昔、33歳のころに仲良くしていた知り合いの女がいた。


働き者でいつも逞しさを感じていたのだ。


子供が二人いて亭主は酒の飲みすぎで腹水が溜まり、肝硬変で入院していた。

この彼女は40は過ぎていただろうか・・・・・・


亭主が入院していたこともあって、私はシャブを持って彼女の家をねぐらにしていた。

住む家が無かったわけではない。

立派なマンションがあったのだが、そのときは珍しく一人身だった。


自然と足が向いてしまう家だったのは確かだ。


昼間は留守番を頼まれて、居間でシャブをズケながら一日いた。

そのレンチャンだ。

普通なら文句の一言でも言うかも知れない。


当時は羽振りが良かったので、生活費の面倒まで見ていた。


人の気持ちは金で買えないと言うが、このときに思った。


金で人は変わる・・・・


毎日が外食で、その支払いは私が払う。


当時、次の旦那になる人がいたので、その人が払っていた様なものだ。


そんな生活をしていていても、彼女は少し気に入らないらしい。


切れ目でコタツに寝ている、そばで友達と電話で話している。


前にも書いたように切れ目でも耳が起きているのだ。


「この子がさあ、薬をやってね。。。。」

そんな会話が聞こえてきた。

もう脳細胞はおきている。


早い話はが、薬をやりながらいつまでも家にいるのは困ると言うことだ。



私の脳裏に、よからぬことが浮かんだ。


(この女、ポン中にしてしまえ・・・・)


それだけだった。


電話を切ったころに目が覚めた振りをして、考えている。


堅物の女だ・・・・・・


私がポン中なのは百も承知だ・・・・



ある晩、私は思い切って1gのパケを出して言った。

「ねえ、一回ぐらいやってみる?」


「やだ、やめておくわ」


私は内心笑った。

こんな答えを即決で出すのが一番落ちやすい。


腹黒い私は

「いいじゃない、一回よ、すぐにやめられるわ。心配しないで」


「それなら注射はいや。のむならいいけど」


(落ちた・・・・・)



私は1回分を、苦いと前置きして渡す。


用意してあった水で一気に呑んだ。


あれほど拒否していた女が飲んだのだ。

少し期待が外れた


「私は絶対にいやらない!」

そういうと思っていた。


それから40分・・・・・・・


止め処も無くしゃべり始めた。

シャブの典型的な初期の症状だ。


同じことを何度も言う。

普段聞かないことまでしゃべりだす。

(参った!)

私は思う。

人間やめる前に国はこんなものを作らないと、特攻隊の飛行機に乗れないほどの緊迫感をもたせたのだろうか・・・・・


まじめな普通の主婦がシャブにはまるのは簡単な事なのだ。


人間の本能には好奇心という悪魔が潜んでいる。


私は悪魔を背負って生きている。


その、主婦は今、末端売人から混ぜ物を買って自分で打っていると言う事は聞いている。