経済の仕組みを学ぼう『インターネット・カネゴン』 | しばりやトーマスの斜陽産業・続

経済の仕組みを学ぼう『インターネット・カネゴン』

 7月から放送がスタートしたウルトラマンニュージェネレーションヒーローズの最新作『ウルトラマンアーク』は怪獣や異星人に対抗するプロフェッショナルチームの活躍を描いた『ウルトラマンブレーザー』から一転、架空の地方都市・星元市で頻発する怪獣災害を調査する調査所・SKIP(Scientific Kaiju Invessssstigation and Prevention centerの略)の活躍を描いた物語。

 地球防衛隊のように怪獣と戦ったりする兵力を持たない組織で、『怪奇大作戦』のSRIみたいなもんだ。それが他のニュージェネレーションシリーズの差異になっていて面白いのだが、今朝放送の第8話『インターネット・カネゴン』はずば抜けていた。

 

 怪獣カネゴンは『ウルトラQ』に初登場して以降、延々と続くウルトラシリーズに出演し、「お金を食べて生命活動を維持している」という設定と見た目のユーモラスさでマスコット化して本来の立ち位置とは違うキャラクターとして人気を博している。テレビ番組のシリーズとしては『ウルトラマンZ』以来の出演。

 他の怪獣と違い、登場年代ごとに設定が微妙に変更されるところがカネゴンのポイントだ。例えば今回は文字通りインターネット、電脳世界にだけ存在するデジタル怪獣なのだ。

 

 星元市では急激な物価の上昇に伴い節約が呼びかけられていた。調査員の石堂シュウは星元市で使えるデジタル通貨「ホシペイ」を使いお金を貯めればいいのでは提案。ホシペイのアプリには動画配信機能があり、人気の動画配信者は「投げ銭」がいっぱい集まるのだ。シュウは無理やりユウマ(ウルトラマンアークに変身する主人公)を巻き込んで動画配信をはじめるが、人気が出ない(そらそうよ)。二人は人気の動画配信をチェックしようということになり、現在の人気配信者が人間ではない怪獣カネゴンであることが判明。

 実はカネゴンは怪獣ではなく、ホシペイを運営する会社のCEOがホシペイ普及の一環として制作した自立型AIであった。カネゴンの配信はたちまち人気となり、投げ銭は次々と集まったがカネゴンは貯めたホシペイを使うことを知らないので多くのホシペイがカネゴンだけに集中し、市場に流通しなくなった。星元市の物価上昇の原因はカネゴンにあった!

 CEOの依頼を受けたSKIPはカネゴンのデータをアップデートして「ホシペイを使う」ことを学習させようとする。しかし実態がなくどこに現れるか神出鬼没のカネゴンにどう対処する?

 

 カネゴンは動画配信の際に必ずサーバーを経由する。それがホシペイを普及させる宣伝のためのアドバルーンだ。移動を始めたカネゴンをアドバルーンのデータセンターに閉じ込め、アドバルーンを着陸させようとするがカネゴンが暴れだしたためユウマはウルトラマンアークに変身して、ビルへの激突を防ぐ。しかしカネゴンによって電脳世界に取り込まれてしまう。

 やっつけるのが目的ではないので苦戦を強いられるアーク。SKIPは自立型AIサポートロボ、ユピーのデータを送り込んでアップデートのためのカプセルをカネゴンに飲ませるが「これはお金じゃない」と吐き出してしまう。暴れ始めたカネゴンはホシペイ運営の準備金を見つけ出して食べてしまい巨大化。準備金は星元市の財源だ。このままでは星元市の経済が完全に崩壊する!さらにユピーは電脳世界での存在を維持する財源が尽きたことで稼働が不可能になる。勝手の違うデジタル世界でウルトラマンアークは未曽有の事態に対処できるのか?

 

 デジタル世界での戦いという、円谷プロの『電光超人グリッドマン』を彷彿とさせる展開(電脳世界に転送される場面も同作のオマージュ)は特撮オタクのハートがくすぐられる。しかもユピーのCVはグリッドマンのアニメリメイク『SSSS.GRIDMAN』の主人公、響裕太役の 広瀬裕也というのもたまらないねえ。

 アークは学習データのカプセルをルーナアーマーの武器、ルーナソーサーと一体化させ投擲する。コインと勘違いしたカネゴンはそれを飲み込む。これが本当の投げ銭だ!

 カプセルを飲み込んだカネゴンは貯め込んだホシペイを一斉に吐き出す。と同時に三次元世界で実体化するのだった。どういうことだかよくわからねえが、みんな喜んでたのでOKでしょう!

 

 デジタル通貨と流通経済の仕組みについて子供にもわかりやすく説明されたこのエピソード、中々の社会派回ではなかろうか。一か所に金が集まってもそれを使わないとお金が回らず、経済は破綻するという、どこかの誰かに教えてやったらいいと思うよ!

 

 最後は人気配信者となったシュウとユウマの配信にカネゴンが投げ銭を送るが、それを受け取ったシュウがカネゴン化するという、『ウルトラQ』のオチのオマージュになっていたのも最高ですね。

 

 今回の脚本を担当した吉上亮氏は『PSYCHO-PASS サイコパス』のノベライズなんかをやってたSF作家で特撮は初挑戦。一発目でこんな傑作を出してくるとは恐ろしい逸材だ。新しい人材が入ってくる『ウルトラマンアーク』がますます楽しみだ。