マルトの気持ちで |  SHOKEI 'S TIMES

マルトの気持ちで

 

夏至も近づき日照時間が伸びて、夜明けが早くなった。

私は夜型というか夜中型人間なので就寝の頃に明るくなってしまう

のには ちょっと困っている。

 

 

夜が明けてくると思い出す怪談映画がある。

琵琶法師の「耳無し芳一」(たぶん)が夜明けまでお経を唱えて

いれば助かるという場面・・・。

部屋には障子の小窓があり、外界が少しずつ明るくなっていくのが

障子の色の変化でわかる。

障子がすっかり明るくなり、朝になったと思いその小窓を開けると

外は真っ暗。 悪霊が入ってきてしまう~。

 

未明に絵を描いていて窓が明るくなってきたからといって すぐに

窓を開けると悪霊がはいってきてしまうかもしれない。

ちょっと躊躇・・・。

 

 

 

私は子供の頃より夜型だが、ここ十年ぐらい寝る時間がどんどん

遅くなってしまった。 最近では 朝6時頃に就寝することが多くい。

しかし息子らの登校登園時間やカルチャーのため8時過ぎには起き

なくてはならないし、土曜日はカルチャーが午前中からあるので朝 

6時に起きなければならない。(通勤に片道2時間以上かかるので)

だから毎週土曜日はほぼ徹夜状態での出勤となってしまう・・・

ここ10年 こんな生活をしている。

 

別に病気自慢のように悪い習慣を自慢したいのではなければ、妙な

アピールでもない。改善しようと何度も規則正しい生活を試みては

いるが、要領(頭)が悪くて ついズルズルと・・・

ここまでは前置き。

 

ここからが本題~

 

そんなことから 就寝前の朝の5時~6時に風呂に入る事が多い。

朝日が浴室の窓から斜めに入り込み浴槽が光る。夜中に飲んだ

アルコールが少し残っているせいもあるのか その反射光の中で

のんびり足を伸ばして浸かっていると、ボナールが描く浴室風景の

ようでなかなか快適気分・・・。

ボナールの奥さんのマルトは 身体が弱く一日に何度も風呂に

入っていたというが こんな気持ちかな・・・。

ボナールが描く浴室の絵の多くは「このような午前中の光」じゃ

ないのかな・・・と思ったりする。

 

ボナールは、光を大切にしている画家で いろいろな光をかき分け

ているのが面白い。

昼間の窓からの光やその反射光。夜の室内の電灯の明かりや黄昏時・・

場所や時間の違いを色に置き換えて表現していてすごいと思う。

 

 

私も風景を描く時に光を大切に扱いたいと思う。

風景を一つの「出来事」だと思って描く事にしている。

 

風景がキレイだから描くというのでは 観光絵葉書の方がいい。

 

 

 

最近、ネットでボナールの浴室の絵は恋人が浴槽の中で自殺した事

に由来する「怖い絵」だと論じている記事を読んだ。

私はそうは思わない。

 

  

            ボナール「浴槽の裸婦」

 

ボナールの制作した絵の全体から考えてみれば そういう推測は

無用だと思う。小さな事件を見つけては 揚げ足を取るような批評を

するのは良くないだろう。

ここぞとばかり、面白おかしく茶化したり説明することは純粋に観賞

する者に対して大きな弊害になると思う。

 

晩年のボナールには 熟慮した一貫する絵画としての造形意識を感じる。

 

 

高校生の時に西洋美術館でボナールの「サーカスの馬」を見て驚き、

ボナールの虜になったが 最近になってまたまた惚れ直している。

 

 

     右端の人物もヘン・・・

               ボナール「サーカスの馬」

 

ボナールを見ているとデッサンの意味がわかるような気がしてくる。