じこ報告書 -50ページ目

ダイイングメッセージ

死亡推定時刻は21時30分。
俯せのまま倒れている男の左手は、力無く伸びていた。

証言によると、男は未明から年賀状の宛名書きに勤しんでいたという。
結局、仕事に出掛ける4時間前に就寝。一日の仕事を終え帰宅。
寝不足から来る疲れも溜まっていたのではないかと思われる。

伸びた手には携帯が握られていた。
画面を確かめて見ると、文字列が並んでいるのが分かる。
一見、単語のようにも見えるが、微妙に不自然さが残る。
もしや、これがダイイングメッセージというものだろうか。







ピクッ。



男に反応があった。
まだ生きていたのか。緊張が走る。
彼は頭を上げ、近くにあった時計を確認する。
0時をまわっていた。
『しまったなぁ』という顔をし、かぶりを振る姿は何とも力無い。

買い物に行くつもりが、うっかり寝てしまうとは。
記憶があるのは、メールのレスを書いてて…あぁ、何書いてんだこれは…

軽く痺れた左手を庇いながら、オレは夕飯の食器を台所に持っていった。
買い物に行かねばならなかった。