馬主の愉しみ
競馬の愉しみは、馬券を購入した時点で8割方終わる。
何かの記事にそういうコメントをした人がいるようです。
確かに、勝ち馬予想の楽しみはその過程に凝縮されていると言っていいでしょう。
では、馬主の場合はどうか?
馬を持つ ⇒ 馬が育つ ⇒ 馬が入厩する ⇒ 馬が出走する ⇒ 馬が勝つ(負ける) ⇒
馬が引退する ⇒ 馬が牧場に帰る(第二の人生を送る) ⇒ 馬が仔を産む ⇒ その仔を持つ ⇒ ・・・
見方は様々ですし、何に一番心を奪われるのかはその人の感性次第でしょうけれども、
少なくともその愉しみは、一競馬ファン、しいて言えば一馬券ファンを遥かに凌ぐものと言えるでしょう。
上記のように、必ずしも一度持った馬の血縁ばかりに固執する必要はないのですけどね。(苦笑)
(この思考は言わば、クラブ馬主会員になってから培われたものです、はい)
確かに、一競馬ファンとしてもレースの連動性(トライアル)や世代をまたがった対決を楽しんだり、
お気に入りの馬の追っ掛け的な(自分の愛馬のような扱い)楽しみのなかで、
長期的に競馬と付き合っている人も多いことでしょう。
特に最近は「POG」に代表されるように、競走馬のデビュー前からの情報を知ることが
容易になってきたことなど、競馬の楽しみ方は多様化してきています。
私がクラブ馬主にひとかたならぬ興味を抱き始めた1988年当時を思い浮かべると、
今の時代背景であればもしかしたらクラブに入会していたかどうか? あまり自信はありません。
当時の私の年齢(若さゆえ?)と競馬に対する熱中度が相乗的に招いた結果だったのかも知れません。
マイルチャンピオンシップを週末に控え、そんな思いを巡らせていた私は、
いつものようにスポーツ新聞を広げて、出走予定馬の一覧を眺めていました。
「やはり挑戦してくるのか!」
一頭の馬の名前を見ながら、「無理なんじゃないの?」と馬券的思考回路が判断する中、
そういえばこの馬も共同クラブ馬主の馬なんだよね、と馬主的思考回路は、
この馬が獲得していたそれまでの賞金額を思い、「羨ましさとやっかみ」がふつふつと沸いてくるのでした。
ふと見ると、その馬の記事が紙面の一部にやや大きめに掲載されていました。
「馬名の由来。ある会員さんがデビュー前に牧場を訪れたときに、この馬が他の馬を蹴りまくっているのをみて、
『サッカー選手みたいだな』と評したのがきっかけです」
そして、それに続けて、
「募集価格は1600万円ですから、一口80万円程度です。こんな馬がここまで活躍するんですから、
結構笑いが止まりませんよ(ある会員さんの話)」
(価格の部分は間違っているかも知れません。私の記憶の範囲内ですのでお許しを!
また、本当に会員の方の談話だったのかも定かではありません。私がそう早合点しただけかも、です)
賞金を獲得するだけでなく、馬の名付け親にもなれるんだ!
牧場に馬を見に行く、だって?
そんなこと今まで考えたこともなかったよ。
こりゃぁ、自分が考えるより遥かに愉しみが多いんじゃないか?
サッカーボーイの3歳(当時は4歳)での果敢な挑戦は、実を結ぶどころか、
新しい時代の幕開けを象徴するかのような快勝となりました。
そして私の視線の先はただひとつ。
共同クラブ馬主会員への道のはじまりです。
な、なんと!
さっき帰宅してみたら、何やらユニオンから一通の封書がきてました。
今頃何が送ってきたんだろう、と思って開封してみたら、
な、なんとぉー!
「マイホースお年玉プレゼント」の当選目録でした!
しかも、「ユニオン・セレクトツアー」に当選してますぅー!!!! ビックリ。
と言うわけで、ユニオン入会20年目で初めてのツアー参加が決定いたしました。
ユニオンさん、どうもありがとうございます。
馬主を研究する
さあ、やるべきことははっきりした。
馬主を研究しよう。
馬主のことが分かれば、何かが見えてくるかも知れない。
当時はインターネットなんて便利なものはありませんでしたから、
私はひたすら本屋へ通って、競馬関連の本を立ち読みしました。
すると、馬券必勝読本には「競馬関係者を熟知すればレースが読める」的な解説をする
本が結構たくさんあり、馬産地(牧場関係者も馬主になっている)と調教師と馬主の
ネットワークや、縁戚相関図、果ては仔馬の庭先取引の裏側的なものまで多岐に渡っていた。
その中のひとつに、仔馬の売買に関する癒着的な取引や市場の形骸化など、
賞金体系がハイレベルである日本が、こと売買に関しては世界での後進国であることが紹介されていました。
やっぱりそうなのだ。
儲けている馬主は、更に儲かるように、走る馬が優先的に、そして一部の馬主サークル内で持ち回り的に取引されているのだ。
事実はどうであれ、当時の私はそう解釈したのです。
つまり、有名な馬主になれば、思うがままの馬が持て、絶対に儲かるのだ! と。
ここまできて、私は絶望的な気持ちになりました。
そう、そんなん絶対ムリやん!
という事に気がついたのです。(遅いっ!)
そんな時、再び、あるスポーツ新聞の記事に目が留まったのでした。
マイルチャンピオンシップを週末に控えた、ある秋の日の喫茶店の一隅で。