ケンプを聴きながら描く |  SHOKEI 'S TIMES

ケンプを聴きながら描く

 

シューマンのピアノ曲に「ダヴィッド同盟舞曲集」(1837年)

というのがある。「ダヴィッド同盟」とはシューマンが空想で

作り上げた 俗っぽい音楽に対抗する同盟だという。

ちょっとビートルズが作り上げた架空のバンド「 サージェント・

ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」に似ていると

思った。ビートルズ(ポール)が作ったのは1967年だから 130年

も前にこの架空同盟をシューマンは考えたことになる。

 

「ダヴィッド同盟舞曲集」は聴き始めた頃は ヘンテコな組曲で

好きになれなかったが 聴き返しているうちに面白さに気がついた。

 

シューマンは 自分の中に想像の二人のキャラクターを作る。

活動的で快活なフロレスタンと静的で思索的なオイゼビウス で、

それが音楽にも現れる。その他に言葉遊びをアナグラムで音化し

て作曲したりしていて・・・調べていくと興味は尽きない。

 

 

 

 

 

 

このシューマンの「ダヴィッド同盟舞曲集」や「森の情景」を

ヴィルヘルム・ケンプの演奏で聞くのが好きで このところ毎晩

のように頻繁に聴いている。

歳をとると味覚が変わるように好きな音楽家も変わる。若い頃は

ケンプの良さはわからなかった。もっと味付けの濃い感情的で

奇抜な演奏家が好きだった。

その頃、ケンプのことを「ピアノの詩人」という人がいたので

興味をもち 聞いてみたのだが、予想とは裏腹に普通の演奏で 

どこが詩人と言われる所以かわからなかった。

これは私の「詩人」に対する浅い偏見だったと後程 気がついた。

 

 

ケンプは極端な事を嫌うようで淡々と弾くが、ダラけたりはしない。

人と違った事をしてやろうとするような「あざとさもない」と思う。

 

ケンプは若い頃、オペラの作曲家でピアノ演奏は副業だったそう

だが、戦後はピアニストとして有名になった。

ケンプがシューマンを主に弾くようになったのは71才からで、

75才からの3年間に集中してシューマンのピアノ曲を録音した

そうだ。(1991年95才で亡)

 

 

 

いろいろなピアノ演奏をあれこれ聴いていると、美しい音を追求

するよりも、音の向こう側にある何物かに思いを馳せているような

演奏があると感じる。

ケンプの弾くシューマンやブレンデルのシューベルト、フランソワの

ショパンやラヴェル等を聴いていると そんなことを ふと思う。

 

そして そういう絵が描けたらいいなと 

ボンヤリ思いながら聴いている。

 

 

絵に於いても 美しい色彩や技術効果を狙った作品や,見栄えを

気にした作品が多いが、ケンプのピアノ演奏のように 自然で何か

深いものを醸し出しているような絵が好きだ。

 

 

そういう絵や音楽に憧れている・・・。