困ってるひと/大野 更紗

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ビルマ難民を研究していた大学院生女子が、ある日突然、原因不明の難病を発症。
自らが「難民」となり、闘病生活が始まる・・・。

前例のない難病の為、いろいろな病院をたらい回しにされ、どこに行っても病名がつかない。
身体中の筋肉や部位が炎症、感染し、動くたびに激痛が走り、年中インフルエンザにかかっているような辛さ。

26歳の著者の半生と闘病記が書かれているのですが、

想像を絶するような辛い苦しい状況を、笑いとユーモアいっぱいに

書いているところにまず驚きました。

もしも、私が彼女と同じ状況で、書いているとしたら、

とてもじゃないけど、こんなユーモアたっぷりに表現は出来ないだろうなと。

だからこそ、この本を手にとったのだと思いますが・・・。


読めば読むほど、毎日が生き地獄のような状態で、

その痛みは、とうてい私には想像が出来ません。

「筋生検」という、麻酔ナシで、身体の筋肉を切り取る検査、

お尻が化膿し、破裂するという事態、毎日の洗浄の激痛・・・。

動くたびに全身に激痛が走る・・・

とにかく「痛すぎる・・・」

「いかに自分が他人を頼って生きてきたに打ちのめされた。「当たり前」だと思っていたことがいかに奇跡的なことだったか。いかに生きる苦労というものを分かっていなかったか。いかに口だけ人間だったか、なんという傲慢なドアホウだったか・・・

のくだりに、私自身も打ちのめされたような気がしました。

日常という当たり前の毎日がどれほど豊かで幸せであるかと

いうことを、ついつい忘れてしまいます。

自分の甘さや傲慢さにも気付かされた一文でした。


レビューをいくつか見てみると、

著書についての賛否両論が書かれていました。

「自分の苦労ばかりで、周りの友人や両親に対する感謝が見受けられない」

というような厳しい発言もありました。

確かにそういう部分はあるかも知れません。

ただ、もし自分が同じ立場になっていたら、

果たして周りに対して感謝できる余裕があるのだろうか?

何で私ばっかりこんなに酷い目に遭わなきゃいけないの?

と、自分の事しか考えられなくなると思います。

だから、私には著者の事を否定することは出来ません。

自分がしんどい時、辛い時、確かに謙虚になるチャンス

ではありますが、それが自分の想像を超えてしまった時、

「なんで自分だけ・・・」と

傲慢にもなってしまうものだと思います。

聖書の「ヨブ記」をふと思い出しました。


著書の中で、両親はもちろんですが、周りの沢山の友人達、

そして院内でできた同じく難病の「彼」が、著者に対して、

いろいろ力を貸してくれたり、協力してくれてる様子が

書かれています。

おそらく、著書が、ビルマの難民救助活動を

行っていたカルマなのだろうと思いました。

難民救助で多くの人達を支援していたから、

自分が同じような状況になった時、そうやって沢山の

人が援助してくれているのでしょう。

支援を受けたビルマの難民の人達の気持ちを考えると、

救助活動をしてくれる人達に対して、確かに有り難い

事ですが、その状況の中で感謝という気持ちが持てる

状態ではないとも思います。

その不理解感情を考えると、著者が、協力してくれた友人

達に対して、やってもらって当然。と感じてしまった事も

仕方のなかったことなのではないかとも思います。


本を読んで、私自身の傲慢さに沢山気付かされました。

私にはとても想像出来ないような苦しさや痛みの中で、

それを明るく表現できる強さ逞しさ、

(あまりに辛すぎるからこそなのかも知れませんが・・・)

生きる喜びを見つけようと命がけで頑張っている姿、

未だ厳しい闘病生活の中で、これだけ書きあげている

という事実に心を打たれました。



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