これまで何本もインド映画を見てきましたが、珠玉と言えるのが、この「サラーム・ボンベイ」でした。1988年、インド・伊・仏・米の4ヵ国合作で、インドの女性監督M・ナーイルの長編処女作です。

サーカス団からひとり取り残された少年が、ストリートチルドレンの仲間入りをしながら力強く生きてゆくというストーリーです。少年の瞳の輝きがとても印象的でした。

40年程前、岩波ホールで連続2回見てしまいましたが、映画を見ながら涙が出てきたのはこれが初めて。息遣いさえ感じさせる繊細な表現力も、何ともいえない哀愁を誘います。

インド映画には、サタジット・レイ監督の「大地のうた」(1955年)、「大河のうた」(1956年)、「大樹のうた」(1959年)に始まり、内容、映像ともに素晴らしい作品が多いですが、同監督の「遠い道」の様にインドに古来より根付く差別観(カースト)を、正面から痛烈な皮肉をこめて批判した作品もありました。

 

最近のインド映画は、踊りやコミカルな娯楽ものが多くなってきましたが、過去にはこの「サラーム・ボンベイ」のようなシリアスな作品も少なくありません。