刑事が突然私の目の前にシャブを放り投げた。

手を伸ばそうとしたら

「触るな!!」

(だったら出すなよ!)


「お前の男から押収した」

(あのバカ!パクラレタのかよ)

内心そう思いながら平静を装った。私の顔は能面だ。


これでは取調べが随分変わってくるじゃないか、

どうつじつまを合わせるか・・・・・

(そんなことしか浮かばない。こっちの身も危ない)


刑事が私に腕を見せろと言う

(どうせ、シャブコンだろ!)


そんなものは無いから見たけりゃ見ればいい。

グイっと腕を掴むと、皮膚を持ち上げた。


「これを良く見ろ!!」

何てこったい!針を刺していた個所がへこんでる。

どれだけ打ったか思い知らされた。


こんな調べ方があったのか・・・・宮原出たら覚えとけ!!


その日、房に帰ると誰もいない。

正座が基本だが、そんなの知ったことではない。

大の字になって寝ていた。

看守も文句は言わない。

大騒ぎするよりマシだろう。


房の中には看守と私の2人きりだ。

皆、取り調べから帰ってこない。

音も無ければ何も無い。余りの静けさに耳が良くなって行く。


私は看守に言った

「先生、先生は毎日ここにいるって事は、毎日留置されてるようなもんだね」

返事が無い。

私は接見禁止だ。これを石鹸禁止と間違えていた。

(あ~私はずっと石鹸が使えないんだ)

なんてウブな・・・・

それも次第になれてくる,,,,,恐いものだ。


新聞、雑誌、手紙は読めない。

外部からの情報が何も入ってこないのだ。


しかし、同じ房のストリップで特出しをやった、年季の入ったオバちゃんが雑誌を読んでいた。

それをしっかり借りて又、大の字になって読み漁る。


規律では昼間は正座、私語は厳禁、、、、そんなものまもってる代用監獄なんてお目にかかった事は無い。

全国渡り歩いたが、看守の方から話しかけてくるパターンが多い。

「あんた、生まれは何処?」

「今日のご飯はどう?」「今日は天気がいいぞ」「お菓子でも食いたいだろ」

みんな看守の言葉だ。

こっちは、働いてもいないのに眠たいんだ!うるせ~んだよ


一つは教えてあげる

新潟の燕三条署だ。あえて実名を出させてもらう。

それなりのことがあったからだ。


都内の留置場とは異質だった。

1歩間違えれば、今で言うセクハラの温床だろう!

燕三条の職員が見て文句があるならいつでもコメントしろ!!

受けて立つよ!


話がそれた。すまん!!


外部からの差し入れは現金ぐらいだ。

それが入ると看守に呼ばれ

「シインだ!」といわれる。

シイン?

試飲、死因・・・・・私印か。

捺印くらい言えよ。


ここにいると人差し指の指紋が消えそうなくらい毎日シイン?を押しては紙で拭く。

実際,私の指紋は薄くなっていた。


誰もいない房で昼寝をウトウトしはじめた。


夢を見ていたのだ

私がシャブを打ってる夢だ・・・・・・

現実と変わらない

しっかりとネタをカリカリとシリンダーで潰してスプーンの中で溶いている

ドロっとした濃い目のヤツだ。

1人でニタリと笑う。

血管が呼んでいる様な錯覚に陥る。

今なら何処にでも入る。

しかし、いつもの場所に針を刺した。


針を抜かないうちに全身に鳥肌が立つ。

(いいモノだ。マブネタだな


そんな時に目が覚めた。

房に女達が帰って来た


それから少し立って私の管轄の宮原が来て呼ばれた。


「お前の尿から薬の反応が出たからな!! これで使用がつくな!」


バカヤロー!!

やってもいない体で、何で反応が出るんだ!

新米刑事!御託を並べるなよ!


しかし、科学反応だ、マジかよ~

半分呆れて、半分マジだった。


でも何でだ?

1年もやってないのに出るのはおかしい。

瞬間的にバカ亭主を思い出した。


調味料?

それしかない・・・・・・

砂糖?塩?・・・・・・・

そんなのはどっちでも構わない。

冷凍室の氷に溶かしたシャブを凍らせておくぐらいの男だ。


パクられる前の日にその氷で酒を呑んだ。

余り酔わないなとは思っていたが・・・・・・・

あの氷だったのか。

苦味も感じなかった。バカだなー

バカ亭主を絞め殺したくなる。

気が付かない私もバカだった。


翌日、検察庁に行く。

行きたくないけど、パクられたら誰でも行くのだ。


私の名前を呼ばれてドアを開けた

そこには扇子を持った検事がニタリとした顔で待っている。

顔でたとえたら大橋巨泉の様な風貌だ。


「私00です。今日が初めての研修の仕事で、あなたが初めての人なんです。」

えーーーーーーーーーーっつ!!

マジで言ってしまった。


だったら、こっちの方が先輩だ、この攻防戦はどうなるか楽しみだ。


にらみ合いと馬鹿試合だ。


検事が意外なことを言った。

私は腹でニタリと笑う