『芋粥』
こんにちは、寿康です。
今日は、芥川龍之介の『芋粥』を
読んでみました。
時代背景は、平安朝です。
主人公は摂政藤原基経に仕える
平凡な侍です。
姓名すらなく、作品の中では、五位という
位階で書かれています。
五位と云うのは、昇殿を許された者の最下位で
五位から四位に昇るのは、至難であったそうです。
そして、この主人公は風采の上がらない男で
上役や同僚からも蠅程の注意も払われない存在
なのです。
そして彼らは五位に対し性質の悪い悪戯をします。
それに対し五位は
「同僚の悪戯が、嵩じすぎて、髷に紙切れをつけたり、
太刀の鞘に草履を結びつけたりすると、彼は笑うのか、
泣くのか、わからないやうな笑顔をして、
いけぬのう、お身たちは。」
(本文より引用)
と言うだけなのです。
主人公の五位は、周囲からの軽蔑の中で、
それに対し怒りもせず、飄々と受け流して
生きています。
そんな五位にも、一つの希望があります。
それは、当時は高級料理であった芋粥を
飽きるほど飲んでみたいという希望です。
五位が長年夢見ていた、その希望が
ある日突如かなう事になります。
五位の希望を
偶然に聞いた同僚の侍
藤原利人が、自分の館のある敦賀まで五位を
連れて行き、芋粥をご馳走する事になったのです。
そして利人の館に案内され、翌日は芋粥が食べれる
という前夜、五位は不安になります。
「芋粥を食ふ時になると云ふ事が、さう早く、来ては
ならないような心もちがする。」
(本文より引用)
という不安です。
そして、翌朝の朝飯の膳に向かった五位の前に
「なみなみと海の如くたゝえた、恐るべき芋粥」
(本文より引用)
が登場します。
その芋粥を前にした五位は、一口も食べないうちから
満腹感を感じてしまうのです。
そして、やっとの思いで一椀の芋粥を半分だけ食べ
決してそれ以上は食べられなくなってしまいます。
そして、これ以上芋粥を食べずにすむという
安心感を懐くのです。
彼にとっての幸福は、芋粥に飽きたいという
欲望を、ひっそりと自分の胸の内に秘めていた
時だったと、作者は言っています。
そして、主人公の五位もその事に気付き
幸福だった自分自身を振り返っています。
願いは叶ってしまえば、願いでは無くなります。
人間は、この世で手に入るものでは
満足できないのかもしれません。
そして、求めても手に入らないものを願って
苦悩する存在ではないかと思います。
最後まで読んでいただき
ありがとうございます。