Steinway&Sonsから新型のピアノ「SPIRIO」が、来月発売されるということだが。

新型とは、「自動演奏機能が付いた」という話だ。

最大の売りは、有名ピアニストの演奏が忠実に再現されるということ。一部、映像付きもあるという。

まさに、今流行りの自動機能である。

有名ピアニストの演奏が、“ナマ”で、しかもスタインウェイでいつでも聴けるということだ。

ついにここまで来たかと、開いた口が塞がらないが、ちょっと贅沢な動画を観ていると思えば、楽しめる価値は十分にありそうだ。

しかし私個人的には、それがスタインウェイである必要はあるのかと、やや首をかしげてしまう。

 

スタインウェイは、1880年~1970年頃(買収されるまで)、スタインウェイファミリーの手で作られていたと言われており、その証が私のピアノにもクッキリと刻み込まれている。つまり、手作りというのが基本理念である。

果たして、スタインウェイファミリーは、スタインウェイの本当の音色を自動演奏で伝えたいと今思うだろうか。

そもそも私は、聴き手のためより、『弾き手』のために、1台1台こだわり抜いて作られていると思っている。

 

バイオリンではあるが、以前、名器ストラディバリウスとそれ以外のバイオリンとの聴き分けが可能かという番組で、

海外の音楽大学の教授5人が集まり、パーテーション越しに違いを聴き取るのだが、結果4人が分からなかった。

しかし弾き手は、その違いをはっきりと感じている。

 

量産されている楽器は別として、各メーカーが “手作り”をウリにしているグレードの楽器こそ、“手作り” の演奏であるべきではないかと思うが。

スタインウェイは正に、その象徴とも言えるピアノと思っていたが。

 

「この紋所が目に・・」

入らなかったか。