誤解を避けるためにまず、前提として。
私は、世の中で、崇拝の対象になったり、シンボルとなったりしている物は全て、本質は「鰯の頭」だと思っている。つまり、そのものに価値があるのではなく、周りの人が価値を付与することで、崇拝の対象になり、シンボルになる。キリスト然り、釈迦然り、日の丸然り、くまモン然りである。
私は神社が好きでよく参拝している。御利益はあると信じているが、神社も鰯の頭だと思っている。
つまり、神社自体に霊的なパワーがあるわけではなく、謙虚に頭を下げて願掛けすることで、自分を鼓舞したり、気持ちを落ち着ける効果はある。それが神社の御利益だと考えている。
実は日本の多くの僧侶や神職も、それくらいの気持ちで御勤めしている。霊的なパワーを信じているわけではない。
「万世一系」という言葉ができたのは明治になってからだ。そもそも男系という概念も、欧米から入ってきたもので、日本にはなかった。
明治維新後、天皇家をヨーロッパの君主に見劣りしないようにするためにあれやこれや下駄を履かせていたその一つで、家系図を見たら「あれ？よく見たら男系で全部繋がってるじゃん!」となったので言い出したのだ。それ以降のルールである。
男系を重視するのは、昔の人は、子供は精子から生まれると思っていたからである。それでも「なんとなく」が現状で、男系に特別深い思い入れがあったわけではない。実は当時は女系に引き継がせてしまっている部分もある。
ではなんで男系でおさまっているかというと、近親婚を繰り返しているから、結局どこをたどっても男系と言えてしまう。
男系を重視するのは、「子種」というように、昔の人は、精子を人間の種だと思っており、女性の身体はそれを育てる畑だと思いこんでいただけなのだが、無理に科学的な裏付けをしようとして、「Y染色体」というトンデモ科学が出てくる。
Y染色体は男性からしか引き継がれないから、Y染色体は男系なら絶対に変わらない。そして実は天皇から男系でつながっている人は全国に沢山いる。
多分わかっている現存している人だけでも１００人をくだらないだろう。つまり、神武天皇のY染色体に価値があるから今上陛下に尊いなら、全国に今上天皇と同格に尊い方がゴロゴロいらっしゃることになる。
ある人は、天皇の先祖は超能力者だったと言っている、根拠は「神の子孫だからそれくらい当たり前」と言う事だった。だから竹島も千里眼で見えていたはずだから、竹島は日本の物だとも、言っていた。
その人によると、今の天皇は血が薄くなってしまったから少し魔力がへってるそうだが、それはおかしい。
Y染色体は絶対に変わらないのだから、Y染色体=血だとしたら、薄くなるはずがない。つまり、今上天皇は勿論、全国に１００人くらいは、竹島を島根から見られる人がいないといけない。
源頼朝も義経も平清盛も、更には源氏一門平家一門は皆超能力者の筈だから、源平合戦は魔法戦争になっていた筈だ。
鰯の頭が尊いのは、それを人が尊い物と定めたからであって、それ以上でも以下でもない。
「鰯の頭には神の力が宿っているのだ」「いや、この鰯の頭には宇宙人の宇宙エネルギーが注入されていて」等と、無意味にその鰯の頭そのものに価値を与えようとすると、それは鰯の頭の価値を結果的に貶めてしまう。凄い鰯の頭だと思っていたら、３日後には異臭がしだして腐りだしたら「なんだよ!嘘じゃねぇか!」となる。
天皇に関しても、無理に変な付加価値を与えるとかえって価値をさげてしまう。
そもそも神武天皇自体が作り話なのは御愛嬌として、仮に血統が途切れていることがわかったら、その人たちは尊王をやめてしまうんだろう、もしくは新しい理論を創るんだろう。
明治天皇が偽物だという噂もあるが、私はぶっちゃけ明治天皇が大室某だろうが、どうでもいい。まぁそんなものだろう。
あくまで、「神の子孫だと言う伝説のある一族」である。
Y染色体は、「男系万世一系」という、明治にできた物語を裏付ける後付けるために出てきた理論である。その理論に基づくたなら、天皇と同じくらい尊い人はゴロゴロいることになり。天皇家の価値を否定することになってしまう。
無理にY染色体を保つために、全国から候補を選び出して天皇にしたら、それはもう、王家としての天皇家を否定することになるからだ。
鰯の頭にとって大切なことは、無理によけいな付加価値をつけることではない。鰯の頭を敬愛すること自体であり、それがなくなれば、腐った魚の死骸の一部に過ぎなくなる。
天皇も、国民から素直に愛されてこそ価値があるのであって、血統だけ守るために、どこの馬の骨かもわからん、誰も頭をさげない人を天皇にしてしまえば価値はなくなる。税金の無駄だから、さっさとなくすべきだし、なくななるだろう。
元祖ネトウヨの小林よしのりが良いことを言っていた。
園遊会に呼ばれて言ったら、辻元清美が来ていた。
あんたは天皇を認めていないんじゃないか?と突っ込んだら、自分は護憲派だ、憲法に定められた天皇に頭を下げて何が悪い、と返されて、なるほど、イデオロギーにかかわらず多くの日本人に愛される、これが天皇の価値か、と納得したらしい。
全く同感だ。
男系万世一系、というのは、愛するための物語の一つに過ぎず、そこに拘って国民からの広い敬愛をなくしてしまうのは本末転倒である。
私の母は、当時の皇太子と雅子様との結婚の時、馬鹿みたいに高い写真集を買ってミーハーのようになっていた。「無駄遣いするな！」と父がキレて大喧嘩になったのを覚えている。
天皇誕生日に「ハピバ」と落書きした天皇の写真をアップした高校生もいた。
勿論、神々の子孫であることを信じて強く傅いている人もいる。
どれも、人に押し付けない限りは間違いではない、これでいいと思っている。色んな人が素直に愛して、象徴だと素直に思えることが一番大切なことだ。
男性万世一系堅持は、あくまで天皇が愛されるための手段の一つに過ぎない。
＞ つまり、神社自体に霊的なパワーがあるわけではなく、謙虚に頭を下げて願掛けすることで、自分を鼓舞したり、気持ちを落ち着ける効果はある。それが神社の御利益だと考えている。