とはいえ。
やっぱり淋しいものは淋しい。
日中は仕事の忙しさにそんな感情を抱いている暇はないけれど、夜になれば話は別で。
会えないんだからせめて声でも。
そう思うけれど、向こうとこちらじゃ時差ってもんがあってそれもままならない。
せめて行き先が関西とか、北海道とか、九州とか、沖縄とかさ。
そんなとこだったらいいのに、なにが楽しくてアメリカなんだっつーの。
遠すぎだろ。
せっかく奇跡が起きたばっかだってのにさ。
こんなに好きなのに思い返せば潤さんとはすれ違いだったり離れ離れだったりで長くそばにいられた試しがない。
ここまでくると、もしかして俺らってばそういう運命だったりして?なんて、急に見えないものに怯えてみたりして。
だけど気持ちさえ通じ合っていればそれでもいい…なんて、気が付けば無難に考えるようにもなっていて、自分のことなのに超ウケるんですけど。
「潤さん…逢いてぇよ。あんたはそうじゃないのかよ」
思わず就寝前にそんな弱音を吐く俺。
だけどそれと同時にスマホがケタケタと震えるから慌てて拾い上げた。
「もしもし潤さんっ!?」
「あ、翔?悪い…もしかして寝てた?」
「寝てない!」
「ふ、そっか、なら良かった」
そんな柔らかい声に、容易に彼のゆるんと緩んだ表情が思い浮かんだ。
つか、そんなことよりもあまりの衝撃に飛び跳ねた心臓がバクバク。
それに軽く手まで震えてるんですけど。
「ど、どうしたの」
「ん、なんかちょっとな…おまえ不足というかなんというか」
「俺も!」
「ん?」
「俺もさっきからずっとあんたのこと考えてた」
「じゃあおまえの念が海を渡って来たのかもな」
はぁ?
俺の念が海を渡って、そんであんたに電話をかけさせた?
そんなこと言われたってちっとも嬉しくないんだけど。
それよりも潤さんが俺をすげぇ必要としてくれてて、だから今こうなってるって言ってくれた方が何倍も嬉しいのに。
「なんだよそれ……、」
「ごめん、冗談だよ」
「なぁ潤さん?」
「ん?」
「逢いたいな」
「そうだな」
「俺……、」
「……どうした?」
「もうすぐ誕生日なんだけど」
「は?いつ?」
「今月の25日」
「そっか……全然知らなかったわ。そうだ、なんか欲しいもんある?こっちから送るよ」
欲しいもの。
そう聞かれれば思い当たるものはたった一つ。
つか、それ以外はマジで何も要らない。
「潤さんに一瞬でもいいから逢いたい」
「は?」
「って…無理だよな」
「25日だろ……、ちょっとなかなかな…、」
「言ってみただけ。ごめん…困らせるつもりじゃなかった」
「………」
「その代わり、潤さん帰ってきたら倍にしてめちゃくちゃ甘えるから覚悟しててよ」
「………」
「潤さん?」
すっかり黙り込んでしまった潤さんに恐る恐る問いかける。
するとしばらくして彼はこう言った。
「帰るよ」
「へ?」
「おまえの誕生日に帰国する」
「は?」
いやはや。
この人はなにを口走っているのか。
いやだから、無理なもんは無理だって、そんなもん俺だってちゃんと理解できてるっつーの。
そんなこと聞いてられるような環境じゃないくせに。
「じょ、冗談だって!そんなの無理に決まってんだろって……潤さんはそう言わなきゃ駄目じゃん!」
「なんで?」
「なんでって…」
「おまえの誕生日に俺がおまえと一緒に過ごしたい。ただそれだけだよ」
「潤さん……」
あぁやべぇ。
もうマジで。
すげぇ嬉しくて俺。
いつもみたいにまた泣いてしまいそうだ。

