Me and The Night and The Music ――私と夜と音楽と その17―― | Everyday People Dance To The Music

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日々人は音と共に踊る

No.017:
Queen
『Greatest Hits』



Greatest hits 1 - Queen

ベスト盤。
例えば「イーグルスが最大の売り上げを記録したのは『ホテル・カリフォルニア』、ではなく、その前に発売されたベストアルバムである」という事実が、少なくともロッキンオン的な史観においてはほぼ抹消されてしまう程度には、ぞんざいな扱いを受けているカテゴリーであるとは思う。

ベスト盤、というものについて、率直に言えばそれほど好きというわけではない。積極的に嫌いというわけではないけれども。
例えばビートルズの赤盤青盤、ツェッペリンの『リマスターズ』と言った辺りは確かに聴き始めではあったけれども、オリジナルアルバムをレンタルなり購入なりで揃えるにつれて無用のものとなって行った。
ベスト盤との関わり方として、それらはむしろ幸福なものであるようにさえ思う。多くの人にとって大抵の場合、ベスト盤のみの付き合いとなっている、そしてそれすらまともに殆ど聴いていないアーティストの方が、恐らくは多数を占めている筈だ。

詰まるところ、ベスト盤というものは入り口のドアのようなものであるのかも知れない。中の様子が少しだけうかがい知れる、窓付きのドアというのがより正確だろうか。
くぐり抜けてしまった後に、ドアの意匠を顧みる者は少ないだろう。そもそも、殆ど意匠らしい意匠も無いことの方が多いであろうから。

……一部の例外を除いては。


Queen - Another One Bites the Dust (Official Video)

クイーンを最初にアルバム単位で聴いたのは『グレイテスト・ヒッツ』……ではなく、MDにダビングしてもらった『ロックス』の方だったかもしれない。自発的に手に入れて聴いたのは間違いなく『グレイテスト・ヒッツ』だ。
そこからオリジナルアルバムを買い集め、ベスト盤に収録されている曲もほぼオリジナルで揃え終えているのだが、その中において、今後最も多く聴き返すことになるのは……恐らく『グレイテスト・ヒッツ』で間違い無いと思う。

元々ハードロックとプログレとグラムの美味しい所取りから、作品を重ねるにつれてさらに膨大な要素をアウトプットとして提示し続けた、化物のようなグループであるクイーンの音楽的ふり幅の大きさを、『グレイテスト・ヒッツ』は十二分に捉えている。
殊に冒頭の3曲、壮大なロックオペラ『ボヘミアン・ラプソディ』→ドライヴ感強烈なファンク『地獄に道づれ』→ゴージャスなポップ小曲『キラー・クイーン』という流れはその最たるものだが、真に驚くべきは、収録年が大きく行き来していながら殆ど違和感を覚えないと言う点かもしれない。


Queen - We Will Rock You (Official Video)

そしてそれはまた、このアルバムが単にヒット曲を年代順に並べただけのものではなく、改めて一つの流れになるように配置しなおした物である事をも意味している。
様々な色合いの曲を、飽きが来ないように緩急をつけて並べつつ、冒頭とラストに盛り上がりのピークを作る構成は素晴らしい。
のみならず、オリジナルでは締めの位置にある『ボヘミアン・ラプソディ』を冒頭に、逆に冒頭に置かれていた『ウィ・ウィル・ロック・ユー』と『伝説のチャンピオン』をラストに配することで、オリジナルとは全く異なる意味合いと味わいを付与してもいる(余談だが、この手法は自分でコンピレーションを作るときに結構流用していたりする)。

言うなれば『グレイテスト・ヒッツ』は、選りすぐりのヒット曲によって構成された、「オリジナルアルバムを超えたオリジナルアルバム」とも言うべき代物なのだ。その意匠たるや、オリジナルに勝るとも劣る事はあり得ない趣向の凝らされようであり、思わず顧みるも致し方なしと言わざるを得ない。


Queen - Keep Yourself Alive (Official Video)

唯一惜しむらくは『炎のロックンロール』が収録されていない点だろうか。
ただ、「売れたら帽子を食ってやる」と豪語した評論家を実力で黙らせる前の曲ではあるので仕方が無い。仮に入れたとしても置き所に困るかも知れないし。



その『グレイテスト・ヒッツ』でも、クイーンというバンドの全面を捉えきることはできない。当然と言えば当然の話ではあるのだが。
極めて多面的なクイーンの音楽性における、最も多くの、最もきらびやかな部分を切り取った作品と言うだけでも大きな意義はあるし、それ以上の価値があると思う。