瀬尾まいこさんという作家さんは、昨年『幸福な食卓』という本で初チャレンジした。
家族や、その役割について綴った物語で、クセのない文体で読みやすいけれど、実は深いことを書いている・・・そんな印象が残っている。
『卵の緒』は、瀬尾さんのデビュー作である中編。併録されている『7's blood』ともども、やはり「家族」をテーマにしていると思う。
「家族ってこうあるべきだ」という概念は、共有されているものがあるだろう。
いろんな家族があるけれど、「あるべき論」のイメージは、おそらくそう違わない。
両親がいて、子どもがいて、仲の良い一家・・・
でも、果たしてそうだろうか?
いろんな家族の、それぞれの在り方が是であって、「こうあるべき」という像を掲げること自体、ナンセンスなんじゃないか・・・
『幸福な食卓』にも本書にも、そんなメッセージを感じるのです。
『卵の緒』は、小学生の育生くんが、母と二人で暮らしているが、どうも捨て子のような気がしてならず、母に「へその緒を見せてほしい」と頼むところから始まる。
母は、「卵で産んだから」とカラカラと笑う。そして新しい恋人である朝ちゃんを連れてくる。
そんな開けっ広げな母だけど、育生を誰よりも愛していて、それを言葉に出すことをためらわない。
結論として、育生は捨て子ではなかったけれど、やはり母とは血が繋がっていなかった。母にとっては「育生が誰よりも好き」という事実の方が大きいから、そんなことは大した問題ではないのだ。
一番大事なことは何か。絆って何なのか。育生が徐々に理解していく・・・そんなお話だ。
『7's blood』は、いろんな事情があって、二人で暮らすことになった、高校生の姉と小学生の弟という異母姉弟のお話。
良い子過ぎる弟に、はじめは違和感や嫌悪感すら抱いていた姉だが、弟が何故そんな子どもらしからぬ如才なさを身に付けてしまったかを知り、更に一緒に暮らす中で、二人の心は近付いて行く。
特に姉の変化は著しい。暮らした期間は短いのに、別れるときの切なさは、読んでいるこちらにも伝わってくる。
別れの描写から引用。
「一年前の私には、戻れるわけがない。それは、とても幸せなことで、とても切ないことだ。」
弟の存在しか知らなかった一年前には戻れない・・・弟と心が触れ合えたことは幸せだった。でも、それを手放す今、幸せを知る以前に戻れないことは切ない、ということだ。
二人は、「普通の」姉弟ではない。でも、それが何だっていうんだろう?
そういう外形的な関係は、実はそれほど問題ではなくて、本当に心がしっかりと繋がっているかが大事なんじゃないか。
心がしっかりと繋がっていれば、家族としてのカタチは様々で良い・・・
二つの中編で描いているのは、共通したテーマだと思う。
柔らかいシンプルな文章ながら、強い主張を感じる作品だった。
瀬尾さん、勝手にけっこう年上なイメージを抱いておったんですが・・・1歳上でした(失礼しました)。
こういう同年代の作家さんの描き出す世界観は、何となく合う気がするんですね。
気のせいかもしれないけど、何となく。他の作品も読みたいと思います。
そして、この方の小説では、必ずと言って良いほど料理が出てくる。これがまた、旨そうで!
高級料理とかじゃなく、家庭料理。『卵の緒』ではハンバーグが、『7's blood』では弟の作る朝ごはんが、良い小道具になっていて・・・料理は家族の物語には欠かせないのかな。
そんなこともあって、食べ物の写真を掲載。
名店・キルフェボンで買ってきたタルト。昨日、無性に甘いモノが食べたくなり、「タルト祭り」を緊急開催しました!花粉症と二日酔いで傷んだ体に効いた気がして・・・気のせいかな・・・
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