成年後見の資料を作っていてつくづく感じたことがある。それは、成年後見というのは複数の分野が入り混じった領域、現代社会の縮図、になっているということである。私が活動している、シニアコンシェルジュ協会で数年前に成年後見のセミナーをしていただいたことがある。講師をお願いしたのは、城南信用金庫の理事長を務められた吉原毅氏。シニアコンシェルジュ協会が置かれている東京都品川区には城南信用金庫のほかにも4つの信用金庫が拠点を置いていて、その信用金庫が共同で成年後見の団体「一般社団法人しんきん成年後見サポート」を作って活動しているそうである。吉原氏に講師をお願いしたのは、この団体を経由してのことであった。
信用金庫が、成年後見の問題に取り組むのは、預金を下ろせなくなるというリスクに備えるためである。認知症になり、判断力が失われると自分で預金を下ろせなくなる。そして、後見人がついていないと、だれも預金を下ろせないという事態になってしまう。そういった状況を事前に回避するために成年後見が必要ということである。
シニアコンシェルジュ協会で一緒に活動をさせていただいている組織に、「NPO法人 障がい者・高齢者市民後見STEP」がある。こちらの活動拠点は大阪。この組織は、名称に、障がい者という言葉が含まれている。私たちは、障がい者というと何か特別な人というイメージを持ってしまうかもしれないが、認知症になった時、ガンなどで症状が悪化した時、私たちは障がい者になる。障がい者にとって重要な問題は、権利擁護である。権利擁護というと難しく考えてしまいそうであるが、人として当たり前に生活できることを保障することである。
介護保険のサービスを使うことを考えてほしい。私たちは、介護支援専門員(ケアマネージャー)に相談して、給付プランを作ってもらうことができる。しかし、自分で意思表示ができないのであれば、だれかに支援をしてもらわなければならない。これを担当するのが成年後見人ということになる。ここでは、成年後見人は日常生活の支援に入ることになる。成年後見人になっている人の順位を確認すると、子を除いた場合、司法書士、弁護士、社会福祉士の順に多数を占めている。社会福祉士が成年後見人になっている場合、被後見人の日常生活を支援していると考えるとよいだろう。
平成29年の統計を確認すると、成年後見の申立ての理由として、約1割弱の割合で、「保険金の受け取り」が挙げられている。これとは別に、「相続手続き」を理由としている割合が約2割弱。これらは、生命保険と不可分の申立てということになるだろう。保険金や相続となると、日常の生活費や生活のことより大きな決断となる場合が少なくない。
成年後見の分野は、こういった複数の業務が交差する分野になっているので、現代社会の縮図になっているのである。もっとも大切なことは、おそらく、自分の得意とする分野以外の業務を知ることである。信用金庫や銀行の行職員は、お金が大きく動く相続や保険の知識を身につけること、そして、日常生活で被後見人がどのような支援を受けているのかを知ることである。生命保険の募集人や証券外務員は、日常の生活費の管理や入出金を知ることが大切である。社会保険士や精神保健福祉士などは、日常的に必要になるお金以外のお金の管理や相続などの準備について知ることが必要になる。
さて、「一般社団法人しんきん成年後見サポート」と「NPO法人 障がい者・高齢者市民後見STEP」はいずれも法人である。実は、法人が成年後見人になることもトレンドである。そうすることにより、将来、担当者を変更することができるからである。個人が成年後見人の場合、後見する側もされる側も同じように齢をとっていく。成年後見人のコンプライアンスも含め、法人が成年後見人になるメリットは小さくない。
文責:杉山 明 ※ この記事は、出版社の許可を得て、週刊インシュアランスに掲載されたものを転載したものです。

