吉田篤弘 『それからはスープのことばかり考えて暮らした』 | 流れに任せて雑然と

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暖かかったり寒かったり、「三寒四温」というやつか・・・


ちょっと風が強すぎて、嵐のような天候もあるけれど、春は確かにやってきたようで。


何と週末には東京でも桜が開花するとか。ちょっと早くないッスか?


ついこの前まで冬全快で寒かったのに・・・


写真は、2月下旬に近所で撮影した梅。この時は満開は遠い感じがしてて、僕としてはまだ梅季節の気分です。季節の流れは早いなぁ。


気がつけば、うつろいゆく季節・・・時間は意識せずとも進んで行く。


そんな、「感覚」とは呼びにくい、ふわふわとした空気感を描いている小説。


吉田篤弘さんの『それからはスープのことばかり考えて暮らした』を数年前に読んだときの印象だ。



シンプルな文章で、抑揚のない、日常の静かな生活を淡々と綴る。


まあ、文章は本当に心地良いです。


癒し系、なんて呼びたくなるような、優しい優しい空気感で。



「オーリィ君」と呼ばれる青年が、路面電車の走る街に引っ越してきて。


「月舟シネマ」という名画座に古い映画を観に通う。彼の目的は、映画に登場するある脇役女優。彼女に恋に近い感情を抱いている。


近所の評判のサンドイッチ店「トロワ」に日々通っていたところ、店主に誘われ働くことに。


そのうちに、店の新メニューとしてのスープを、オーリィ君が作ることに。


映画館でよく顔を合わせていた老婦人が、実はとても美味しいスープを作ることを知り、オーリィ君は彼女に作り方を教わる。


その彼女は、あの、オーリィ君が恋した映画女優・・・



こんな感じのストーリー。小さな街で、穏やかな人物たちが触れ合う、実にささやかな物語。


はじめて読んだときは、文章の優しさも手伝って、「ああ、こういう小説も良いなぁ」と思った。


今回、再読してみての感想。


これ、何だか夢を見ているようなお話なんですね。



人間のドロドロした部分とか、表に出てこない裏の部分とか、そういうのを敢えて排除しているような。


リアリティを求められない。求めることが野暮でしょうと思うような、淡すぎる世界。


ゆっくりと、良い夢見たなぁというような・・・読んでてそんな気分になる。


何よりサンドイッチもスープも美味しそうだし。



この小説、「何が伝えたいのか分からない」、「物足りない」という感想もあるだろう。


でも・・・深く考えずにスーっと気持ちが晴れるような読後感。これで十分じゃないか。


論理的に読み解けないことで、モヤモヤとストレスがたまる人にはオススメしない。


花を見て、「ああキレイだな」、それでホッとした感じになる。それに近い気分を味わう小説。



こんな作品、どうでしょうか??


僕は、これはこれでアリだと思ってます。


本の最後に、「名なしのスープの作り方」が書いてあって、これは人生そのものを例えているような気がします。伝えたいことはこれかも・・・でも、そんな解釈は野暮な感じがする小説!


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