オワ婚 著者:柴崎竜人 出版社:幻冬舎 出版年:2012年7月13日 評価:☆☆☆ 完了日:2015年5月7日 ラベル:ラブストーリー
「世界はそれをオワコンって言うんだぜ!!」
by サンボマスター(タイトル改変)
結婚なんて、オワコン(終わってるコンテンツ)なんだよぉぉぉ!!!!
↑結婚できない人間のひがみ。
君嶋大地(32)は、出版社に勤めている編集者。
大学時代からの同級生・益岡恭司は、大地の担当作家である。
恭司の出す作品は、いまのところ全てそこそこヒットしている。
ある日大地は、恭司からカジノに行こうと誘われる。
ツキが巡っているのか、賭けはことごとく当たり、金を順調に増やしていく大地。
そこでディーラーから声を掛けられ、VIPルームへと通される二人。
さらに掛け金の高い場所で、大地は賭け事に興じていく。
と言っても、大地は賭け事にすぐ熱狂し、周りが見えなくなってしまうほどのバカ者ではない。悪ノリするのは、むしろ恭司の方で、彼のせいで悪い方向に引きずられている感がある。
・・・・で、気が付けば負けが込み、2千万円の借金までしてしまうのだからタチが悪い。
しかも、金を借りた相手が悪かった。
九州地方で一代にして財を成したヤクザ系企業の創業者・三船千吉がその相手だった。
返す当てがないと告げると、千吉は交換条件を出してきた。
今度、見合いをすることになる千吉の娘の縁談を必ず成功させろと言ってきたのだ。
かくして、借金チャラのための大地と恭司によるお見合い大作戦が始まった!
仕方なしに引き受けたこととは言え、しっかりレクチャーしてくれる大地のクソ真面目さよ。
そして、彼のシビアな物の見方、考え方に、「う~ん、厳しい!」と言いたくなる。耳が痛いですよ。
今回、見合いをすることになったのは、三船日子(にこ)。
お嬢様学校を卒業した後は、バリバリのキャリアウーマンをしているという。年齢は31歳。
この年齢とこのキャリア、加えて日子の中学生レベルの結婚観に頭を抱える大地。
恭司にも「バカな女」と言われてしまうしな。
ここで言うバカとは、この見合いにおける重要性を分かっていないという点であって、彼女自身の頭が悪いということではない。そこはキャリアウーマンだけあって、素頭は良い方だ。
それより、渡辺容子『死神は恋を連れてやってきた』の主人公の方がヤバい。よっぽど頭湧いていたしな。
いくら人生設計を思い描いてみたとしても思い通りにいかないもの、それが結婚である。
どんなに結婚したいと願っても、それができるとは限らない。相手あってこそのものであって、自己都合では済まないからだ。
結婚・恋愛に対する男女の考え方の違いが浮き彫りになっていておもしろい。
30歳過ぎても「白馬の王子さまがきっと迎えに来てくれる」と信じてるそこのあなた!
あなたの白馬の王子さまは、途中で交通事故を起こしたようだから、やっては来ないよ(笑)
大地と日子はそういった考え方の違いから反りが合わない。
この期に及んでも日子は、見合いや結婚というものに夢を見ている。
この見合いにメルヘンなんてものを求めちゃいけないんだ!
これは家と家との見合いであって、本人同士の意思など関係ないのだ。
日子がこんな調子では先が思いやられますな。
上流階級における見合いというものは、一般ピープルには分からない伝統やしきたり、格式などがあったりする訳で、普通に考えちゃダメなんだな。
大地たちは念には念を入れて、日子をしごき上げる。
その甲斐あってか、お見合いは順調に回数を重ねていく。
・・・・・とおもったら、キターーーーーー(゚∀゚)---!
それで終わるはずがないと睨んでいましたよ、えぇ。思わず叫んだ。
嵐がきたぞーーーーー!
あの順調さは嵐の前の静けさだったんだ。
これに対して、恭司はどこか楽しんでいるフシがある。
大地の性格を見越して、恭司は彼に刺激を与えるような言葉を掛けるしな。
本の雑誌『ダ・ヴィンチ』にて紹介されていた作品。
登場人物の一人は、結婚というシステムをもう崩壊しているものだと否定しているが、そういう暗い状況で物語が終わる訳ではない。
著者が『ダ・ヴィンチ』のインタビューで語っているように、ラストは結婚に希望を持てるような締めくくりとなっている。
タイトルは『オワ婚』だが、それほど否定的になってはいなかった。