2型糖尿病患者が見た糖尿病治療の落とし穴
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2.「患者に頑張れ」という専門医
私たちが病院を訪れるのは、体に不調や痛みを感じ、それを取り除いてほしいと願うときです。多くの診療では、患者は椅子に座るかベッドで横になり、医師が処置や投薬などの医療行為を行って症状の改善に努めてくれます。
つまり、治療の場では医師が「頑張って」くれる存在であり、私たちはその尽力に感謝するものです。
では、糖尿病専門医はどうでしょうか。
糖尿病の診療では、「食事に気をつけてください」「運動を頑張ってください」と、医師の方が患者に「努力」を求める場面がほとんどです。
そして、次回の外来でHbA1cの値が悪化していれば、「ちゃんと食事制限を守らないとダメですよ」「運動をサボってはいけません」と叱責されることもあります。
しかし、ここで疑問が生じます。医師自身は何を頑張っているのでしょうか。検査結果を見て「薬を増やしましょう」「今回は減らしましょう」と指示を出すだけでは、患者の努力に見合う医師の「頑張り」が見えてきません。
確かに糖尿病は、生活習慣が治療の結果を大きく左右する疾患です。手術や投薬で直接的な改善が難しい以上、医師がすべきことは、生活習慣を変えるための「働きかけ」に力を尽くすことではないでしょうか。
「本気で食事に気をつけよう」「運動を取り入れよう」と患者に思わせる。それこそが医師の専門知識と経験を活かす場面であり、最大の役割です。患者が食事制限を守れなかったとすれば、それは患者の意思の弱さではなく、医師の動機づけが不十分だったからかもしれません。
ただ「気をつけてくださいね」と言うだけでは足りません。専門家としての力量は、いかに患者の心を動かし、行動変容へと導けるかにかかっています。
他の診療科の医師が手術や処置で「目に見える」努力をしてくれるように、糖尿病専門医もまた、生活習慣の改善に向けた「目に見えにくい」働きかけに真剣に取り組むことが求められます。
糖尿病がなかなか改善しない背景には、患者の生活がだらしないからではなく、医師の動機づけが弱いという現実もあるのです。専門医自身がこの事実を自覚するようになることを、心から願います。
もちろん、最終的に病気を改善するために最も大切なのは、患者自身の強い自覚と行動であることは言うまでもありません。