読み返したい小説 | さばとごはん

読み返したい小説

こんにちは、寿康です。


今回は、川端康成著 『伊豆の踊子』 を

読み返してみました。


『伊豆の踊子』は、作者が26歳の時に

書かれた作品です。


年譜を見ると、作者は19歳の秋に初めて

伊豆に旅行。

旅芸人の一行と道連れになる

とあります。


おそらく、初めての伊豆旅行で、旅芸人の一行と

道づれになった体験が、この小説に書かれている

のだと思います。


小説では、主人公は二十歳の旧制高校の学生

として描かれています。


小説のあらすじは


主人公が、伊豆への一人旅の途中で、旅芸人の一行と

出会い、道連れになります。


主人公は一行の中の、美しい踊子(14歳)に

心魅かれます。


踊子との出会いと、別れまでを描いた

清冽な慕情を感じさせる作品です。


主人公はなぜ一人旅にでたのか?


「二十歳の私は自分の性質が孤児根性で歪んでいると厳しい

反省を重ね、その息苦しい憂鬱に堪え切れないで伊豆の旅に

出てきているのだった。」 (本文より引用)

とあります。


主人公は、自分の孤児根性に苦しみの根っこを

見ています。

作者自身も、二歳で父を失い、三歳で母を失って孤児となっています。

たった一人の姉とも10歳のときに死別しています。

そして、両親亡き後、一緒に暮していた祖父も15歳のときに

亡くなります。


その事実をみると、作者の孤独の闇は深く

心に沈みこんでいるのだと思います。


その主人公の孤独の闇に、光をあててくれるのが

踊子の主人公に、そそがれている清らかな愛情だと思います。


主人公の旅芸人の一行に対する視点は


「好奇心もなく、軽蔑も含まない、彼等が旅芸人

という種類の人間であることを忘れてしまったような

私の尋常な好意は、彼等の胸にも染み込んで行く

らしかった。」(本文より引用)

というものです。


そんな、主人公に対して踊子は


「いい人ね」

「ほんとにいい人ね。いい人はいいね。」

(本文より引用)


と何のかけひきもない言葉で、主人公の

心にその優しさが、染みわたっていきます。


そして、花のように笑う踊子の言葉に


「私自身にも自分をいい人だと素直に感じることが

出来た。晴れ晴れと眼を上げて明るい山々を

眺めた。」 (本文より引用)


と自分がいい人に見えることを素直に

喜べる心境になっています。


私はこの小説の主題は

孤独な魂の救済だと思います。


孤独とは、どこにもこの私が帰っていく所が

なくなってしまう事であり、私の事を案じてくれる人が

一人もいないという事です。

そして、根無し草のように、流転していくことになります。


踊子の清らかな愛情が、主人公の孤独な心の闇を

破り、光を投げかけたのだと思います。


この小説を読んで、ある人の言葉を

思い出しました。


いのちというのは それを愛そうとするものに付きしたがう。


それを傷つけようとするものには 決して付きしたがわない。


それでは


今日は このへんで

 

失礼します。