ネタ元からいいモノが入ったとの連絡ですぐに引きに行った。


切れ目でもないのにそれが欲しくて体が反応してる。


体中の血管が早く行けとせかす。


考えただけでも寒気がする。

武者震いか・・・・・

それほどにいいモノだ。


男と車で向かったが、出先ではできない。


100に近いモノを試し打ちもないだろう。

信用取引だ。


車を走らせながら内心

(どこかで打ってやろう・・・・)

そう思うことだけで頭が一杯だ。


車の中は静かだ。

会話もない・・・・

二人とも同じ事を考えていたのだろう。



「ねえ、私の実家が近いから寄らない?」


「・・・・・そうだな」


それが何を意味してるのか分かっていた。


車は方向を変えて実家へと向かった。



母が一人でテレビを観ている。

ここは静かだ・・・・


「お母さん、近くに寄ったからちょっと寄ったの」


「お前、顔色悪くない?」


母は知っている。

でも言わない。

それが心苦しかった。


「少し痩せたんじゃないの?」

「・・・・・・・・」


私の頭はクスリを早く入れたかった。

母の能書きなどどうでも良かったのだろう。


男に言った


「私、ちょっと二階に取りに行くものがあるから下にいてね」

念を押した。


私は静かに台所に行き、水を持って二階に登る。


シリンダーを抜いて直接ガンコロを入れた。

シリンダーを入れてシャブを潰す。


コップの水を少し吸い上げてポンプを振った。

溶けるのが早い。

水をもう少し吸い上げたら、ドロリとしたガムシロップみたいだ。


血管が浮いてきてる。

体も反応しているのだろう。


一発で入ってくれた。


針も抜かないうちに何とも言えない快楽に入った。

このままじっとしていたい気分だ。

その余波が何度もやってくる。

これがたまらない。


足が宙に浮いた様な、雲の上を歩いている様な・・・・凄い効き目だ。


下には母と男がいる。

いつまでも二回で余韻に浸ってる訳にも行かない。


私はフワフワとした体で下に降りた。

できるだけ正気を装ったが、男は私の目を見て

(やりやがったな!)

そんな目でみていた。


母も知っていたに違いない。

「どうしたの?」


「うん、本を探していたんだけどなかったわ」

何でも咄嗟に出るもんだ。



母は玄関先で「また、おいでね」と言う


その言葉が私に後ろめたさを感じさせる。


しかしシャブの威力はそんな母でさえも撥ね退けてしまった。


車を出してサイドミラーから見る母は心配そうな顔をしてずっと見ていた。


自分でやりたい為に実家に寄ったのだ。

母は私がいつかやめてくれることを信じていたのだろう。


言葉に出して言わない母は顔に出る。

それを観るのが少し哀しかった。


悪いと思いながらシャブに走ってしまう私には何を言っても無駄だった。



車中、男に言われる

「お前、二階でやってただろ・・・」

「そうよ」


私は一人で陶酔感を味わっていた。


男が自分のも作れと言う。


仕方がない・・・・


近くのコンビニに寄って、スプーンと水を買った。

まるでシャブをやりますって言う買い物だ。


車に戻ると男の顔が蒸気して赤くなっていた。


アクセルを踏んでなるべく人気のない場所を探すのだが、こんなときに限ってない。


「早く作れよ!」


かなりイラだっている。


仕方なく走る車の中で作ることにした。


スプーンは必要なかったのだ。


直接入れてなるべく人目に付かない様に作った。


それを渡すとポンプを口にくわえて運転をしている。


走りながら腕をまくり、信号待ちで一発入れた。


使い終わったポンプを私に渡す。


その顔を見たら目がおかしい。

ロンパリだ。


かなり濃かったのかも知れない。


車も蛇行運転になっている。


私は止めさせた。



時間も夕方になって道路も込んできた。

身動きが取れない車の中で私たちはボーっとした顔で高揚感にいた。


しかし、それも束の間だ。


目を遠くにやると検問をやってるではないか。

一瞬シラフになる感じだが気は大きい。


どうせ飲酒かなんかだろう・・・・

しかし時間が早い!


「ヤバイぞ!」


「・・・・・・・・・」


「逃げるか」


「そうね」



しかし前も後ろも詰まってる。

逃げるどころではない。


何の検問か知らないが、こんなときは焦る。


頭の中に、逮捕・・・・などと言うものが直結していた。


1~2gのモノではない。


私たちは明らかに挙動不審だ。


すぐに車の窓を全開にした。シャブの臭いはすぐに分かる。

ささやかな抵抗だ。


車に3人の警察官が寄って来た・・・・・・


終わりか・・・・

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