★朝日酒蔵創業者の和洋折衷の近代建築と平澤家-1★
場所・ 新潟県長岡市朝日980−1
電話・ 0258−92−3181 HPあり
竣工・ 昭和11年(1936)
設計・ 大友弘(県内で有名な洋館建築家)
施工・ 清水組
構造・ 木造平屋建て 表門、主屋、応接棟、寝室棟
開館・ 土日祝のみ 10〜15時(12〜3月休み) 無料だが寄付しよう
最終訪問・ 2019.10 再訪 内部は初めて
*国・重要文化財
★2019年10月 再訪 内部は初めて見学
・平澤家と松籟閣
平澤家の創業は天保元年(1830)とされています
平澤家は当時、越後に多かった地主系の蔵元という側面もありますが、商人、さそいて、醸造家としての観点も強く持ち合わせ、この気質は現代に及ぶものとなっています
玄関 客溜周辺 天井の意匠も素晴らしい
生産・技術・販売の面において常に現代の先端を追い求める会社の在り方は、創業家以来の考え方を色濃く投影したと言っても過言ではありません
そして、松籟閣もこの伝統を強く受け継いだものとなっています
・屋号や商号の由来
朝日酒造を代表する「朝日山」は地域の地名で、「久保田」は創業以来の屋号にちなむものです
つまり、会社はこの地こそが、醸造に適した場所であることを製品により伝えていることになります
便所 天井
松籟閣は渋海川が流れる谷の出口に位置しますが、この地形は初冬に寒冷多湿という、酒造りに最適の気候をもたらしています
つまり、この地での生産が朝日酒蔵の品質の礎となり、松籟閣という実を結んだといえます
冬には極度に乾燥し気温差も大きく、湿度19%にもなる関東などの内陸部に対し、新潟県は冬は常に湿度60~70%あり、毎日雪や雨が降るので、気温も安定して低温です
・醸造家としての造形
最新の設備技術を配し、各工程で厳格な品質管理が行われているにも関わらず、毎年蔵人が最も神経を使うのは原料である米の作柄です
天候ー人知を超えた試練ーに対し、人々は祖先が積み重ねた経験と神々に知恵を求め、その形を松籟閣にも見ることができます
松籟の間に隣接する仏間は、仏壇上の棚に神棚を配する珍しい形式となります
これはそれまでの主屋の建物を継承する形式で、醸造家の住宅における造形とすることができます
・近代和風建築
明治維新で開国をした日本には、一気に外来の文化と技術が流入しました
建築では洋風の様式が導入され、外来の材料である鉄、煉瓦、ガラスが用いられました
そして、これらの材料は在来の和風建築にも影響を強く与えました
新しい材料で目に付くのはまずガラスの導入です
従来は障子から間接光として採り入れた外光は、ガラスから直接に導き入れ、部屋を開放的なものとしたと同時に、視覚的にも庭と建物が明確な関係にあることを印象付けました
くわえて鉄材の利用は和釘から洋釘への転換から始まりました
安価な鉄材はついで金具の利用につながり、その結果、柱と柱の間隔を広くする空間構成が可能となりました
下座敷 職人技が結集された円を描く小ふすま
つまり近代におけるガラスと鉄の和風建築への導入は、結果としてかねてからあった建物と外部空間ー庭ーとの関係をより密接で豊かなものにしたと言えます
くわえて新聞などを通しての情報の浸透は、全国どこでも等しく新しい材料を入手することを可能としました
(今でいうネット・TV通販的な)
このように、現代になり作られた和風建築を、現在では近世までのものと分けて「近代和風建築」と呼びます
豊かな自然に囲まれて建つ松籟閣は、その代表例として、国の重要文化財へと昇格しました
近代和風・洋館・酒好きの方にもおススメです♪