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今回のお話はまだ私が北野坂で店をやっていた頃の与太でございます。
どこのお店でも目撃してしまわれる事が多いのが痴話喧嘩でございます、これを見る程イタイ気分になるものはないと私は思っております。実際私も何度かそのような事の当事者となりお店や周囲の皆様に多大なるご迷惑をおかけした事をこの場をお借りしてお詫び申し上げます。
さて皆様は飲食店などのお店で痴話喧嘩をした後当人同士の関係が修復したとしてまた2人で同じお店に顔を出せますでしょうか?
そのお店がよく知った古い付き合いのお店ならいざ知らずそこまでよく知らないお店でやらかしてしまった場合にそのお店の雰囲気が良くても切ってしまうのでしょうか?
これは個人の問題ですので私ごときが皆様に詮索するようなお話でもございませんが大なり小なり気まずさというものは残るかと思われます。
今回のタイトルにもなっておりますコンさんとセンセイはそう呼び合っているホモセクシャルの老人カップルのお話でございます。
このような話をいたします前に一筆お断り申し上げるのですが私は同性愛者でもなければそれらの方を否定する考えを持った人間でもございません。あくまで今回のお話のテーマは「痴話喧嘩」でございます。
供に70前と思われるそのカップルは私の店にやって来て最初は二人して私にうんちくなどを語っておられました、これはよくあることで年配者の若輩者へのいじめ現象もとい啓蒙現象と私黙って聞く耳を持っておりました。
家庭でもロクに相手にされない人間がバーやスナックでホステスやバーテンダーを相手に偉そうな説教をしたり武勇伝を吟じる事は一般的な事で逆にこの程度の事で癇癪を起こしているようでは水辺の生物として生存していくことなど不可能なのでございます。
しかしこのコンさんとセンセイと呼ばれるカップルは最初私やスタッフをいじって(もとい啓蒙して)おられるのですがいつの間にか話の展開は二人の痴話喧嘩になっておられるのです。
どうもコン氏が(いつもなのだが)三宮のホテルモントレーへ宿泊しようと誘うのですがアタックも虚しくオネエ言葉全開のセンセイに怒鳴られフラれるのです。
結局センセイが怒って一人で帰られたり、逆にコンさんが(コン)負けして怒って帰ってしまう。多い時は週2ペースでいつ来店されても大声で何度もこのやりとりをするものですから常連のお客様などはコンさんとセンセイが来店しているのがわかったら帰ってしまったりしておりまして私としては大変迷惑を被っておりました。
ちなみにその当時を知るお客様はほとんどそのお二人の事を存じ上げておりましたものですからお二人のいない時に「コンさんら今日はモントレー行っとんかな?」などと冷やかしを言われる方も少なくありませんでしたので私は今回敢えてお二人の名前とランデヴー場所であろうホテルの名前を皆様周知の上ということで実名であげさせていただいております。
さんざん大声で痴話喧嘩を展開した後でコンさんが「センセイ、ひょっとすると私たちの関係が彼らに知れたかもしれませんね」と今更過ぎるお言葉を仰られた時私は人間どうすれば笑いの神経を遮断する事ができるのかを必死に考え込み上げる笑いの沸騰に水を差す方法を考えておりましたが次の瞬間センセイの一言で一気にそれは凍り付きました
「わかるわけないじゃない、こんなバーテンに」。
あぁ、お二人が一日も早く結ばれるのを心から祈っております私めになんたる酷な仰りよう、最終学歴高校の私にもわかるような間違った知識を大層に語ろうとも嫌な顔ひとつせず受け入れ大声で他のお客様を不快にさせるような迷惑行為で通報してやろうかと思っても押しとどまって来た私に対してそのような仕打ちは酷過ぎます。
ですがこのようなカップルはコンさんとセンセイだけに限らず多くはありませんがおられます。二人でお見えになって最初は私どもスタッフをなじるのですがいつの間にか二人の痴話喧嘩になっているというパターンは何度か経験いたしました。
カウンターの中から見る景色ほど人間がよく見える場所はないのです。こちらの方でも慣れてくればその矛先を私たちではなく最初から痴話喧嘩に持って行く事もやりようではできるように成長いたしました、このように成長いたしましたのも迷惑なお客様コンさんとセンセイのお陰と今も心で感謝しております。
まだご存命でしたらいつか神戸の街で会えるかもしれませんが正直お二人は会いたい類いの人間ではございませんしお二人の方でたいそう学のある大人でしょうからさんざん痴話喧嘩をして迷惑をかけた店の店主に顔向けなど通常の神経ではできぬ事と私判断いたしますので私もこの執筆を最後に永遠に記憶から消す事といたします。
最後に、痴話喧嘩の仲裁だけはうまくいかないものでございます。