2022年3月26日、愛知県芸術劇場コンサートホールで行われた、

「華麗なる4大ピアノ協奏曲の響宴」 (ピアニスト横山幸雄さん)

 

①ベートーヴェン:「皇帝」

②ショパン:ピアノ協奏曲第1番

③チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番

④ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番

 

以上の壮大なるプログラム。

 

コンサートは、“圧巻” の一言。

これだけのプログラムにも関わらず、「バテる、疲れ」など、物ともしない。

あと3曲ぐらいは優に弾けるだろう、恐ろしいスタミナ。

精密機械のように、一つの狂いもなくプログラミングされ、洗練された演奏。

 

この2年程のコロナ禍で、普段はスマートフォンのスピーカーから流れる音楽を“疑似体験”していたので、

ライヴコンサートはとても新鮮だった。

 

特に弦楽器たちの臨場感。

弓で擦られた弦が乾いた木に振動し、それらが互いにシンクロし呼応し合う。

オーケストラにおいては、プレーヤー個人そのものと言うより、楽器の個性を活かす事であろうから、

その楽器の個性を存分に味わうには、その場に居合わせるしかない。

 

また協奏曲は、そのオーケストラと独奏との協演であり、特にピアノ協奏曲の場合は、

オーケストラとオーケストラの協演とも言える。

本来ピアノ独奏者の個性が存分に発揮されるはずだが。

 

今回私が感じたのは、横山さんの演奏は、オーケストラも活きているということ。

ピアノ協奏曲にも関わらず、オーケストラの音楽と楽器の個性もしっかりと味わえた。

たいていは、“個性溢れる” ピアノに気を取られてしまう。

 

まずは指揮者やオーケストラに気持ちよく演奏してもらうことが、すなわち自分の演奏も活きるということなのか。

とはいえ、自身の存在感もたっぷりと出ていた。

これが正に彼の個性?!

 

ふと思い出した、

1990年の第12回ショパン国際コンクールで、

横山さんが第3次予選を通過し、ファイナルに向けてのオーケストラとのリハーサル時に言い放ったコメントが印象的だった。

まさにこれか・・・

 

(オーケストラとのリハーサルを終え)

インタビュアー:

「大人しかったね、(指揮者に)あまり注文出さなかったけど大丈夫?」

 

横山さん:

「いや~、指揮者のやりたい様にやるっていう感じだから・・」

 

インタビュアー:

「さっきのケヴィンの時は、ケヴィン色んな事(指揮者に)言ってたけど~・・・」

 

横山さん:

「でも、あの人(指揮者)の出したテンポで弾いてると、なんか満足そうな顔して指揮してくれてるから、

安心して弾ける方がいいかなと思って」

 

インタビュアー:

「自分のテンポとは?」

 

横山さん:

「もちろん全然違います」

 

インタビュアー:

「大丈夫?」

 

横山さん:

「ええ大丈夫です、どうにでも弾けますから」

 

 


個性を活かす方法も色々あって、共演者を活かすことが自身の魅力を出すことか!?

しかし、どうにでも弾けないと、そうはいかない。

 

 自分だけが変に目立つと共倒れになるのか。

まずは相手を活かす。

人間同士も楽器同士も、同じだな。