令和2年度予算の編成等に関する建議

 

財政制度等審議会・財政制度分科会は、令和2年度予算の編成及び今後 の財政運営に関する基本的考え方をここに建議として取りまとめた。 政府においては、本建議の趣旨に沿い、今後の財政運営に当たるよう強 く要請する。

 

Ⅰ.総論
 
1.令和最初の予算編成に向けて
 
 当審議会は、昨秋及び今春の建議において、平成時代の財政を厳しく総括した上で、令和時代は、受益と負担の乖離と将来世代へのツケ回しに歯止めをかけ、財政健全化をゆるぎなく前に進める時代とすべきと指摘した。令和の時代に着実に財政健全化を進めていくためにも、令和最初の予算編成となる令和2年度(2020年度)予算は、厳しい財政規律を土台としたの高い予算作りが求められる。  日本の経済・財政にとっての最大の課題は、少子高齢化現役世代の減少であることは論を俟たない。高齢者の増加と支え手の減少が、社会保障制度や財政の持続可能性に暗い影を落とす。働き手の減少は、人手・後継者不足など、労働力の制約要因として潜在成長率の足枷となっ ている。 今後の経済・財政運営に当たっては、人口減少に対応し、新たな技術も生かしながら潜在成長率を引き上げる視点と、財政社会保障制度の持続可能性を確保する視点との両方が、これまで以上に重要となる。具体的には、働き方改革生産性革命全世代型の社会保障制度の構築が課題となっている。また、頻発する自然災害や厳しさを増す安全保障環境など、様々な不確実性の増大にも対応することが求められる。 今般の消費税率10%への引上げは、全世代型社会保障制度に向けた第一歩として、教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保等を行 うとともに、後代への負担の先送りを軽減するものである。しかしなが ら、受益と負担の乖離と将来世代へのツケ回しに歯止めをかけるとの観点からみれば、消費税率引上げを経てもなお、後代への負担の先送りが続いている現状は、あるべき社会保障と財政の在り方から程遠いと言わざるを得ない。内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」(令和元 年 7 月 31 日)(以下、「中長期試算」という)によると、令和元年度 (2019 年度)は、国・地方あわせたプライマリーバランス(基礎的財政収支)の赤字は15.1兆円(対GDP比で2.7%)、公債等残高は1,073.8 兆円(対 GDP 比で 191.8%)に達する見込みである。公債等残高の対 GDP比は、従前の中長期試算が想定したような低下を一度も経験せずに 年々上昇しており、低金利経済成長に頼って財政健全化を進めることが難しい現実も、改めて肝に銘じるべきである。  令和2年度(2020年度)予算は、今後の人口減少も踏まえ潜在成長率 の引上げや社会保障制度の持続可能性確保に資するものか、様々な不確実性を見据えた適切な対応となっているかといった点から、これまで以上に厳しく中身を吟味し、の高い予算にするとともに、着実に財政健全化を進める必要がある。

 

2.財政健全化に向けた基本的考え方
 
我が国の財政の問題は、社会保障制度の給付と負担のアンバランス及び諸制度の持続可能性の問題と表裏一体である。受益と負担の乖離を背景として、各年度の政策的経費をその年度の税収で賄うことができず (プライマリーバランスが赤字の状態)、公債発行への依存が常態化し ている。 公債発行への依存、その累積には様々な問題が伴う。公債発行に依存する緩い財政規律の下では、財政支出の中身のチェックも甘くなりやす く、中長期的な経済成長や将来世代の受益に資するかの検討もなおざりにされがちである。この結果、将来世代は、自らが決定に関与できなかった事柄について、受益の削減や負担の増加等を求められることになる。 更に、公債への依存体質が過ぎれば、経済危機の勃発や大規模な自然災害の発生、安全保障上の有事などのいざという時に、機動的な財政上の対応に制約が生じる可能性もある。危機や災害の頻度や規模について 不確実性が高まる傾向がみられる中、この点は強調してもし過ぎることはない。 財政当局は、実効的な財政健全化目標の下、いつまでも低金利環境に安住することはできないという危機感をもって歳出改革を進め、真に必要な分野を見極めて重点的・効率的に資源を投入していくべきである。 また、広く国民の財政と社会保障制度の現状に対する理解議論喚起し、人口構造の変化を見据えた長期的な見通しに立って社会保障制度の給付と負担の乖離を是正していくべきである。
 
(1) 財政健全化目標について 財政規律を維持する上で、実効的でわかりやすい財政健全化目標は欠かせない。財政運営に当たっては、2025年度の国・地方あわせたプライ マリーバランスの黒字化を実現し、同時に債務残高対 GDP 比を安定的に引き下げていくことを引き続き目標とし、歳出改革を進めるべきであ る。 プライマリーバランスは、その時点で必要とされる、国債の元本返済や利払費を含まない政策的経費を、その時点の税収等でどれだけ賄うこ とができているかを示す財政指標である。プライマリーバランスの均衡の下で債務残高の実額は利払費の分だけ増加するが、その際、債務残高 対 GDP比が減少するかは、分母である GDPの成長率と、金利の関係如何による。過去の経験則や理論を踏まえれば、長期金利名目成長率上回っている場合も多い中、保守的な見通しに立つことが求められる財 政運営においては、少なくとも名目成長率名目金利同程度であるという前提に立つ必要がある。プライマリーバランスの黒字化が財政健全化目標として掲げられる由縁である。 債務残高対 GDP 比は重要な財政の指標ではあるが、それ単独では十分な目標とは言えない。金利の動向をはじめとして債務残高対 GDP 比 は政府が直接にコントロールできない要因に影響されるため、毎年度の財政運営を律する上で、十分な規律とはならない。 以上を踏まえれば、プライマリーバランスの黒字化は目標として堅持すべきである。新経済・財政再生計画7における基盤強化期間(2019~ 2021年度の3か年)において「目安」に沿った予算編成を行うともに、 歳出と歳入の両面の改革を進め、2025年度の確実な目標の達成につなげていくべきである。

 

(2) 低金利下での財政運営とリスクマネジメント 

近年、大規模な金融緩和などを背景に低金利が継続し、名目金利名目成長率下回る状況にあることもあり、財政健全化先送りして問題ないといった論調も見受けられる。しかし、前述の通り、将来にわたって名目金利名目成長率下回り続けるという想定を置くことはあまりにも楽観的過ぎよう。そのような甘い見通しに立ち、プライマリーバラ ンスの黒字化目標そのものを軽んじるような議論は、無責任と言わざるを得ず、こうした見解に依拠し、財政健全化の取組をこれ以上後ろ倒しにすべきではない。 確かに、名目金利名目成長率下回る状況は、債務残高対 GDP 比 の引き下げにとって有利であることは事実である。しかし、その場合であっても、あくまでもプライマリーバランスの将来にわたる黒字化に向けた道筋に目途が立っていることが大前提となる。同比率の分母である GDPが、分子である既存の債務残高の伸びを上回って伸びるとしても、 毎年度のプライマリーバランスの赤字によって新たに追加される債務が 大きければ、債務残高対 GDP 比の低下は望めない。 また、金融市場で広く低金利環境が継続するとしても、その中で国債金利が低金利の恩恵を享受できるのは、そもそも日本の財政への信認が大前提となっていることも忘れるべきではない。ただでさえ膨大な債務残高を抱える中、利払費が増大すれば、柔軟な予算編成を阻む事態となる。短期間で歳出の削減を余儀なくされ、行政サービス水準の低下な ど、国民大きな痛みを強いることにもつながる。国債の格付けが引き 下げられ、金融機関等が保有している国債の資産価値が大きく目減りすることに伴い、金融システムにストレスがかかるリスクもある。 内閣府の中長期試算の成長実現ケースでは、高成長の実現により、財政赤字の縮小と債務残高対 GDP 比の低下がもたらされるシナリオが示 されているが、同試算においては「長期金利の上昇に伴い、低金利で発行した既発債のより高い金利による借換えが進むことに留意が必要」 という説明も同時になされている。このように、金利上昇に伴う利払費増のインパクトが発現する前のタイミングで試算期間が終わっていることに十分留意する必要がある。  なお、低金利が継続する中で、金融政策限界といった観点などから、機動的な財政政策の役割に期待する議論がある。通商問題をはじめ、種々の海外リスクが不確実性を増大させる中において、機動的な財政上の対応の役割自体は否定されるべきではないと考えられる。しかしながら、我が国の場合、プライマリーバランスの赤字と、その結果とし て債務残高の累増をもたらしてきた主因が、少子高齢化を背景とする社会保障関係費の増大であり、社会保障制度の持続可能性確保といった構造的な問題と表裏一体である点には改めて留意が必要である。雇用情勢 が大きく改善してきた経済状況にあってもなお、プライマリーバランスの黒字化へ向けた行程は道半ばであり、このような財政構造の現状は、 「機動的な財政上の対応」を名目に放置してよいはずもなく、社会保障関係費をはじめとして、歳出構造を持続可能なものとする取組を着実に進めていく必要がある。
 
(3)長期推計と社会保障制度の持続可能性の確保 

将来の経済財政の姿を展望した内閣府の中長期試算は、2028年度までの分析にとどまっている。今春の建議においては、堅実な経済前提に立った上で、団塊ジュニア世代がすべて 65 歳以上の高齢者となる 2040 年 を含む長期推計の下、受益と負担の組み合わせの選択肢が国民に示され、国民的な議論喚起していくことの重要性を指摘した。 今春の建議が取りまとめられて以降、シンクタンクにおいて、建議 と同様の問題意識に立って、長期推計の取組が見られるところである。

国民的な議論喚起していく上で、今後もこうした取組が継続されるこ とを期待したい。 ある試算は、厚生労働省が5年に1度実施している年金の「財政検証」が想定しているであろう名目経済成長率金利を推定し、2040年を 含んだ財政収支の推計を実施している。この結果、生産性向上と労働参加が進展し高成長が実現される場合であっても、プライマリーバランス の改善は進まず債務残高対 GDP 比の上昇が続く可能性があることが示 されている。これを踏まえて同試算は、年金の持続可能性の前提とされ ている国庫負担について、その裏付けとなる財政の持続可能性が十分に 検証されていないことを指摘した上で、財政・社会保障改革は、体系的・整合的に議論される必要があるとしている。今後を見据え、堅実な 経済前提に立った長期推計について、省庁横断的に取り組んでいく必要がある。シンクタンクの推計を支える観点からも、まずは、政府が行っ ている各種推計について、その前提やデータを相互に検証可能な形で国民に示すことが重要である。

 

(4) 財政健全化に向けた国民の理解の促進とコンセンサスの形成 

政府は、本年 10 月、消費税率10%引き上げた。当審議会は予定通りの引上げを提言していたところであり、率直に評価したい。しかし ながら、今回の消費税率引上げは、財政と社会保障制度の持続可能性の確保に向けた長い道のりの一里塚に過ぎない。引き続き、財政健全化に向けて歳出と歳入の両面の改革が求められることについて国民の理解 を得ることの重要性を指摘したい。 我が国の財政は依然として厳しい状況にある。今後も、今回の消費税率引上げの目的と使途や、財政と社会保障制度の現状と今後の見通しを も含め、歳出と歳入の両面の改革に取り組んでいくことの必要性について、丁寧かつわかりやすい説明を行い、国民の理解を幅広く深めていくことが必要である。 

今春の建議においては、財政広報と教育についても、発信方法の多様 化と将来世代に対する教育に力を注ぐよう提言を行った。ここでは改め て、高校教育において令和4年度2022年度)に開始される新たな科目 「公共」における財政と社会保障の授業の充実化等への貢献の重要性を指摘したい。 財務省では、職員を小学校・中学校・高等学校に派遣し、財政に関する体験型の授業を提供する「財政教育プログラム」を従来から実施して いるが、こうした「財政教育プログラム」が直接カバーできる学校数・ 生徒数にはおのずと限りがある。その一方で「公共」の授業を通じて、 将来世代である全ての高校生財政に関する理解を深める機会を有する ことになる。将来世代が、自らの人生と深く関わる今後の財政や社会保障の給付と負担の在り方について、議論と決定に今後参画できる素地を 作っていけるよう、財務省は、生徒の考察・探求に資する知見情報を提供するなどの協力を惜しみなく行っていくべきである

 

Ⅱ.令和2年度2020 年度)予算編成の課題
 
 令和2年度2020年度)予算は、令和最初の予算編成であるとともに、 新経済・財政再生計画における基盤強化期間(2019~2021 年度の3か 年)の2年目の予算となる。前述のように、同計画における歳出改革の 「目安」に沿った予算編成に取り組み、2025年度財政健全化目標の達 成に向け、着実に財政健全化を進めるべきである。社会保障関係費につ いては、その伸びを高齢化による増加分におさめる目安を着実に達成す るとともに、「団塊の世代」が後期高齢者となりはじめる 2022 年度が目 前に迫っていることも踏まえ、給付と負担の見直しも含めた改革を速やかに実行すべきである。非社会保障関係費についても、無駄の徹底排除 と真に必要な分野への資源の効率的な投入を進めるべきである。  消費税率 10%への引上げに伴う臨時・特別の措置については、需要 の平準化に向けた万全の措置が必要としても、経済政策の方向性に関す る中間整理(平成 30 年 11 月)で示された方針に従い、適切な規模の措 置を講じるべきである。また、その際、将来の安易な歳出増につなが らぬよう、真に必要な予算とすべきである。  また、政府は補正予算の策定を進めているが、プライマリーバランス の黒字化に向けては、当初予算のみならず、補正予算も一体として着実 に歳出改革の取組を進めていかねばならない。この観点から、補正予 算も含む決算を反映したSNA(国民経済計算)ベースのプライマリーバ ランスの改善が必要である。特に本年度は、当初予算で消費税率引上げ に伴う需要の平準化に向けた臨時・特別の措置として、2兆円の施策が 総動員されていることを踏まえ、大規模な自然災害などの復旧・復興や 米中貿易摩擦などの海外経済の下方リスクの顕在化に対応するために機動的な財政出動を行う場合であっても、真に有効で必要な措置かを慎重 に見極めていくべきである。

 

1.社会保障
 
戦後日本を支え、高度成長を経験してきた世代が後期高齢者となって ゆくとき、その後に続くのは、それまでと異なる経済状況の下に置か れ、人口数でも減少を続ける現役世代と、このままでは巨額の借金を背 負うこととなる将来世代である。 世代間対立に陥ることなく、これらすべての世代の間で公平に給付を 享受し、負担も分かち合うこと、将来の日本に健全な財政と安心できる社会保障制度を引き継ぐことが、現代を生きる我々の責任である。この責任を、来年度予算編成社会保障制度改革の実行を通じて果たしてい くべきである。
 
 <社会保障をめぐる状況と将来の見通し>

 社会保障関係費は、これまで一貫して増加を続け、令和元年度2019 年度)予算においては、一般歳出の6割を占めるに至っている。平成の 30 年間、他の政策経費と比較しても、社会保障関係費の増加幅(3倍) は際立っており、これと軌を一にして公債発行が大幅に増加してきた。  この要因として、第一に、医療、年金、介護といった社会保障給付自体が、高齢化といった人口要因で説明できる範囲を大きく超えるペース で増加してきたことが挙げられる。  加えて、我が国の社会保障制度は、社会保険方式を採りながら、高齢 者医療・介護給付費の5割を公費で賄うなど、公費負担に相当程度依存 しているが、特に近年、公費負担の比重の大きい高齢者医療・介護給付 費の増に伴い、会保障給付費に占める公費の割合は上昇している。 公費の増加に有効な対応策が講じられず、それに見合う負担も求めら れてこなかった結果、社会保障制度における給付と負担のバランスは、 既に大きく崩れている。特に 1990 年代以降、社会保障の給付の増加のペースが負担(社会保険料+税)の増加のペースを上回り、経済協力開発機構(OECD)諸国と比較しても、「中福祉、低負担」と言わざるを 得ない特異な状況となっている。 更に、将来を見据えると、このまま社会保障制度の改革を行わない場合、給付と負担のアンバランスは、更に拡大すると見込まれる。これを 放置すれば、現在の日本が「中福祉、低負担」を享受する見返りに、将来世代がツケを払う形で「中福祉、高負担」、更には「低福祉、高負担」への転換を余儀なくされることとなりかねない。我が国の財政と社会保障は、これまで未解決の宿題を背負ったまま、以下のように更なる 課題に直面しているといえる。 第一に、今後の人口構造の変化に目を向ければ、2022年には団塊の世代が後期高齢者になり始めるため、医療・介護を中心に、これまでのペ ースを上回る形での公費の増加がほぼ確実に見込まれ、その後も、後期 高齢者数は高止まりを続ける。また、年金給付の面で影響が大きい65歳 以上の人口については、中期的に増加を続け、2040年頃にかけてピーク を迎える。 第二に、前述のように、そもそも医療・介護給付費は高齢化による伸 びを大きく超える形で増加してきた。この点はこれまで長年にわたり政策課題とされてきたが、これを抑制する実効的な方策は未だ講じられて おらず、こうした増加の定量的要因すら明らかになっていない。今後も こうしたトレンドが変わるとは考えにくく、昨今における高額な新薬の 相次ぐ登場や、介護利用の広がりを考慮しても、現行制度のままでは、 人口動態を大きく超える形での給付増が生じると考えることが自然であ る。 第三に、こうした給付の負担を賄う主な「支え手」を仮に 20 歳から 75 歳未満と想定したとしても、その人口は、既に足元で大規模な減少が 始まっており、特に 2040 年以降は、毎年1つの大都市の人口に匹敵する約 100 万人のペースで急速に減少していく。我が国の労働参加率は女 性や高齢者を含めて相当高まってきているが、仮に更なる大幅な労働参 加率の上昇を想定したとしても、労働力人口の大幅な減少は避けられな い。中期的に経済成長の足かせとなる可能性があり、「支え手」一人ひとりの負担はその分だけ重くなりかねない。  こうした将来見通しは、今般の議論において紹介のあった各種推計に おいても明確に確認されているところである。
 
<社会保障改革に向けて>  

社会保障は、給付の増加を公費に大きく依存しており、財政は、多額 の公債を発行しながら、一般歳出の6割を占める社会保障関係費の更な る増加を賄っている。このように、財政と社会保障の持続可能性は表裏 一体であり、給付と負担の乖離がこのまま拡大を続ければ財政社会保障共倒れとなりかねない。このため、財政と社会保障の両方の持続可能性を確保する取組を進めていくことが必要である。 「給付と負担の乖離」の拡大を押しとどめ、そのバランスを回復させ ていくためには、潜在成長力を高める構造改革や支え手減少への対応と ともに、負担の在り方の見直しと給付の伸びの抑制に真正面から取り組 むことが不可欠である。本年 10 月の消費税率10%への引上げは、負 担の面での大きな一歩であると高く評価できるが、給付の面において も、以下の取組を着実に行っていくべきである。
 
(来年度予算における「目安」の着実な達成) これまで、社会保障関係費を高齢化による伸びの範囲におさめるとの 方針の下、「経済・財政再生計画」等における「目安」を毎年度着実に 達成してきた。令和2年度2020年度)予算においても、社会保障関係 費の伸びを「高齢化による増加分に相当する水準におさめる」という方 針の下、決して財政健全化の手綱を緩めることなく取り組んでいく必要がある。
 
2022 年を見据えた制度改革の断行)  当審議会としては、「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」や「改革工程表」などに掲げられた社会保障制度改革について、これまで幾度となく議論を深め、その速やかな実行を政府に求めてきた。  こうした改革には、これまで一定程度実施され、効果をあげてきたも のもある一方、外来受診時の定額負担、地域医療構想の実行や保険者の インセンティブを効かせる観点からの交付金等の配分の在り方など、進 捗が大幅に遅れているものも多い。  社会保障制度改革は常に容易ではないが、持続可能な社会保障制度の下での国民全体の利益を考えれば、団塊の世代が後期高齢者となってい く 2022 年度以降を見据え、これら未だ十分に成果をあげられていない 社会保障制度改革について、直ちに具体策を検討し、実行していく以外 に選択肢はない。  政府においては、少子高齢化と同時にライフスタイルが多様となる中 で、誰もが安心できる社会保障制度にかかわる検討を行うため、全世代型社会保障検討会議を本年9月に立ち上げた。同会議における議論に、 大いに期待したい
 
 

その2に続きます。