ただ今、荻原浩さんの小説にハマっています。
荻原さんは、2016年「海の見える理髪店」で直木賞を受賞されています。
この作品もなかなか良かったですが、昨日読み終えた「あの日にドライブ」は
長編ですが、とても読みやすく何より主人公の気持ちに共感できました。
メガバンクを43歳で退職した伸郎がタクシーの運転手になって
過去を振り返り、あの時ああしていたら、こうしていたらと
妄想するお話です。
私もタクシーを時々利用しますが、大変なお仕事なのですね。
私はタクシーの運転手さんに、とてもよく話しかけられます。
タクシー運転手は孤独な仕事だから、会話に飢えているのですね。
そして世間から低く見られているということが、この小説を読んでよく分かりました。
以前雪まつりの会場近くでお客さん待ちのタクシー乗り込み、2メーター程先のメガバンクの
店名を告げたところ、露骨にガッカリされた経験があります。
売上金額にノルマがあるのですね。
祈るような気持ちで運転手さんは1時間も前から遠距離のお客さんを待っているのだそうです。
タクシー会社の裏事情がよく分かって大変興味深かったです。
さて、低く見られるということ、私もよく経験しています。
特に離婚し実家に戻ってから、母子家庭=貧乏とみられ、職場の先輩に憐れまれ
望んでいないのに洋服のお下がりなど押し付けられ困惑したものです。子供服じゃなく大人の服です。
私の実家は貧乏ではありません。イメージって怖いですね。
今は病院のスタッフに可哀想な人認定されていると感じます。
私は毛布やタオルケットを義兄からのハワイ土産の布バッグに入れていますが、
技師さんに「そのバッグ、実際にハワイに行って買ったものじゃないんでしょ?」と言われました。
失礼ですよね?ハワイには何度も行ったことがあるのに。。。いちいち言いませんけど。
タクシー運転手の伸郎は、これは仮の姿だ。俺はメガバンクのエリートだったんだと悔しがります。
ああ、その気持ちわかるなあ。
私も当時の女子学生に人気1位の企業に勤めていました。プライドもそれなりにありました。
今の自分は仮の姿なのか?笑
病気なのは、もちろん大きなハンデですが、女にとって年を取ることは
価値が下がっていくことなのだなあと感じることが増えてきました。
透析病院は、社会の縮図だなと感じています。
。。。
荻原さんは銀行にも詳しいようで、50歳を過ぎて銀行に残れる人はほんのわずかだということを知りました。
ほとんどの行員は50過ぎたら出向されるそうです。
厳しい世界ですね。
辛い思いをしながら生きているのは自分だけじゃないのだと励みになりました。
それにしても、透析の後半どうしてもネガテイブな考えに頭を占領されてしまいます。
腕の力が亡くなり、本を支えていられないので読書もできなくなってしまいました。
でも、荻原浩さんの本を読むという楽しみができたので嬉しいです。