季節の花はツツジから紫陽花へ。

桜は震災もあって、すっかり遠くに感じる。


場所は赤札堂横のビルの2Fだったと記憶している。

いかにもの店構え。施術も取り立てて書くようなことはない。
ありきたりの営業トーク。しかし値段は幾分割高であった。


桜はお隣の新宿御苑で愛でるべきだったのだ。みなさん。夜桜鑑賞には十分気をつけましょう。
「看板エロいな」

見た目に惑わされると恋は上手くいかない。
アジアンエステにも通じるものがあると思う。


ただすっかり酔っ払って出来上がっていた私は、教訓を忘れ、『誘惑よこんにちは』とばかり、まっしぐらにアジトへ乗り込んだ。


ママは40前後か、色っぽい。担当かと期待したが、女の子をこれから電話で呼ぶそうだ。


期待は失望に変わり、恋から冷めて、途方にくれる。

無駄なお喋りばかりで、マッサージを始めない。すっかり、この仕事をなめているようだ。


始電の時間になると一目散に店から飛び出し、一夜の恋に破れた自分を励ました。
場所柄、邪な気持ちをもって来るお客さんが多いんですね、とは店主の弁。

心を読まれたようで、ドキッとする。


「そうきたか」
思わぬ奇襲を受けたが、ここはよしと気を引き締め、正装して施術を待つ。


本格派を自認するだけのことはある。
痛いを通り超すと快感になる。快感も過ぎると、すっかり眠ってしまったようだ。

夢現のなか、どこからか声が聞こえてきたようで、目を醒ます。

すっかり身体は軽くなっていた。


ディズニーならぬディーチャンは大人にとっての夢と魔法の国なのかもしれない。
しかし行列で120分待ちということはない。