「嵐山」と「船弁慶」 | (続)ワタシ、サビてます。

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能の公演チケットをいただき、「観てみたい」という同僚さんの一人と一緒に、名古屋能楽堂へ行って来た。

 


能楽キャバンとは、文化庁の「大規模かつ質の高い文化芸術活動を核としたアートキャラバン事業」の一つだそうだ。

2021年に初めて能舞台を見て(過去記事★)、基本の「き」の字くらいは知ったつもりだったけど、まだまだ全然知らないことばかり。


今回の演目は、「嵐山」と「船弁慶」(狂言は「伯母酒)。前回は、物語の詞章(セリフ)と対訳を、ネット上で探し出し、iPhoneで確認しながら観たが、今回は、会場で「能サポ」という多言語字幕のアプリが利用できた。自分のスマホやタブレットにアプリをダウンロードしても良いが、会場にiPadの貸出があったので、借りた。

 

 

舞台の進行に合わせ、詞章(セリフ)と、その簡単な解説を見ることが出来る。囃子の調子の違いで、どんな演者が登場するのかなどの状況解説もあり、能の「形式」のようなものも知ることが出来て、とても助けになった。

 

さて、今回は、”小書”=特殊演出というのがあるのことを知った。例えば、神が主役となる脇能「嵐山」においての小書は”白頭”とある。

 

何のこっちゃ?だが、蔵王権現という後シテは、通常「赤頭」=赤い毛で出てくるところ、白頭=白い毛で出ることにより、神格がより高く重みを増す演出になるんだとか。同じ演目でも演出によって印象が違うんだろうな。

また「船弁慶」は、大人の義経を子方(子供)が演じるというのを観て知った。それは、演目の前シテ(前半の主役)である、恋人の静御前が際立つようにするためとか、恋人である二人の関係が生々しくしならないようにとか、義経に”神聖さ”を持たせるためなどと言われている。

この「船弁慶」、見応えがあり、人気の演目であることがわかる。登場人物それぞれが際立って分かりやすいし、初めて能を観る人にオススメの演目の一つかも。

 

能楽堂は、能に関する展示もある。

 



面を被ってみることもできる。顔に少し面を近づけてみたが、視野がかなり狭い。そのため、能を付けた演者は、舞台上では、色んなものを目印にして、自分の位置を確認するそうだ。その一つが、舞台の柱。中でも、客席から見て左手前の「目付柱」は、面を付けた演者が目印にする重要な柱らしい。

 


 

今回は、この目付柱から少しズレた席に座ったが、なるほど、演者の舞の中で、この柱方向に進んでくるのがよくわかる。ただ、この目付柱が真正面になる席は、観にくいので避けたい。

 

初めて観る同僚さんに、「長時間で遅くなるし、もし、耐えられなかったら、途中で帰ろうか?」と話していた。一つ目の演目が終わった後、「どう?」と聞いてみたところ「訳のわからない複雑な話の演劇を観るより、単純な短い話を、日本ならではの独特な流れ(間)で見る方が、自分には心地良いし、衣装も素晴らしくて面白い」と。私も、やっと、能の面白さが少しだけ分かって来たところだったので、苦にせず、一緒に最後まで観ることが出来て良かった。

 

多少の予備知識はあった方が良いが、小難しいことを知らなくても、少しの手掛かりで、純粋に舞台に引き込まれれば、それで良いと思う。

良い体験をさせて頂けたことに、感謝。