命がけの戦いはルール適当で残酷描写なし『モータル・コンバット』(1995) | しばりやトーマスの斜陽産業・続

命がけの戦いはルール適当で残酷描写なし『モータル・コンバット』(1995)

モータルコンバットのドラゴンロゴと赤く光る目

『ストリートファイターⅡ』が切り開いた対戦格闘ゲームの熱はアメリカにも轟いた(歴史を紐解くと『アーバンチャンピオン』とか『イーアルカンフー』『対戦空手道』とかもあるんだけど)。『ストⅡ』に匹敵する人気を誇ったのがミッドウェイゲームズの『モータルコンバット』だ。

「命がけの戦い」と銘打たれたこのゲームは『ストⅡ』と違い実写映像を取り込んだキャラの動きが大変もっさりしていて『ストⅡ』や『餓狼伝説』の滑らかなキャラの動きに慣れた日本人にはイマイチ受けが悪かったがアメリカ人にはバカ受け。特にフェイタリティ(日本語でいうと究極神拳とやたらカッコいい)という必殺技は相手を頭から喰っちまったり、炎で焼き尽くしたり、背骨ごとしゃれこうべを引っこ抜くなど、残虐極まりないトドメ技で血の気の多いアメリカンキッズを「ストⅡよりすげえ!」と熱狂させた。

 実写取り込みになった理由は映画『ユニバーサル・ソルジャー』のゲームをつくろうとし主演のジャン=クロード・ヴァン・ダムの権利を取ろうとしたが不調に終わり、ヴァン・ダムをイメージした「映画スターにして一流格闘家」のジョニー・ケイジのキャラを作り、『ストⅡ』に匹敵する対戦格闘ゲームの制作がはじまった。ヴァン・ダムは後にストⅡの実写映画『ストリートファイター』に主演していたから、ミッドウェイはヴァン・ダムを二度にわたって取られたことになる。

 

 映画『ストリートファイター』に遅れること一年後、実写映画『モータル・コンバット』が公開される。ヴァン・ダムは出演させられなかったが『ハイランダー』シリーズのクリストファー・ランバートをメインキャラのライデン役に迎え、ラスボスのシャン・ツンにはアジア人の悪役といえばこの人、ケイリー=ヒロユキ・タガワというB級無国籍アクション臭がプンプンするキャストには映画マニア心をくすぐられた。

 

 ストーリーはゲーム版に準拠しているが一部の設定。キャラクターの関係を変更している。この世界は何百年にもわたり地球(アースレルム)の支配権をめぐる戦いが繰り広げられている。対戦相手の魂を奪う魔術師シャン・ツン(タガワ)は地下世界アースワールドの怪物ゴローを利用し、格闘大会モータルコンバットを開催。この戦いに10回連続で勝利すればアースレルムの支配権を得る。ゴローは9回連続勝利の無敗チャンピオン。

 雷神ライデン(ランバート)はシャン・ツンとゴローの野望を阻止すべく人類に味方することにし、3人の男女をモータルコンバットに参加させる。少林寺の寺を継ぐことを嫌い飛び出したがために代わりに大会に出場した弟を殺されたリュウ・カン(ロビン・ショウ)、一流格闘家にして映画スターだが一部マスコミには「作られたスターに過ぎない」とバッシングを受け、実力を知らしめようとしているジョニー・ケイジ(リンデン・アシュビー)、特殊部隊のメンバー、ソニア・ブレイド(ブリジット・ウィルソン)。

 神であるライデンは大会に直接関われないが、3人を(特に精神面で)鍛え上げ、勝利に導こうとする。ライデンはいつもわざとらしく登場しては役に立つのか立たないのかわからないことを一言二言述べて去っていく。と思うといつのまにやら現れて助けるわけでもなく、なんか適当なことを囁くのだった。お前一体何のためにいるんだよ!「あいつ役に立たねえ!」といわれるのがお約束で本作ではジョニー、続編の『2』ではジャックスにぼやかれている。

 

 大会はシャン・ツンの島で行われる。香港の港から出発し、島であちこちから集められた格闘家と戦う展開はほぼ『燃えよドラゴン』。

 

 シャン・ツンが送り込むスコーピオン、サブ・ゼロ、カノウ、リープテイルといった強敵を倒し、残るはゴローとシャン・ツンのみ。ジョニーが機転を利かせゴローを地獄に突き落とすとシャン・ツンは突如ルールを変更して最期の対戦相手をソニアと勝手に定め、かたき討ちを望むリュウ・カンをあざ笑い魔界へ消える。

 勝てる見込みのない組み合わせだが、ライデンは「対戦を拒否すれば無効になる」というルールの盲点を突く。というかこの大会、ルールが常に適当で、世界の命運を決める戦いなのにそんな雑なのでいいの?

 魔界にたどり着いたリュウ・カンはシャン・ツンと対峙。「弟を見捨てた」というトラウマをチクチク責め立てるシャン・ツンの魔術を跳ね返し突き出たヤリの上にシャン・ツンを突き落として見事勝利。

「完全なる勝利(フローレス・ビクトリー)だ!」

 

 魔界側の連続勝利を阻んで無事アースレルムは救われるのだが、シャン・ツンの背後にいた将、シャオ・カーンは突如ルールを変更してアースレルムの征服を開始する(だから、ルールはなんだったんだよ!)。

 

 残酷描写のあるゲームなのに、期待した観客は飛び散る血の量すら適切に調整されたせいぜいPG12程度の描写にガックリ。これにはそれなりに理由があって、制作のニューライン・シネマは夏休み期間中に公開されるこの映画をキッズでも楽しめるレベルにしたかった。結果暴力描写を控えめにして公開し、気の抜けたユーロビートが流れる劇場には虚ろな空気が流れていた。この年齢制限を抑える描写は功を奏して制作費の3倍にあたる数字を稼ぎ、続編につながった。しかし柳の下の泥鰌は二匹おらず、失敗したため長らく続編が途絶える。2021年のリブート版はこれらの反省から本来の残酷描写が描かれるようになった。

 

 監督のポール・アンダーソンは同作のヒットから名を知られるようになり、『バイオハザード』シリーズ、『DOAデッド・オア・アライブ』『エイリアンVSプレデター』『モンスターハンター』とゲーム映画を次々手掛ける専門になったがどれもこれもイマイチ弾けが足りない、ヤバイゲーム映画屋さんとして知られるようになるのだった。

 

 タイトルと登場人物の名前を連呼するだけの主題歌『Techno Syndrome』はシリーズ共通で使われており(登場人物の変更に応じて歌詞が修正される)本作を象徴する名曲といえる。

 

残酷な方のモーコン、『モータルコンバット/ネクストラウンド』は来月頭に日本公開!

 

残酷じゃない方

残酷じゃない方の続編

残酷な方

ゲームでフェイタリティ

ドラマ版