「ねえ、そういえばさ。」
真衣は唐突に人差し指をあげた。
華々しさがなくなり、新芽が顔をだした桜並木の下。
ようやく授業が本格的に始まったので、昼食後の授業を終えてからの帰宅となった。
「入学式のとき、ニーナを連れ去ったあのバンドの一味は誰かわかった?」
あたかも仁菜が悪党にさらわれたかのような表現で言い放った。
しかも、仁菜がその人物を見つけなくてはならないというような言い方で。
そんなことはお構いなく、一週間も前なんだね。と真衣は一人ごちて、
「その人物がわかれば他のバンドメンバーも芋づる式にわかるわよね。」
探偵のような口ぶりで仁菜に同意を求めた。
軽音部には所属していなかった彼らの行方をずっと探しているのだ。
そんな真衣に仁菜は曖昧な返答を返して、
「実は……」
その名前を口にすることにした。
仁菜はあの時のお礼を言い忘れていることが心残りではあったのだ。
きっとあのまま先生につかまっていたら、悪い印象こそあれ、良い印象はもたれないだろう。
あの場は逃げていて正解だったに違いない。
もちろん先生たちに特別良い印象を持たれたいと思っているわけではないが、仁菜は無難に高校生活を送りたいと思っていた。
ちらりと真衣を垣間見る。
彼女はそうは思っていないらしい。
仁菜の返答を心待ちにしている。
新しい刺激を探し求めるきらきらと輝いた瞳。
仁菜の返答に真衣は間髪いれずに口を開いた。
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