詐欺師は大破した車の中で痛いと大きな声で唸っているが,後で聞くとその記憶はないという。

イヤな記憶は忘れるのだろう。


詐欺師の女房には呶鳴られる。


「昨日退院したばかりなのよ!!」


「だったら迎に来い!!」

そんなやりとりもあった。



私も詐欺師も車の中から出られない。


刑事がやってきた。


私は胸の痛みを大袈裟にしてみた。


刑事は「大丈夫か!今ドアを壊すから待ってろ」

その言葉を待っていた。


シャブを何処に捨てるか考える。


私の車は特殊な改造がしてあって、隠す場所は沢山あった。

しかし、それに手が届かない。


10g」はあったと思う。

飲むわけにも行かないだろう。困った。


私は刑事がいない隙に、詐欺師の上着のポケットに入れた。

何も知らない詐欺師はデカイ、ズウタイでのた打ち回っている。

その記憶もなかったらしい。


大体朝方の事故は、何かワケありなのだ。

飲酒か、ヤバイからみが多い。


詐欺師は全身骨折の他に片足が車体の壁を破って外に出たのだから痛いはずだ。


でも、そんなことにかまっていられない。

私は私なりに大変だ。


こんな時の人間の頭は意外にフル回転するものだ。


詐欺師の上着に入れたのも、上着が血だらけだった。

そんなものは本人が要らないと言えば廃棄処分だろう。


当時は思ったものだ。

「あ~今頃、シャブは廃棄処分だな・・・」


客に届けるものだった。


また、パケを作ればいい・・・・むなしい・・



私は救急車で病院に運ばれ(詐欺師もだ)レントゲンを撮った後に廊下を歩いていたら、非常口が見えた


「誰もいない・・・・逃げよう・・・」


私はどうやって組まで帰ったのか記憶にないのだが、タクシーを拾ったのは覚えている。

料金は忘れた。


亭主に散々怒られて、替え玉に電話した。

免許の綺麗な人間だ。


私は女なのに、身代わりは男だ。


そまでの経緯をこと細かく説明した。

現場検証にマチガイがあると困る。



そんなこんなで何とか2ヶ月も過ぎて詐欺師がやってきた。

タクシーで着払いだ。


松葉杖をつきなから

「こんな体じゃ~何処にも働けなくてね~」


何を言わんとしてるか私でも分かる。

かねの無心だ。


タクシー代

生活費全て


こんなものをさりげない会話の中に盛り込んでくる。


銭を渡さないと毎日タクシーで着払いだ。


亭主は、組に戻して電話当番でもさせろと言う。


月に何十万を要求する。

文句も言えない辛さがあった。



亭主が寝るときに言った

「シャブでも食わせてやるか・・・・ヤクネタだなー・・・」


「そうね、それがいいわ・・・私がやるから・・」

深夜に私達はそんなことを能面のような顔でマジメに話していたのだ。



翌日、詐欺師が慎重なのを知っていたが、私は二階に呼んだ。


ネタを溶きながら

「その後遺症、つらいわね。晴れ晴れするから1本打ってあげるわ。組長もいないから平気よ」

詐欺師は亭主には弱かった。


最初はためらったが、直ぐに腕を出したのには意外だった。


私は内心、ニタリとしていたのだ。

これで金を逆に払ってもらわね・・・・・


詐欺師がシャブ漬けになるのは早かった。


シャブとはこんなもだろう。


ヤクネタから、スッカリと売人気取でいた。



詐欺師は半年もするとシャブでパクられた。

誰もが内心ホットしたものだ。


拘置所から手紙が届く

「美味しいもの食べさせて頂いて楽しかったですよ。食いすぎてここで吐いてもいいんですかねー。本当に吐きそうですよ」


最後まで詐欺師だった。脅迫間まで覚えたのか・・・・

しかし,誰もそんなことでビビル者はいなかった。


詐欺師の行方はわからないままだ。


おでこに、エッチな女のマークの縫い目がある人物にはご用心!!