財務省のホームページの新着情報(11月9日)に、とても興味深い議事録があったので、

ここで皆様に簡単に紹介したいと思います。

 

出席者

麻生財務大臣、うえの副大臣、木原副大臣、今枝大臣政務官、長峯大臣政務官、

 

財務省

福田事務次官、岡本主計局長茶谷次長、大鹿次長、神田次長、

青木総務課長、中野司計課長、奥法規課長、若原給与共済課長、

関口調査課長

竹田官房参事官、江島主計官、安出主計官、湯下主計官、小宮主計官、高橋主計官、

中島主計官、阿久澤主計官、岩佐主計官、前田主計官、中山主計官、内野主計官、

北尾主計企画官、藤﨑主計企画官

 

分科会長 榊原 定征  分科会長代理 田近 栄治

委員

赤井 伸郎、遠藤 典子、黒川 行治、神津 里季生、佐藤 主光、角 和夫、武田 洋子、

竹中 ナミ、永易 克典、宮島 香澄

臨時委員

秋池 玲子、井堀 利宏、宇南山 卓、老川 祥一、大槻 奈那、葛西 敬之、加藤 久和、

喜多 恒雄、北尾 早霧、小林 慶一郎、小林 毅、末澤 豪謙、十河 ひろ美、田中 弥生、

冨田 俊基、冨山 和彦、南場 智子、増田 寛也、神子田 章博、宮武 剛

 

宮島委員

来年度予算の策定においても、まずはプライマリーバランス2020年度黒字化という目標に関しては、堅持しながら進めていくということだと思います。一方で、一般には、

この内閣府の試算を見て、現実には目標の達成はやはり厳しいのではないかという空気が広がっているのは事実だと思います。去年一昨年予算編成のときには、計画の

「目安」に沿ったいい予算が組めたというご説明ではあったと思うのですが、一般の方

から見ると、きっと、「目安」に沿っていい予算が組めた、だけれども目標はだめなのではないかなというところのギャップを埋めるのがなかなか難しいのではないかと思います。

だとすれば、今回編成する来年度予算に関しては、より厳しい姿勢、と申し上げる

のが適切かどうかわかりませんが、現実に、このままでは黒字化するのが厳しいということを考えた上で、姿勢をしっかり示していく必要があると思います。

更に言うと、2018年度に「経済・財政再生計画」の中間評価をするときに、

何らかの追加措置を講じなければならない可能性があると思うのですけれども、

その際の説明の仕方によっては、一般の人は、何だ、黒字化できなくとも別に問題ない

のではないか、つまり、目標は目標としてあるけれども、そこを破ったからといって、

日本は別に困ったことにはならないのではないかという誤解が広がるおそれがあると

思っています。そうではなくても、一般の人から見ると、財政赤字が大きいということが、

実際問題として将来的にどのような形で自分たちの身に起こってくるのかという実感を持つ

ことがなかなか難しくて、私たちメディアも財政赤字により何が起こるのかを説明することが

非常に難しく、苦しいところであると思っています。ですので、来年度予算の編成においても、あるいは、今後の中間評価においても、そうしたことを丁寧に実感を伴った形で説明していくことが非常に重要なのではないかと思います。』

 

神津委員

『今後の審議において私なりに大事ではないかと思うことを6点申し上げておきたいと

思います。1点目として、財政健全化に取り組むことの重要性は論をまたない、

将来世代へのツケ回しはこれ以上増やしてはならないということです。

2点目として、そのために予算編成の枠組みのルールというものは非常に重要だと

思いますが、この話はこれまでにもこの分科会の中で再三出ていますけれども、補正予算も含めて年度予算全体での財政規律を厳格化すべきだということです。

3点目ですが、国民の暮らしに直結する歳出項目に関しては一律的な歳出削減ということ

ではなくて、削減が及ぼす影響についても厳しく検証すべきだろうと思います。

暮らしの底上げだとか、格差是正、貧困の解消、こういった社会の支え手を増やすという視点もしっかりと持っておかなくてはいけないと思います。それから、4点目ですが、

財政健全化を歳出面の対応のみで達成するのは、やはりもう限界に近いということ

ではないのかなと私は思います。歳入・歳出一体で対応を図るということについて踏み込んで提言をしていくべきではないかと思います。分野ごとの話となりますが、1つは社会保障分野で、これは先ほど申し上げたことにもかかわりますが、やはりセーフティーネットとしての制度の役割やその重要性もしっかりと踏まえる必要があると思います。また、教育については、教育の無償化の問題が取り上げられるということは非常に大事だと思います。

ただ、財源については、保険国債ということではなくて、基本的にはやはりによって

まかなっていくべきものだろうと考えています。そういう中で、この無償化の問題はしっかりと前に進める必要があると思います。』

 

赤井委員

『少し中長期的な観点から、簡単に思っていることを述べたいと思います。

例えば選挙となると国民の皆様に今後どうしていくのかということを説明していかないと

いけないと思います。そのような場合には、財政の健全性がいかに重要なのかということと、例えば増税した場合でも、社会保障の持続可能性維持のためにそれ

必要なんだということを、国民に理解してもらうよう取り組んでいただきたいと思います。』

 

永易委員

財政健全化の観点からいいますと、少なくともこの2年間、「目安」が非常に効果を発揮したのではないかと思います。2018年度もこの「目安」に則って決定されるのであれば、

少なくとも当初予算はそれ相応に意義のあるものになるのではないかと思っております。

ただ、さっきの説明資料にもありましたけれども、概算要求と、当初予算と、決算ベースの

支出を見ますと、コンスタントに概算要求よりも決算ベースの支出のほうが多いのです。

大臣にお聞きしたいことは、この補正予算というものを財政健全化の観点から、

どのように考えられているのか、ということです。私は、やはり補正予算にも目安のようなものがないと、なかなかうまくいかないのではないかと思いますが、この点についていかがかと

いう点をお聞きしたい。それと、消費税率の10%への引上げについてです。

これは過去2回にわたりスキップして、再来年19年10月引上げやるためには

来年中には決めないといけないわけであります。消費税率の引上げによる

増収分の8割程度は財政の健全化のために使われて、それが2020年度の

プライマリーバランス黒字化のための強力な武器だったと思います。

教育の無償化は、少なくとも幼児教育に関してはそんなに悪いことではない

かもしれませんが、大学教育については反対意見の人のほうが多いと思います。

一方で完全に大学教育が無償の国も結構あります。ただ、これは消費税率を見ると、

我々は今度増税を行っても10%、そういう国々は大抵20%台です。歳出という

のはこれとの関数で考えるべきであるものだと思います。このようなことを考慮したときに、

昨今、報じられているような教育の無償化について、大臣はどのようにお考えなのか

ということをご質問したい。』

 

小林(慶)委員

『昨年、2016年に経済産業研究所の森川副所長がアンケート調査を実施し、その結果を

まとめたペーパーを書いておられます。どのようなことを質問したのかというと、

「2030年までに日本財政が破綻する確率は何%だと思いますか」という質問を

企業の経営者1,500人程度に聞き、そして、消費者1万人にアンケートを行い、その結果を

集計したというペーパーがあります。それを先日見せてもらいましたが、それを見ると、

様々な人が様々なパーセンテージを述べているわけですが、平均値としては25%程度と

出ている。要するに、平均的な日本人あるいは企業経営者が、あと15年足らずの2030年までに日本財政がほんとうに危機的な、破綻的な状態になるという確率を25%程度だと見積もっているという数字でございます。このようなことがアンケート結果として出ているということに関しては、将来不安がこれだけあり、経済成長や企業の投資、

消費者の貯蓄のような行動にもやはり影響を与えているのだろうと思われますので、

長い目で見て、このような長期の将来不安、財政の不安を取り去ることが大事だと

思います。そこで、消費税10%でとどめずその次にどのように

していくかという議論を早目早目に国民に示していくことによって不安を取り除くということが必要だというのが一点です。あともう一点は、アンケート調査によると、

財政が破綻するリスクが25%もあると平均的には思われているわけですから、

仮に破綻した場合、どのようにリカバーするのかというような、破綻時のシナリオの

ようなものを提示するということもそろそろ考えていいのではないかと私は思っております。

このような話は財務省がやるべきことではないのかもしれませんけれども、政府部門の

どこかで、そういうリスクが実現したときの対処をどうするかということをちゃんと考えて、

国民に示しておく必要があるのではないかと思います。』

 

大槻委員

『1つ目は、先ほど来出ている将来不安の話です。ご存じのとおり、これだけ株価も上がって、本日もおかげさまで相当株価が上昇いたしまして、2万円台を回復しましたが、それでも

私どものアンケート調査などで個人の投資家に聞いてみても、この1年余り、日銀

金融緩和を一生懸命やっても、投資意欲が増加した、あるいは去年より財布のひもを緩めたという人は、その逆よりも少ない状態が続いています。なぜなのかと聞くと、ご存知のとおり様々な理由もあるのですが、1つは、中年層以降に保守的な人が増えていくという傾向が

見てとれます。財政破綻まで極端ではないとしても、将来不安ということで将来的に

自分の年金への不安、社会保障への不安といったことを漠然と持っているということが

明らかにあると思われます。消費者、個人の投資家は、細部にわたるマクロの分析をされているわけではないので、一般的なニュースを1行2行見るだけで最近は判断しますので、

その意味でも、今掲げていらっしゃるPBの黒字化を、もしも何らかの形で変更、延期、取り下げたりすると、この心理的な効果というものは相当大きいと思っておりますので、

堅持をよろしくお願いしたいと思います。消費税税制も、政権的には

非常に悩ましいところなのかもしれませんが、国民の心理としては、一時的な増税によるマイナス以上の長期的に見たインパクトがやはり大きい

思っています。それから、先ほどの内部留保についてですが、株式市場から見ても

ROEを低下させるものでありまして、非常にマイナスだと思っているのですが、

そこについては、具体策の1つとしては、例えば自己株式の取得など、何かしやすいように

するような制度の設計なども考えてもいいのかなと思っております。』

 

遠藤委員

財政再建という道のりがなかなか遠くて行き詰まり感があるなという実感を持っており

ます。財政再建に対しては死守しなければならないとお考えで、それは政権としても国際的にコミットをされているということかと思います。今の少子化の問題や国内外の

経済情勢、安全保障の問題等を鑑みたときに、どのように政権を安定させつつ歳出削減と

歳入増を進めていくのか、もしその解が例えば景気の好転による税収増である

ということであれば、それはステーブルな手段ではないし、それが何もしないということであれば、先送りになります。ぜひお考えを聞かせていただきたいなと思っております。』

 

これらの質疑に対する麻生財務大臣、財務省茶谷次長、関口調査課長の答弁は、

財務省のホームページで確認する事ができますので、興味がある読者様はご覧になって

頂ければと思います。

 

最後に今回の財政制度等審議会財政制度分科会の議事録を読んでみての私の感想は、

くたばれ!財務省!!一部を除く)」です。