きらきらぽろり25 (にのあい) | 櫻の妄想小説置き場【可塑的かそてき】

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【可塑的かそ・てき】思うように物の形をつくれること。 塑造できること。
主にラブイチャ系よりは切ないネガ多めです。
※このブログにある物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

「風呂…溜まったね」
 
相庭さんは、そう呟いて俺から離れようとするから後ろから回された腕をギュッと握る。
 
「まだ…、」
「え、」
「もう少し…、」
 
あと少しだけこのままでいたい。
 
「にの、顔見せて?」
 
相庭さんが無理矢理、向かい合わせにさせようと俺の身体を引っ張る
 
「嫌だ」
 
だって、俺だって自分が今どんな顔してんだか見ることはできないけど。
だけどめちゃくちゃ情けない顔してる自信がある。
 
「見せてよ」
「嫌だってば」
「にーの」
 
だけど結局、相庭さんになされるがまま。
くるんと身体の向きを回転させられて、でっかい両手で頬を包まれた。
真っ赤になってるであろう俺の顔を見た相庭さんの顔は、悪戯的な顔じゃなくてすごく優しい顔で。
そんな顔で目尻にくしゃりと皺を寄せて笑う。
 
そして、キスをした。
 
もう、何これ。
なんでこんな幸せな気持ちになれんの。
訳分かんない。
 
「くふふっ」
「ふふふっ」
 
キスをするたびにどうしていいか分からなくて、にやけて。
本当に気持ち悪いぐらい二人とも、にやにや。
 
「好きだよ。にの」
「…俺も、」
 
ねぇ、相庭さん。
やっぱりさ、俺のことあなたのものにして欲しい。
だって、あなたも俺のこと…好きなんでしょ?
 
だったらいいよ。
いいからさ。
 
ねぇ、今すぐ。
一つになろうよ。
触れるだけのキスじゃなくて、もっと深いやつを相庭さんに仕掛けて、求めて。
そしたら俺の息はもちろんのこと、相庭さんの息だって一気に上がってって。
そんな中、必死に相庭さんのシャツを掴んで、捲り上げて、でもうまくいかなくて。
そんな俺の手を……、相庭さんが制止した。
 
「にの…大丈夫だから」
「な、にが、」
「大丈夫、焦んなくていいから」
 
焦ってる?
俺が?
 
「だってほら、震えてる」
 
そう言われて視線を落とした先に、フルフルと震える自分の手が見えた。
 
「違っ、これは、」
 
ただ、あなたが欲しくて。
あなたのものになりたくて。
だけどそれはきっと…自分が安心したい為でもあって。
何もかも手に入れなきゃ不安でしょうがなくて。
だって、明日になったら俺のことを好きだって言ってくれてるその気持ちが…無くなってしまうかもしれないじゃない?
だから…。
 
「大丈夫、俺はずっとにののそばにいるよ」
 
もしかしたら俺の不安は、あっさりこの人に伝わってしまっていたのかもしれない。
相庭さんはそう言って、俺の背中をとんとんと優しく撫でた。
 
「てかさ、これからもずっと俺のそばにいてください」
「そんなのっ、」
 
頼まれなくても、ずっとずっとそうするに決まってんじゃん。
あなたが思うよりも俺は、俺は……。
本当にあなた一色でしかないのに。
 
何度も何度も頷く俺に相庭さんは、
 
「くふふっ」
 
って、やっぱり優しい顔で笑うから。
泣きたくないのに涙が溢れてしょうがない。
 
 
 
 
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