部屋住み

極道に入ってきた若い衆はみな部屋住みにされた


これが俗に言うタコ部屋といわれているのかもしれない


それはないとしても若いがゆえに金もなく部屋も借りれず仕方なく事務所の2階などに寝泊りしている


そこで一番に困る事は食だった


女は私しかいない


「おいひろみ若い衆に賄いでも作ってやれ」

「・・・・判ったわ」

「何作ればいいの」

「そんなの自分で考えろ」

バカ!判らないから聞いてるんだろう


2~3人の量ではない


10数名を越していた


大きな鍋やカマを買って来て最初はカレーを腐るほど作ったのだ


当時は組長代行まで食べていた

今は自分の部屋を持ってちゃんとやってるみたいだ


その賄いも瞬く間に無くなった


若いって怖いね


ご飯の炊くジャーも大きいものに変えた


これも瞬く間に消えていく


残されるよりはいいかもしれないが


作るのには大変な時間がかかった


しかし食べてる様子を組長はちゃんと見ていた


自分でシャブをやりながら若い衆にはやらせないというひねくれた根性だ


昨年その組長も2ちゃんで亡くなったのを知った


余りショックではなかった


太く短く生きる人だと思っていたからだ


人生はまるで走馬灯のように過ぎてゆく


みんな私の賄いを食べて成長してくれた


そんな楽しい時期がまた来ればいいとひそかに思ってる


無くなった組長はシャブで無くなったのだろう


大体察しはつく


何度私に助けの電話をくれた事か


いつも知らんふりして寝ていた


私はそれ以降冷たい女と呼ばれるようになった


いずれも古きよき時代だったのだ