「もうここには来ない方が良いよ」

ポツリとフクちゃんは呟いた。色白で愛嬌のある顔立ちからは想像もできないような、一切の妥協を許さない言い方である。

「一体何なんだ?」

残念ながら俺には何も見えない。

正直、何が何だか分からない状況である。

俺が何を聞いてもフクちゃんはそれ以上何も言わない。

そう、あれは30年前の夏のある日。

相棒と内で二台の車に分乗、男1人女1人のペアで肝試しに心霊スポットに行ったのだ。

女性を怖がらせれば抱きついてもらえるなどと不謹慎な下心を隠しながら男達は各々ハンドルを握った。

ところが、案に相違してフクちゃんは冷静なのである。霊感があるってやつか。

俺も怖くはない。だって、見えないんだから。血まみれの落ち武者だろうが悪鬼の形相の女性だろうか知ったことではない。

「落ち武者?女の子?それともお婆さん?」

俺は半分茶化してみた。

フクちゃんはキッと睨むように俺を一瞥しただけで、やはり何も言わない。

「見えないっていいね」

外を見れば相棒の車もすぐ近くにある。中きらは、キャアキャア黄色い歓声が。

「ち!あいつだけ楽しそうだ」

「ねえ、フクちゃん」

瞬間、フクちゃんは鞄から何かを取り出した。カチカチカチ!何かを打ち付けている。

そして、白い粉を車の中に撒き始めた。

見えない俺にとってはこっちのほうが怖い。

「魔除けの火打ち石と塩だよ。もう行こう。ここ、ホントにやばいから」

ヤバイと言われても何も見えないいし、そもそも愛車の中で火打ち石打たれるわ、塩撒かれるわで不愉快である。

フクちゃんは続けた。

「あんたもこれだけ私と一緒にいたら見えるんじゃない?あそこ」

フクちゃんの指差す方向を見て俺は愕然とした。

自殺した老婆、若い女性、そして得体の知れない生首。全部噂だと思っていたのに。

いつしか気を失っていたようだ。

気づけば朝。隣にいたはずのフクちゃんはいない。

訳の分からぬまままだ停まってる相棒の車に駆け寄る。

「フクちゃん、知らない?」

「お前寝ぼけてるのか?フクちゃん、去年亡くなったじゃんか」

 

夏になると思い出す。

その頃陽子は悩んでいた。

息子の猛が変態男に付きまとわれているようなのである。

「お母さん、今日もセーラー服着たおじさんと遊んだんだよ」

いじめられているのを助けてくれたり、キャッチボールの相手をしたりと、猛もなついているようだ。

「知らない人について行っちゃダメでしょ!」

陽子が叱っても猛は意に介さない。

「いつか警察に突き出してやる!」

そう思って注意をしているのだが、ある時はうとうとした隙に、またある時はちょっと目を離した隙に猛はいなくなっている。

小一時間もすれば戻って来るのだが、いつ誘拐されるか気が気ではない。

そんなある日、その男と相見えることとなる。港から近くの公園で居眠りしたフリをして駆け出した猛の後をつける。

「おじさん!」

駆け寄った猛を出迎えたのは紛れもなくセーラー服姿の若い男。真っ黒に日焼けした顔から白い歯が眩しい。

陽子はたまらず駆け寄る。

「あんたでしょ?いつも猛を連れ出してどういうつもり?!」

男は何も答えず、にっこり笑うと被っていた帽子を陽子に投げつけた。

「大日本帝国海軍」

帽子には書かれた文字を読み、ハッとなった。ただ事ではない。陽子は母親の元に向かった。

一部始終を話すと、母はおもむろに席を立ち、一枚の写真を抱えて現れた。

「この人でしょ?」

陽子は絶句した。

「あんたのお爺さんだよ」

陽子は祖父の顔を知らない。以前、母に聞いても答えようとしなかった。

ポツリポツリと母は話し出す。

昭和20年、大平洋戦争末期の頃の事である。呉の軍港にて、呉の大空襲で戦艦伊勢は大破着底、多くの乗組員が犠牲になったが、その中に当時勤務していた祖父の名前もあった。

「おじいちゃんが猛を守ってくれてたんだね」

蝉の声がいつしか止んでいた。

 

「これて100話目」

最後のロウソクを吹き消しながら徹は生唾を飲み込んだ。

「何も起きないよ?」

美紀子が笑い声混じりで茶化す。

ここはとある廃屋。心霊スポットとして名高い場所であるが、誰からともなく百物語をやろうと言い出し、男女5人で徹の狭い軽自動車でやってきた。

隣で黙って2人のやり取りを聞いていた麻子が苦痛に歪んだ顔で徹の顔を見る。

「麻子、お前のその顔!」

徹が素っ頓狂な声を上げる。

見る見るうちに麻子の頭から真っ赤な血がほとばしり始めた。

達は腰を抜かした。他は腰を抜かす者、飛び上がったまま動けなくなる者様々だが、不思議と車に向かって走る者はいない。

「キャハハ、、、!」

突然、麻子が高らかに笑い出した。

すると、他の連中も笑い出した。

「徹、ごめん。俺たち全員でお前を騙そうと思ってさ」

明が笑いをこらえながら謝る。

「それにしても麻子、すごいな。最初は気が狂ったフリするだけの約束だったけど、血しぶきまで、しかも消えるインクなんだね」

麻子は先ほどの血しぶきが消え、髪の毛は濡れたままだ。

しかし、ショックが大きかったのか、徹は顔面蒼白のままだ。

「徹!さっきのはぜーんぶお芝居!お前をからかおうとしたんだよ」

徹はようやく正気に戻ったようだ。

そしてようやく口を開いた。

「お前ら、さっきから麻子麻子って、一体誰なんだ?」

「!」

皆が振り向くと、そこに麻子の姿はなかった。

 

今回は自分自身が体験した実話を基にしたフィクションです。

 

家にある、30年以上使い古された電話帳。小学校の頃から使われている。物持ちの良い話だ。その中にある、山田雄司。ここだけは丁寧に住所まで書かれている。

菊次郎戦友。子供心ながらに山田氏の名前が追記された日のことを思い出す。

遥か小学校時代のことだ。ミンダナオ沖で輸送船に乗船中爆撃に遭い戦死した大叔父菊次郎の法事が他の年忌と合わせて行われた。

親戚一同が集まる法事。当然ながら出席者は見知った顔だ。その中で、山田氏だけ見知らぬ顔だった。

「おかあさん、あの人誰?」

法事の後で母に聞くと、大叔父菊次郎の戦友だと答えた。

菊次郎の亡くなった時の様子を教えてくれたと言う。当時、軍艦が沈没しても、3つのハードルを抜けねば生きることはできない。

最初は沈みゆく軍艦のスクリューや水流、爆発時の破片にやられる。第二に、トドメを刺しに現れた敵機の機銃にやられる。そして、救命ボート不十分な状況下、泳いで付近の島や味方の軍艦にたどり着く。

そんな中山田氏と大叔父菊次郎は共に岸に向け泳いでいたが、菊次郎は力尽きて海底に沈んでいったと言う。

そんな話が走馬灯のように頭をよぎる。

「山田さん、もう、亡くなったのかな?今でも連絡取ったりしてる?」

法事に呼ぶくらいだから当然だろう。

「それがねえ、山田さん、なぜか誰も呼んでないのに法事に来たのよ。家の住所や日にちまで知ってるなんて」

大叔父菊次郎の思いが50年の時を経て戦友を呼んだのだろうか。

 

「驚くだろうなあ。今回は金かけたからな。」

親戚が衣装屋の淳が甲冑を安く借りることができたからだ。

会社のリクレーションとして古戦場跡で肝試しを提案したのは淳だから、張り切っている。

「さてと、あとは甲冑だな。」

お化け屋敷の最奥は、淳と宏樹の演じる落ち武者である。そのままでは面白くない、と淳が考えた。

「宏樹、この槍は、穂先はゴムでできていて、銀紙が貼ってある。つつくとゴムが柄の中に引っ込む。こいつで俺をつつけ。そしたら、この鮮血がドバっと!うん?消えるインクさ」

宏樹もニヤリと笑う。

肝試しのヤマ場の落ち武者。宏樹は何度も淳に槍を突き立て、その度に女子社員は悲鳴を上げ、ある者は泣き出す。

「淳、やったな!最高だよ」

他の連中が打ち上げのために街に繰り出したあと、残って片付けをやりながら宏樹が話しかける。

「、、、」

淳からの返事はない。

「淳!」

淳は仰向けになり、口を開けたまま動かない。槍を突き立てた所から血のようなものが吹き出している。

宏樹は正気を失った。そう、血糊は消えるインク。赤いままな訳はない。

「淳!」

そして淳が死んだと分かった瞬間、宏樹は気を失った。

どれほど経ったのか。ようやく我に帰った宏樹が目を開けると、そこには顔を覗き込む淳の姿。

「よかった!夢だったか、生きてたんだな、淳!」

淳はにっこり笑って答えた。

「死んだのはお前だよ」

 

さて、お話を始める前に、引き返すなら今です。どうしても読みたい方だけ、どんな事があっても筆者に文句言わない、恨まないことをお約束頂き、進んで下さい。

呪いの話ってありますよね?

聞いたり見たりしたら呪われる。あれってあるんですよ。

おいらの高校で大騒ぎとなり、先生からストップがかかるほどの騒ぎになりました。

高校に入学してすぐの頃、女性の殺人事件が近くでありました。美人で愛嬌があって、近所の評判も良かったそうです。しかも結婚式の一週間前。さて、遺体は近くの空き地で見つかったんですが、なぜか右足だけは切断されており、見つかりませんでした。遺体を見た近所の焼きそば屋のおばさんの話では、びっくりするようなすごい形相で亡くなっていたとか。犯人は結局分からずじまい、迷宮入りとなってしまったんです。

さて、以上が呪いの話です。この話を見たり聞いたりした方のうち、霊感がある無しに関係なく半分くらいの方はその女性の姿を見る事になります。

自分は見ましたが、これから話すやり方を忠実に守ってことなきを得ましたが、バカにしていたクラスメートが1人ノイローゼになりました。数ヶ月で元気になりましたが、その時の記憶を失ってたので何が起こったかは知りません。

仲間にも聞きましたが、女性の表れ方は色々。突然目の前に現れたとか、夢に出たとか、肩を叩かれて振り向いたらいたとか。自分は肩を叩かれました。

女性は美人だったのが嘘かと思うくらいにとにかく恐ろしい顔です。

でも、どんなに恐ろしくても声を上げてはいけません。鼻と口を手で押さえて、一切声を出さないで下さい。そして、心の中で話しかけて下さい。自分は犯人ではないことを。

その時、いくら怖くても決して目をそらさないで下さい。

そうすれば、まもなく女性は消えます。そしたら、女性のいたところにコップで良いので水を置いて、早く足が見つかるよう、祈っていますと念じて下さい。

 

さて、どうでしょうか?

ホラー話の最終話。これぞまさしくホラー(ホラ)話!ぜーんぶ嘘ですのでご安心くださいね。下らないオチ?筆者を恨まない、文句言わないって約束ですよね

 

 

ホラー話いかがでしたか?

番外編として静岡の心霊スポットを実体験を交えてご紹介致します。

 

魔の山

夜景で有名な静岡市の山、週末はカップルの車で賑わいます。ここ、実はかなり怖い山です。ホラー話のモチーフにしたのですが、霊感の強い方と一緒に行ったら、もうここには来ない方が良いと言われました。自分も友達と二人で冷やかし半分に行き、女性が一人で運転する車とすれ違いました。暗闇の中、なぜか運転する女性の顔ははっきりと見えました。こんな場所で女一人で何かな?と振り向くと車ごと消えてる。しかも、その先は行き止まり!後日知ったのですが、車で堤に飛び込み自殺した方だったとか。他にも、二度ほど霊感の強い方が、一人は動物霊の霊障で立っていられなくなり、一人はおもむろに除霊のお祈りを始めてしまいました。うちの母は霊感なんぞないけど、あるカーブだけ、いつも引き込まれそうになると言ってました。

 

私鉄電車

大学時代、文化祭の準備にくたびれて乗った電車。ふと向かいの窓を見ると、白いワンピの女性が乗り込む。ベンチシートだから車内の見晴らしは良い。美人っぽかったような気がしたのでついつい周りを見回すも、誰もいない。あれ!

あの付近から通学してる友人に聞いたけど、飛び降り自殺した方だとか。目撃談がちらほらあるらしく、いずれも白いワンピの美人っぽい女性。

 

学生下宿

大学時代の友人が、下宿に幽霊が出るから泊めてくれと言う。問いただすと夜中に金縛りがあり、白い物体が目の前に浮いてたと言う。怖がる友人を説き伏せ、他の友達2人と泊まってみた。2時になったら静かにしろと言われ、聞き耳を立てると、チリンチリンと風鈴のような音がする。あれ?と声をあげると、待ってろ、次は天井が揺れるぞ、と。

すると間もなく地震もなく、ただただ天井だけがきしみ始めた。一体何だったんだろう。

 

本当に怖いのは生きてる人!

これ、一筆に書いたけど冗談や皮肉でなかったんです。生き霊と死霊の同時攻撃を食らったことあります。前述の内容は自分が姿を見てますがこちらは違う。でも半端なく怖かったです。お子様もご覧になっているこのアプリ、ふさわしくない内容を含んでいますので、うまくオブラートに包めるようにできた時にご紹介するかもしれません。