大丈夫...」

「鳴海先生...」

匡介「待ってるから。2人そろって早く帰っておいでよ」

「...はい!」





〈ポピーの花畑〉

息を切らせて駆けつける。花畑の真ん中に、瀬崎先生が立っていた。

「瀬崎先生!」

一成「...××」

「よかった...見つかって...」

一成「どうしてここが...?」

「忘却...」

一成「...」

「いつか母が、ここで言っていたのを思い出したんです。『ポピーの花言葉は忘却』だって。『嫌なことや悲しいことがあったら、ここにくればすべて忘れられる』って...」

一成「そうか...知らなかったんだ。ずっと...しっていれば、ポピーを供えたりしなかった...」

「別に、先生がすべてを忘れたくてポピーを送っていたなんて思っていません。忘れたいなら、そもそも花なんか送らない。違いますか?」

一成「...」

「ポピーは母の一番好きな花でした。きっと、毎年たくさんのポピーに囲まれて母はお墓の中で喜んでいたと思います」

一成「...」

「...先生。帰りませんか?私と一緒に...」

一成「...そうはいかない。俺はもう...」

「医師を辞めるからですか?」

一成「...ああ」

「みんなが瀬崎先生を待っているのに...?」

一成「...誰も待ってなんかないだろ。俺のせいで、たくさんの人に迷惑をかけた」

「迷惑、ですか...その通りですね」

一成「...」

「患者さんは、急に主治医がいなくなって不安になってます」

一成「...」

「入江先生はあの病院を立て直すには、瀬崎先生の力が必要だっておっしゃってます。鳴海先生は、絶対にあなたを連れ戻してこいって...」

一成「...」

「私だって...」

一成「...これは、けじめなんだ。俺なりの...」

「けじめって、誰に対しての?」

一成「それは...」

「私も母も、そんなこと望んでないって言ったら?」

一成「...」

「医師であり続けることが、一番の償いだと言ったら...?」

一成「君は言ったはずだ。どんなにたくさんの命を救おうと犯した罪はなくならないと」

「ええ、言いました。今でもその気持ちに変わりはありません。だから...」

一成「...」

「瀬崎先生には、未来のために医師を続けて欲しいんです。過去を清算するためではなく...」

一成「××...」

「私も前を向きますから、先生も前を向いてください。私、前を向いて歩いていきたんです、先生と...一緒に...」

瀬崎先生に手帳を差し出す。瀬崎先生は、手帳をじっと見つめた。私は瀬崎先生に手帳を握らせる。

一成「...」

「これは、瀬崎先生がもっているべきです。自分を戒めるためじゃなくて、これからの患者さんに活かしていくために...」

一成「××......いいのか?それで...」

「...ええ。いいよね、お母さん...!」

私は大きな声で叫んだ。

「もう、幸せになってもいいよね...」

(瀬崎先生と...)

花の香りを胸一杯に吸い込み、目をつむる。胸の奥にしまってあった複雑の思いが、ひとつずつ消えていく気がした。




病院前でタクシーを降りる。

「みなさん、お待たせしました」

入江「瀬崎先生、お待ちしてましたよ」

匡介「お帰り、一成さん、××先生」

師長「瀬崎先生...」

一成「みなさん...」

あやめ「いいじゃないですか、湿っぽいのはもう。ねえ?」

匡介「そうだよ、一成さん。俺たちが欲しいのは言葉じゃなくて、その腕だからさ」

師長「ちょっと匡介、なんて言い方するの!」

一成「いや......ありがとう」

入江「...早速ですが瀬崎先生、やるべきことは山積みです.ご協力いただけますね?」

一成「もちろんです」

入江「よかった...それじゃ、みなさん。そろそろ患者さんのところへ」

みんなが病棟へ戻っていく。後に続こうとすると、瀬崎先生が夜空を見上げてつぶやいた。

一成「島根の空は...ここよりもずっと、きれいなんだろう...」

「...え?」

一成「今度の休み、一緒に君のお母さんのお墓に行ってくれないか?」

「ええ、いいですけど...」

瀬崎先生は、手帳を取り出す。

一成「これを...君のお母さんに渡そうと思う。これを渡してすべてを報告し、きちんとゆるしてもらいたい」

「でも、その手帳は...」

一成「新しくしようと思うんだ。ここらか再出発するために...」

「瀬崎先生...」

私は大きくうなづき、ようやく心からの笑みを浮かべた。



GOOD END



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