NHK大河ドラマ『光の君へ』第3回を視聴して | よどの流れ者のブログ

よどの流れ者のブログ

『源氏物語』『紫式部日記』『紫式部集』の著作者 紫式部について考えたことを書きます。 田川寿美のファンです。

まひろと道長が惹かれ合っていく経過と、兼家の思惑が登場人物すべてに降りかかってくる状況が織りなす第3回の展開でしたが、これはいい、と思わせてくれる場面が少なくて物足りない印象でした。兼家の描き方が陰謀家の型どおりで面白みが全く感じられません。段田安則というすばらしい役者を配しているのにもったいないです。もちろん彼の演技はうまくて非の打ち所がありませんが、それだけに陰謀家一辺倒の描き方に違和感を覚えています。道綱の母との関係をどのように描くのか関心を持って待っています。

 

 

まひろと道長との描き方ですが、惹かれ合っているのがよくわかる、というだけで、ひねりがなくて単純過ぎる描き方で面白みに欠けているように感じています。ドラマの主人公の男女が結ばれる前のパターンとして、反発し合っていたけれども互いに惹かれるようになっていった、という描き方がありますが、私はこのパターンはおかしいと常々思っています。ドラマとしては面白いけれども現実的でないと思っているのです。心底好きになり愛し合う二人というのは、最初から通じ合うものがあるはずだ、と思っているからです。

 

だから、赤い糸で結ばれているまひろと道長がお互い会った瞬間から惹かれ合うというのは納得のいくパターンなのですが、これまでの描き方にはしっくりくるものが感じられません。なぜ惹かれるのか、という自問の経過をそれぞれの心の内をたどるように描いてくれないからだと思います。いくつかのエピソードを重ねて、相手が気になる段階から赤い糸で結ばれた相手なんだと確信できる過程を描いてこそ、今回の最後の場面での出会いが、会えてよかったと思えるものが伝わってくるように思うのですが・・・。

 

 

その道長の正妻となる倫子が登場しました。さすが黒木華でした。この人の演技にはいつもホッとさせられます。倫子の母、倫子、赤染衛門、まひろ以外の女性たちにも、せっかくの衣装にふさわしい個性を感じさせてくれる台詞を用意してほしかったです。これだけの女性たちが揃えば、にぎやかで果てしのない会話が弾むのではないかと思うのですが、型どおりに倫子とまひろが対面して赤染衛門もいたけれど、他の女性たちは何だったの、という場面としか感じられませんでした。

 

為時や円融天皇、道兼などピリピリした雰囲気を醸し出す場面が多い中で、藤原実資だけはリラックスさせてくれます。役者の持ち味がマッチしているからでしょう。天皇のことを一心に思っている真面目な人ですが、女房たちに突っ込まれる緩いところがあるという役柄をうまく演じていると思います。

 

 

平安時代の貴族社会と庶民の街の様子が対比的に描かれて、時代考証など大変難しいところがうまく描かれていると思います。ただ、散楽の場面の多用が何を意味するのか、今回のサブタイトル『謎の男』が何を意味するのか、今のところわかりませんが、何か唐突感が強すぎて、この男がどう絡んでくるのか、という興味があまり涌いてきません。演出の仕方に問題があるように感じました。

 

1.脚本=会話は練られているか、恣意的になっていないか(10→2点)2.構成・演出=的確か(10→3点)3.俳優=個々の俳優の演技力評価(10→6.36点)4.展開=関心・興味が集中したか(10→5点)5.映像表現=映像は効果的だったか(10→4点)6.音声表現=ナレーションと音楽・音響効果(10→7点)7.共感・感動=伝える力(10→2点)8.考証=時代、風俗、衣装、背景、住居などに違和感ないか(10→7点)9.歴史との整合性=史実を反映しているか(10→2点)10.ドラマの印象=見終わってよかったか(10→3点)

合計点(100-41.36点) 

 

ここからは感想番外編です。藤原行成と藤原斉信が道長と絡んで登場してきました。行成と斉信は清少納言との交流で有名です。定子が入内する一条天皇即位までまだ間があります。清少納言の登場はそれからでしょうか。『枕草子』では清少納言が宮仕えする前のエピソードもあります。清少納言役のファーストサマーウィカが鶴瓶の家族に乾杯に出演していたのを見ました。現代女性そのものでしたが、はきはきしていて清少納言がこの年頃だったらこのようだったのではと思わせてくれました。どのような清少納言になるのか、どのような演技をしてくれるのか楽しみです。