再び皆が勢揃いしたパーティー会場。
響子母のパンケーキは大好評だった。
と、そこに森川が入ってきた。
そして、皆と和やかにパンケーキを口にしている
麦子の元へと迷わずやって来る。
「お嬢様。お待ちかねの由基様は後、
10分ほどでご到着されます」
「ほんと?ありがとう、森川さん」
麦子の言葉に満足気に頷く森川。
その額には無数の汗が光っている。
麦子は自分の携帯を確かめた。
由基からのメールも着信もなかった。
「森川さん。
森川さんのところには連絡があったの?
由基から」
「えっ、あっあの‥」
ひとまず任務を終えたと思っていた森川は、
傍目に見ても分かりやすくあたふたする。
もちろん森川も由基と連絡を取った訳ではない。
孫を思う雄三郎の命で、由基を捜し出した
優秀な紫堂家の護衛部隊の実力だ。
「私のところには何の連絡もきてないわ」
「お、お嬢様。
どうかお気を落とされませんように。
国道で由基様のお車をお見かけしたとの
一報が入っただけのお話でございます」
「そうなの。それじゃあ、
まだお仕事終わってないかも知れないわね」
「いえ、それは‥
そのようなことはないかと思われます。
お嬢様がお待ちになっていらっしゃること
由基様はご存じのはずですよね」
「そっか‥そうよね。今朝出かける時、
今日は早めに帰るって言ってたし」
「そうでしたか。由基様は有言実行されるお方。
それでは、私はお出迎えに行ってまいります」
「森川さん、待って。私も行くわ」
さて、あれから10分。
エントランスにて由基を待つ麦子と森川。
その側に控える護衛隊長の無線に、
由基の車が正門を通過したとの連絡が入った。
待ち切れない麦子は表に出た。
二人が車止めに到着する頃には、
やってくる由基の車がはっきりと見えてきた。
「由基、おかえりなさい」
「お嬢様、こちらより前に出られては
危のうございます」
今にも駆け出しそうな麦子に
森川は慌てて声を掛ける。
「ごめんなさい、森川さん」
本当に嬉しそうな麦子の様子に、
森川も嬉しい気持ちになる。
今日も一日、雄三郎からやいのやいの言われた
疲れも取れるようだった。
由基の目にも麦子が小さく手を振る姿が見えてきた。
自然と笑みがこぼれてくる。
由基は車を停め、鞄を手に車を降りた。
「おかえりなさい」
「おかえりなさいませ、由基様」
「ただいま」
ふたりの出迎えに由基は何となく照れて頭をかく。
麦子は由基の鞄を預かろうと両手を伸ばした。
由基は笑みを浮かべながら首を振り、
空いている方の手で麦子の手を取った。
屋敷に向かって歩き出す。
「ごめんな‥遅くなって」
すまなそうに由基が言う。
由基が指を絡めた恋人つなぎをしてきたことで、
内心ドキドキしていた麦子は慌てて首を振った。
「ううん、いいの・・・
あっあのね、森川さんが教えてくれたのよ。
由基がもうすぐ帰ってくるって。
だからね、待つのも楽しかったわ」
麦子に気づかれないように由基は苦笑い。
その後ろで森川はビクついていた。
「待つのも楽しいか。麦子にはかなわないな」
「由基?」
「いいんだよ‥麦子は」
三人は屋敷へと上がる階段まで来た。
さすがにここまで来ると、
ライトに照らされて明るくなる。
由基は立ち止まり、麦子の肩に自身の手を置いた。
由基?
麦子はどぎまぎしてしまう。
由基の端正な顔が近づいてきたから。
よっ、由基‥
今?
ここで‥
でも‥
もっ森川さんいるし‥
でも‥
うれしっ・・・
麦子は真っ赤な顔で目を閉じた。
由基はそんな可愛い麦子の勘違いに応えた。
麦子の口元についた生クリームを、
ぺろっとなめとったのだ。
「あまっ」
麦子の耳元で由基は囁く。
麦子は茹蛸のように赤くなった。
森川は慌てて回れ右をしてふたりに背を向ける。
由基は俯いた麦子の手首を取ると再び囁いた。
「続きはまた後で」
ぼっ!!
麦子は沸騰する。
由基はそんなすぐ顔に出る麦子が
可愛くて仕方がなかった。
「麦子、歩けるか?」
「えっ」
麦子が我に返って由基を見ると、
由基は目の前の階段を見ていた。
そして、麦子の方を見る。
目が合った。
「どうする?」
どうする?
まさかのお姫さまだっこ!!
「もう‥」
麦子はぷうと頬を膨らます。
「これも後にする?」
由基は麦子の膨らんだ頬をつつきながら言う。
「もう!由基のイ・ジ・ワ・ル」
麦子は繋いでいた手を離し、
すたすたと階段を駆け上がっていく。
由基はくすくす笑いながらその姿を見送る。
その後ろで森川は小さくなって祈っていた。
由基が自分の存在を忘れてくれるように。
「森川」
「はっはい、由基様」
慌てて森川は由基の側に行く。
「今後は止めてくれ」
「由基様、申し訳ございません。
私が勝手に」
「もういいよ。おまえも下がる時間だろ」
「由基様」
そして由基は軽快に階段を上がり、
エントランスで待つ麦子と共に
自分の部屋に帰るのだった。
「兄貴、おつかれ。
みんな待ってるんだから、早くね。
麦子もだよ」
もちろん由基のところにも、
こんな電話が掛かってきたのは言うまでもない。
~~
☆やっと紫堂家のバレンタインが終わりました。
では、今回もおつき合い下さって感謝です。。
響子母のパンケーキは大好評だった。
と、そこに森川が入ってきた。
そして、皆と和やかにパンケーキを口にしている
麦子の元へと迷わずやって来る。
「お嬢様。お待ちかねの由基様は後、
10分ほどでご到着されます」
「ほんと?ありがとう、森川さん」
麦子の言葉に満足気に頷く森川。
その額には無数の汗が光っている。
麦子は自分の携帯を確かめた。
由基からのメールも着信もなかった。
「森川さん。
森川さんのところには連絡があったの?
由基から」
「えっ、あっあの‥」
ひとまず任務を終えたと思っていた森川は、
傍目に見ても分かりやすくあたふたする。
もちろん森川も由基と連絡を取った訳ではない。
孫を思う雄三郎の命で、由基を捜し出した
優秀な紫堂家の護衛部隊の実力だ。
「私のところには何の連絡もきてないわ」
「お、お嬢様。
どうかお気を落とされませんように。
国道で由基様のお車をお見かけしたとの
一報が入っただけのお話でございます」
「そうなの。それじゃあ、
まだお仕事終わってないかも知れないわね」
「いえ、それは‥
そのようなことはないかと思われます。
お嬢様がお待ちになっていらっしゃること
由基様はご存じのはずですよね」
「そっか‥そうよね。今朝出かける時、
今日は早めに帰るって言ってたし」
「そうでしたか。由基様は有言実行されるお方。
それでは、私はお出迎えに行ってまいります」
「森川さん、待って。私も行くわ」
さて、あれから10分。
エントランスにて由基を待つ麦子と森川。
その側に控える護衛隊長の無線に、
由基の車が正門を通過したとの連絡が入った。
待ち切れない麦子は表に出た。
二人が車止めに到着する頃には、
やってくる由基の車がはっきりと見えてきた。
「由基、おかえりなさい」
「お嬢様、こちらより前に出られては
危のうございます」
今にも駆け出しそうな麦子に
森川は慌てて声を掛ける。
「ごめんなさい、森川さん」
本当に嬉しそうな麦子の様子に、
森川も嬉しい気持ちになる。
今日も一日、雄三郎からやいのやいの言われた
疲れも取れるようだった。
由基の目にも麦子が小さく手を振る姿が見えてきた。
自然と笑みがこぼれてくる。
由基は車を停め、鞄を手に車を降りた。
「おかえりなさい」
「おかえりなさいませ、由基様」
「ただいま」
ふたりの出迎えに由基は何となく照れて頭をかく。
麦子は由基の鞄を預かろうと両手を伸ばした。
由基は笑みを浮かべながら首を振り、
空いている方の手で麦子の手を取った。
屋敷に向かって歩き出す。
「ごめんな‥遅くなって」
すまなそうに由基が言う。
由基が指を絡めた恋人つなぎをしてきたことで、
内心ドキドキしていた麦子は慌てて首を振った。
「ううん、いいの・・・
あっあのね、森川さんが教えてくれたのよ。
由基がもうすぐ帰ってくるって。
だからね、待つのも楽しかったわ」
麦子に気づかれないように由基は苦笑い。
その後ろで森川はビクついていた。
「待つのも楽しいか。麦子にはかなわないな」
「由基?」
「いいんだよ‥麦子は」
三人は屋敷へと上がる階段まで来た。
さすがにここまで来ると、
ライトに照らされて明るくなる。
由基は立ち止まり、麦子の肩に自身の手を置いた。
由基?
麦子はどぎまぎしてしまう。
由基の端正な顔が近づいてきたから。
よっ、由基‥
今?
ここで‥
でも‥
もっ森川さんいるし‥
でも‥
うれしっ・・・
麦子は真っ赤な顔で目を閉じた。
由基はそんな可愛い麦子の勘違いに応えた。
麦子の口元についた生クリームを、
ぺろっとなめとったのだ。
「あまっ」
麦子の耳元で由基は囁く。
麦子は茹蛸のように赤くなった。
森川は慌てて回れ右をしてふたりに背を向ける。
由基は俯いた麦子の手首を取ると再び囁いた。
「続きはまた後で」
ぼっ!!
麦子は沸騰する。
由基はそんなすぐ顔に出る麦子が
可愛くて仕方がなかった。
「麦子、歩けるか?」
「えっ」
麦子が我に返って由基を見ると、
由基は目の前の階段を見ていた。
そして、麦子の方を見る。
目が合った。
「どうする?」
どうする?
まさかのお姫さまだっこ!!
「もう‥」
麦子はぷうと頬を膨らます。
「これも後にする?」
由基は麦子の膨らんだ頬をつつきながら言う。
「もう!由基のイ・ジ・ワ・ル」
麦子は繋いでいた手を離し、
すたすたと階段を駆け上がっていく。
由基はくすくす笑いながらその姿を見送る。
その後ろで森川は小さくなって祈っていた。
由基が自分の存在を忘れてくれるように。
「森川」
「はっはい、由基様」
慌てて森川は由基の側に行く。
「今後は止めてくれ」
「由基様、申し訳ございません。
私が勝手に」
「もういいよ。おまえも下がる時間だろ」
「由基様」
そして由基は軽快に階段を上がり、
エントランスで待つ麦子と共に
自分の部屋に帰るのだった。
「兄貴、おつかれ。
みんな待ってるんだから、早くね。
麦子もだよ」
もちろん由基のところにも、
こんな電話が掛かってきたのは言うまでもない。
~~
☆やっと紫堂家のバレンタインが終わりました。
では、今回もおつき合い下さって感謝です。。