山田詠美 『PAY DAY!!!』 | 流れに任せて雑然と

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「PAY DAY」=「給料日」ってこと。


誰もがちょっとだけ幸せになる日っていうことで、この作品では使われている。何だかんだといろいろあるけれど、そうか、今日は給料日じゃないか・・・それでちょっと気分が変わるっていうことで。


確かに給料日が嫌いな人はそういないだろう。たとえ高い給料じゃなくとも。


この小説、アメリカを舞台にした青春小説。山田詠美さんという作家は、名前はよく聞いていたけど作品を読むのは初めてで、こういう作風なんだな~っていろいろと発見しながら読んだ。



舞台自体がそうだからかもしれないけど、アメリカの小説を翻訳したような文章。


そして、ストーリー的にも空気的にも、ハリウッドの青春映画を観ているような感覚に陥った。


ニューヨークで暮らしていたある家族は、両親が離婚して、父と双子の兄・ハーモニーは、父の実家である南部・サウスキャロライナに行き、母と双子の妹・ロビンはニューヨークに残る。そして、ロビンが夏休みにサウスキャロライナへ行くところから物語は始まる。


その後、「9.11」を経て、この家族は大きな喪失をする。高校生であるハーモニーとロビンの双子兄妹それぞれの視点から、喪失をカギとして、それをどう乗り越え、また寄り添って行くかを描いている。


二人にとっては、家族とか政治と共に、いや、それ以上に恋愛が大きい。自分たちが恋愛しているからこそ、家族との距離について、考え方も揺れて行く。


よくできているなあと思った。登場人物は少ない。この家族に、父の母と兄、そして恋人たちとわずかな友人が出てくる程度。でも数が少ない分、それぞれの人物との関わりが多く書かれていた。


そうした人々との関係と、アメリカの文化、人種の問題、更に「9.11」。アメリカの高校生を取り巻く要素が背景に流れ、二人がその中で成長していく。まさに青春小説!



最終的に、二人が辿り着く結論はベタと言えばベタ。大事な人を失って、その傷や痛みは深いながらも、時間は流れて自分たちは青春を過ごして行くわけで。


ここで何で「PAY DAY」というキーワードの意味が分かるような気がしてくる。


悩み苦しみ、明日が見えなくても、今日は給料日じゃんっていう・・・日常の中に幸せというか、そうやって気付かないうちに自分たちはいろんなものを消化して、時間は流れて行く。


そういう極めて前向きな、青春の到達点を描いて小説は終わった。



アメリカ文学やハリウッド映画っぽいと思ったのは、日本のそれらに比べると、「行間を読んでくれ」っていう要素は少なくて、書きたいこと、伝えたいことをある意味ベタに書いてあるからかも。。。こういう小説もあるんだね。



少なくとも給料日は前向きになれる・・・そういう普通で当たり前の感覚を、改めて認識させられた。


今度の給料日に、「そうか、今日は給料日じゃないか!」って考えて前向きになろう。単純だけど、そんな感じも悪くないッスよね!


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