どのような職場あるいは病棟で働いているかにもよりますが、多くの医療従事者にとって患者さんの死は身近なものだと思います。私の病棟でも癌や肺炎、透析の中止等で亡くなる患者さんは多く、多い時は週に3人の方が亡くなることもあります。もう病の進行を止める術がないと分かった患者さんの多くは緩和ケアチームの介入の後ホスピスへ行き、最期を迎えられる方が多いですが、もちろん病棟で亡くなる方もいます。

 

で、悲しいかなある意味「死」に慣れてしまっていた私ですが、思い入れのある患者さんの死は本当に辛いということを最近ひしひしと感じます。

ここ10カ月ほど入退院を繰り返していた患者さんがいるのですが、最近余命宣告を受けました。当初移植手術を受けようと検討していたのですが、生体検査の末、移植もできないことが分かりました。気の知れた病院のスタッフに囲まれて息を引き取りたいとの思いからホスピスには行かず、病院で最期を迎える決断を下しました。

このおっちゃん本当に優しくて、私がMy Aged Care referralを通して介護アセスメント&サービスをアレンジ多したことを毎回ことあるごとに「本当に君は僕のためによくやってくれている、ありがとう。君がアレンジしてくれたサービスは本当に素晴らしいよ。本当に感謝してる」と何度も言ってくれるんです。こんな優しくて、辛い中でも感謝の気持ちを忘れないおっちゃんが亡くなってしまうという現実が本当に辛いです。(これ書きながらも涙が止まらん…)

 

実は葬儀回りでソーシャルワーカーに相談をしたいとのreferralを看護師経由で貰ったのですが、私には答えることができない質問だったので(あと余命宣告が出た後だったので一人で行ったら間違いなくおっちゃんの前で泣いてしまうと思った)、先日緩和ケアソーシャルワーカーさんと一緒に患者さんの部屋に行きました。おっちゃんも時々涙目で私も話している間も涙をこらえるのに必死でした。オフィスに戻った瞬間に私は涙がぽろぽろ。緩和ケアソーシャルワーカーさんが慰めてくれました。余談ですが毎日このような状況の患者さんや家族と話をする緩和ケアソーシャルワーカーさん、すげー。

 

と、10分くらいで無事立ち直って普段の業務に戻った私ですが(こういう時やることいっぱいあるって切り替えられてありがたい。)ふとした瞬間、おっちゃんの気持ちを考えてしまいます。ポジティブな人柄だけど、きっと怖いだろうなと。会った時も「安楽死は自殺じゃないんだよ」って自分に言い聞かせるように話してくれて、私は「うんうん、そうだよ」とうなずくことしかできませんでした。

 

自分が無力であることが悲しいのですが、おっちゃんには大切な家族や友人もいるし、臨床心理士も定期的に診にきているのできっと精神面ではたくさんのサポートが受けられていると思います。

おっちゃんの最期に立ち会えるかは分かりませんが、最期の日が分かったらちゃんと心の中でお別れをしたいと思います。