寒波が訪れると降雪や路面凍結により、交通がしばしばマヒ状態に陥ることは、度々のことで記憶に刻まれているように思われます。
特に大都市では災害と言い切って過言でないことが、救急車の出動件数からもうかがい知ることができます。
2018年1月24日の東京では、路面凍結による事故が2826件にも上り、この日、救急車の出動件数としては戦後最高を記録したようです。
そこで冬になる前に道路の曲がり角や坂の駆け上がり、山間部、橋梁のたもとに「凍結防止剤」が設置されるようになります。
これらは行政の管轄となり、主に建設業者がその役務を担います。また、道路管理者に任命されると適宜、シーズン中は地区における薬剤補充を繰り返します。
尚、路面の凍結は陽当たりや天候の影響を受けるため、全国津々浦々、あらゆる箇所で公平かつ充分な量が行き渡るわけではありません。
また、道路管理者による散布も凍結すべてをカバーすることは到底不可能であるため、公道上ではその場を通りかかる一般人の使用も許可されます。
次に凍結防止の2つのメカニズムについて簡単に説明します。
液体の中に揮発しない物質を溶かすと、混ぜる前と比べて凝固点(凍る温度)が下がります。
たとえば純粋な水は0℃で凍りますが、砂糖水、食塩水では0℃より更に低い温度で凍り始めます。
凍結防止剤は、この凝固点を大きく下げる薬剤の中から選択します。
因みに路面状況にもよりますが、外気温が氷点下ではなく摂氏3℃でも路面凍結の恐れがあります。
これは気温と道路の表面温度に時間差があるためで、特に寒風が叩きつける橋梁付近などは注意が必要となります。
次に、薬剤が化学反応により液体に溶ける際は、その反応に伴い発生または吸収される熱を反応熱と呼びます。
この反応熱(溶解熱)と先の凝固点降下の2つの働きが凍結を予防しますが、凍結防止剤の種類でいえば
塩化カルシウムにいずれも高い反応が認められます。
最後に凍結防止剤の種類について説明いたします。
凍結防止剤といえば「塩化カルシウム」「塩化マグネシウム」「塩化ナトリウム」の3種が多くを占めますが、いずれも海水の成分中に含まれるものです。
はじめに塩化カルシウムは、ソーダ灰の併産品として工業的に製造されます。
凍結防止の目的以外には除湿剤、凝固剤、食品添加物のほかグランドの防塵剤にも使用されます。
凝固点降下の作用が大きく、また即効性があるため極寒冷地でも使用されます。
因みにある一定濃度の塩化カルシウム水溶液は、マイナス55℃まで凝固点を下げます。
次に塩化マグネシウムは、主に海水および岩塩を原料として製造されます。食品添加物向けはにがりと呼ばれ、豆乳を豆腐に固める凝固剤として使われます。
この3種類はいずれも塩化物であるため植物に直接散布すると枯れてしまいますが、中でも塩化マグネシウムは植生に与える負荷が少ないようです。
最後に塩化ナトリウムです。
こちら鉱物の岩塩として大量に存在、また、海水にも平均値で2.8%含まれます。
一定濃度の塩化ナトリウム水溶液でマイナス21℃まで凝固点を下げます。
尚、食塩は塩化ナトリウムの純度を高めるため工業的に精製して製造します。
以上、ご説明した凍結防止剤は寒波の到来が予測できていれば、その前日までに散布することをお勧めします。
また、降り積もる雪に対しては、何度かに分け散布すると効果的です。
尚、散布する際は、直接触れると手が荒れますのでゴム手袋などを着用して行います。
塩化カルシウム